恋する金薔薇竜と彼氏持ち白狼 (リル・ローズ)

「なぁガバイナ」

「ん? どうしたんだ、ローズ」

「その、今日は我と夕食を共にしないか?」

「ああ、構わないぞ──── 」



────

──

-



「とまあ、昨日はそこまでは良かったんだ」

「わふわふ」



 いつも通りローズちゃんがウチの屋敷まで遊びに来た。

 ただ、いつもより機嫌が悪そうな顔をしていたから、何があったのか聞いてみたら、案の定ガバイナさん関連の話だった。


 ちなみに今日はミカちゃんとあゆちゃんはいない。

 あゆちゃん曰く、どうやら美花ちゃんが稀にあるいつもの発作というか、鬱っぽいのが出ちゃってるらしくてローズちゃんと遊べるような状況にないらしい。

 

 あとサクラちゃんもカナタ君とデート中だし、サナちゃんは今週はチキューに残ってるね。


 でも今日、ローズちゃんがここを訪れたのは、元々私に恋愛相談するのが目当てらしくって、私以外がいないのは寂しいけれど問題じゃないみたい。

 恋愛においてミカちゃん達より私の方が特別に秀でてるところって身体作りくらいしか思いつかないけど、力になって欲しいって大事な友達が名指しで言うんなら協力するしかないだろう?



「それで、どうなったの?」

「でな、食事は普通にしたんだ。二人っきりで。まあ、このくらいならちょくちょくするし、いつも通りだよ」

「わふ、そだね?」

「ただ昨日の我の作戦はそこからが本番だった。食事処からの帰路の途中で、テキトーな理由をつけてな、その……あの……人間達が、ほら……その、部屋借りて……さ。あ、あるでしょ? そう言う男女の場所がっ!」

「あるねぇ」

「そこに連れ込んで、我がどれだけアピールしても靡かないあの堅物にいっそのこと色仕掛けをしようと思ったんだ!」

「そして失敗したんだね」

「……うん」



 口調は自信たっぷりだけど、実はかなりの恥ずかしがり屋なあのローズちゃんが、ついにシビれを切らして、そういう強行手段に出ようとしたのは驚いた。

 けど、それはそれとして、この手段が失敗すると「自分には魅力がないのか」って思っちゃうよね、わかる。そりゃあ、これだけヘコむのも無理はない。



「それでだ、リルちゃんの意見を聞きたいんだ! リルちゃんの彼氏のショーって、ガバイナと似たような雰囲気があるし」

「わーふ、たしかにショーもだいぶお堅かった方だね」

「そんな男をどうやって、あんな人前でリルちゃんがラブラブ密着しても嫌そうな顔一つしないようにできたのかを知りたいんだ! し、したんだろ? 彼に色仕掛け……」

「わーふぇ」

「そ、そう言う方面での恋の進め方を教えて欲しいッ!」



 私、ショーに色仕掛けしたことローズちゃんに話したっけ。

 あ、話したか。ミカちゃんのそういうお話に釣られて、ベラベラ言っちゃったような記憶ある。何人かで一緒にお風呂入ってる時に。

 裸の付き合いでテンション上がりすぎるのも良くないね。


 とりあえず、ね。私がショーを押し倒したのは、付き合い始めてからなんだけど……いや、でも出会ったその日に彼の前で真っ裸になったり、告白前に真っ裸で抱きついたりしたっけ。

 ま、まあそう考えたらたしかにローズちゃんの今回の人選は合ってるか。うん。



「わふぅ。仕方ないね。じゃあちょっと考えてみるよ」

「た、たのむっ!」



 ガバイナさんがショーと同じタイプだと仮定して……思うに、あの人も女の子に対して普通の男の人並みの欲求は持っているはずだ。

 何回か話したことあるけど、堅物でクソ真面目な人ってだけで、感性はまともだったし。まともってことは、ソッチもまともだと考えて間違いないさ。


 少なくとも成上兄弟みたいに「自分の彼女以外は異性として絶対に見れないし、欲情もしない! 絶対にだ!」みたいなタイプではないはず。


 だから、ガバイナさんは美人でスタイルもいいローズちゃんに慕われてて普通に嬉しいんじゃないかなー、とは思うんだけど……。


 うーん、やっぱり大きすぎる問題が一つあるんだよね。ガバイナさんがローズちゃんを子供扱いしたがってるっていう。


 これは、あゆちゃんを元にした女子の集まりがみんな知ってること。マーゴちゃんの分析だと、親友であるラハンドさんの影響でガバイナさんも歳下を恋愛対象として遠ざけようとする主義になっちゃったんだっけ。


 わふーん……もうちょっと考察材料を増やそうか。



「わふ、ちなみにローズちゃんはどうやってガバイナさんを誘おうとしたの?」

「え? あ、そ、それはな……『疲れたなー、休みたいなー、ちょうどいい場所があるなー』って言って。ほ、本にそう書いてあったんだ!」

「そしたら、彼はなんて?」

「『そこは嫁入り前の娘が男と二人で入っていい場所じゃないぞ、覚えておけ』……って。ちょっと怒られた」

「わふわふ」



 そこ以外にしよう、とシンプルに言えばいいのにわざわざ嫁入り前の〜とか説明がましく言っちゃうってことは、やはりローズちゃんのことをある程度は意識してるのかも。


 そして今になって色仕掛けをしてもいいと覚悟したローズちゃんは、逆に言えば今までそのようなアクションをしてこなかったはずだ。その証拠に健全な話ばっかでそういうお話はほとんどなかったし、なんなら直接好きだと告白したお話もない。


 だからガバイナさんから見れば、子供(として見ていたい女の子)が、無知がために変なところを休憩場所として指定してしまった……と捉えてる、あるいはそう考えたがってるのだと思う。私の推理が正しければね。


 なら、話は割と簡単かな。

 ガバイナさんにもっと、ローズちゃんが恋愛対象になりうる存在だってことを本能レベルで知らしめてやればいいのさ。

 今回は今まで段階を踏まず、いきなり誘ったから失敗したんだ。


 私とていきなりショーと肉体関係を結べたわけじゃない……胸を押しつけたり、甘えたりしてちゃんと段階を踏んでいったさ。

 まぁ、当時は私自信意識せずそれをやってたけどね。無意識にしては上手くやれてたと思う。



「……よし、ローズちゃん。今から言うこと、少しずつでいいからできるかい?」

「も、もう妙案が思いついたのか? さすが、我らの中で一番ボードゲームが強いことはあるな」

「わふわふ、それほどでも」

「で、何をすればいい⁉︎」

「下着姿とかビキニ姿とかを彼に何度も見せるって作戦なんだ。もちろん、自然にそうなるような状況を作り出して……」



 そう告げると、ローズちゃんの顔がみるみる赤くなっていく。

 


「ふ……ふぇええ! そ、そんなの何度も日常的にやるだなんて……恥ずかしくてできないぞっ! き、昨日だって誘うだけで死にそうなほどの勇気を振り絞ったのに……!」



 ……わふぇ?

 夜のお誘いする勇気があるなら、好きな人に半裸くらいたっぷり見せてあげてもいいと思うんだけどなぁ?

 これじゃあ先が思いやられるね。ローズちゃんの精神面から強くする方が早そうだ。


 あれれ、それとも私がおかしいのかな?

 


 

 

 

 


 


 

 

  

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