Levelmaker ーレベル上げしながら異世界生活ー

Ss侍

プロローグ

第1話 不注意による事故

 修学旅行から帰ってきて、もう四日も過ぎた。

 今日は土日休み明けであり、スキップしながら登校している。


 学校が楽しみだから、というわけじゃない。

 俺が大好きなゲームシリーズ、『ドラグナーストーリー』のその最新作が今日、ついに、やっと、長い時を経て、発売されるから嬉しいの。

 今回で派生物を除いたら四作目かな。最新作は実に二年ぶり。発売されるって情報を得てから半年待ったし。


 ともかくドラグナーストーリーはまさにRPGの王道!

 全世界で8年間愛されているゲーム! 一作ごとにストーリーの深みやクオリティが一段と上がっていくのが人気の秘訣。

 ちなみに俺は、シューティングとか、格闘とか、数あるゲームの種類の中でもRPGが一番好き。むしろそれしかできない。それしかやる気ない。

 レベルをひたすら上げてからラスボスに挑むっていうプレイスタイル。他の人はどうか知らないけど、俺はとにかくレベル上げが一番楽しい。

 ドラグナーストーリーの初作で、物語の序盤、最初のダンジョンでレベルをカンストさせたことだってある。


 みんなからはただの苦行だとか言われたけど、俺はなぜかそういう物事を繰り返すことには余裕で耐えられるから、なんともなかった。


 それにしても……なぜか、浮かれ過ぎて何かを忘れている気がしてならない。

 カバンはしっかり持った。大好きなゲームがプリントされたカバーが掛けてあるスマートフォンも忘れてない。ハンカチもちり紙もあるね。 

 あと足りないのは?

 と、ここでポケットに入れてたスマホが振動した。



【ちょっと、置いてかないでよ】



 あー、そうだ。しまった、やっちゃった。

 スマートフォンの人気通信アプリにアイツからメッセージが入ってる。顔文字もびっくりマークも付いてないことから、相当お怒りのようだ。

 ドラグナーストーリーが楽しみすぎて、いつも一緒に登校している美花を置いてきちゃったんだ。こりゃ今日一日機嫌悪いぞ、きっと。


 美花とは長いつきあい。なにせ二歳から面識がある。

 そして幼稚園、小学校、中学校は一緒。中高一貫校だから自動的に高校も一緒。家も隣で、母親同士が同級生とかで仲がいい。あ、父親同士もだった。うちの弟と向こうの妹までも。……ま、俗に言う幼馴染ってやつかな?


 幼馴染というと、彼女なのかと聞かれることが多々あるけれど、美花と長いつきあいでは確かにある。でも、お付き合いはしてない。

 俺と一緒に登校してるのは、お互い近くに他に一緒に行く相手がいないから仕方なく、と、いったところらしいね。美花によると。


 本当のことを言うと俺はそれでも嬉しい。


 本人の前ではあまり言ったことないけれど、とても可愛くて優しい。好きなのかもしれない。いや、多分好き。

 でも俺が可愛いって言ったことない代わりに、向こうが俺のこと可愛いとはよく言ってくる。……なんかそれはちょっと複雑。


 いつもだったら決して忘れることはない。なにせ好きなんだし、親友としても大事だからね。普段なら絶対に。

 しかも、こう言う場合ってなにか奢らされるハメになるんだよね。近くのカフェでコーヒーとケーキとかさ。

 前に忙しくてその通信アプリで返信できなかった時は、無理やり奢らされたよ。

 お金はあんまり支出したくないんだよね。

 てな訳だから俺は美花にこう送った。



【ごめん! この埋め合わせはいつかする! 奢り以外で!】



 しかし今回は奢らされるごとになるんだろーなー。 

 でも悪いのは完全に俺だし、仕方ないかな。


 ともかく今は学校の目の前で、これから戻って美花を迎えに行くわけにもいかない。

 またすぐ連絡がくるかもしれないし、付けっ放しにしたまま、俺はスマホをポケットの中に入れようとした。

 その時、なんだか寒気がした。

 嫌な予感がして上を見た。

 

 俺との間に一メートルもあるだろうか。

 迫ってきている茶色い物体。これは植木鉢? 花瓶?

 そしてここはアパートの真下。だれか落としてしまったんろう。

 それにしても異常にゆっくり落ちてくるように見える。

 俺にめがけて。


 回避しなきゃ頭に当たる。

 でも、足が動かない。

 なんで言うことを聞いてくれないの?


 考えているうちに、強い衝撃と一緒に、目の前が真っ暗になった。

 


______

____

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 周りがぼやけて見える。

 ここは保健室か病院かな。

 ……違う、明らかに地面の感触が土だ。だんだんと周りも見えてくる。



「っ………っ!?」



 思わず、声にならない叫びをあげてしまう。

 ここはどこだろう? なんでここにいるだろう?

 目覚めたら俺は、見知らぬ場所に居た。

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