お姫様はお年頃

「いらっしゃい! アリムちゃん、ミカちゃん!」



 俺と美花はカルアちゃんと遊びに、アリムとミカの姿でお城にやってきた。今日と明日は久しぶりにこの三人だけで過ごすんだ。


 最近は十人近くで集まって中規模の女子会になってたからね、少人数で遊ぶのはむしろ珍しくなったとも言える。カルアちゃんの友達も随分増えたものだね! 全員この仲間内ではあるけどさ。


 具体的にどれくらいぶりだろ……アナズムだけで換算して半年強くらい? 体感では二、三年経ってるような気すらしてくる。



「やー、おじゃましますだよ!」

「三人だけで遊ぶのってすっかり珍しくなっちゃったもんね。今日はたっぷり遊ぼうね、カルアちゃん」

「はいっ!」



 俺……ボク達はさっそくカルアちゃんのお部屋に向かった。

 今回はお泊まり会も兼ねてるから、ここお部屋で長いこと過ごすことになる。


 ああ、三人で同じベットで眠るのも久々だっけ。

 いやー、未だにほんとは(地球での戸籍では一応)男であること隠してるけどさ、平和になった今でもこればっかりは絶対カミングアウトできないよね。お風呂まで何回も入ってるもんね。


 お部屋に着いたボク達はさっそくカーテンのついたザ・お姫様ベッドに腰をかけて、部屋のドアの前から執事さんが飲み物を用意するというのでそれに答えつつ、ガールズトークを始めることにした。



「それで、何かしたいことあるかな?」

「地球のゲームもたくさん用意してるよ!」

「ありがとうございます! で、でもそれは後で……」

「ふむ?」

「実はお二人に相談があるのです」



 ほほう、相談かぁ。国に関すること以外では珍しいね。

 とはいえ、カルアちゃんは深刻そうな雰囲気を出してないから気楽に聞いていれば良いかな。



「なになに?」

「あの……誰かとお付き合いするって、どんな感じですか? その、アリムちゃんとミカちゃんは同性ですが、お付き合いしてるじゃないですか」

「うんうん」

「最近、私の周りではとてもカップルが多くって……その、なんか置いていかれてる感じがするというか……寂しいというか……」



 あらー、そんな悩みを抱えてるなんて、やっぱりカルアちゃんも年頃のレディだね。


 たしかに思えばカルアちゃんから見て、『アリムとミカ』を始め……桜ちゃんとウチの弟、リルちゃんとショー、相方はこっちにきてないとは言え佐奈田もだし、もっと身近だとリロさんとルインさん、ミュリさんとオルゴさん、ヘレルさんとノアさんというカップルがいる。


 既婚組だとカルナさんが蘇って王様もラブラブしてるって聞くし、まだ新婚と言えるウルトさん夫婦もちょくちょくこのお城を訪れているだろうね。

 また、まだ付き合ってないとはいえローズとガバイナさん、マーゴさんとラハンドさんがいい雰囲気だ。


 ……うん、これは悩むのも仕方ない。

 仲良い人だいたい恋人いることになるんだもの。

 


「リロお姉様と本格的なお付き合いを始めて、ルインお兄様も幸せそうですし……アリムちゃん達も友達を超えた仲の良さがあって、羨ましくて。でも私にはそんな、恋人になりそうな人の心当たりがないんです」

「ティールさんはどうなの?」

「そうです、ティールお兄様も私と似たような状況ですね。もう良い年齢ですし長男なのでかなり慌ててるみたいで片っ端からお見合いしてます。ここだけの話、その二の舞にはなりたくないというか……皆んなみたいに、しっかり好きな人を作りたいというか……」



 珍しいぞ、カルアちゃんが自分の兄に無意識のうちに毒を吐くなんて。でもそれぐらい内心では焦りを感じているんだろうね。

 ルインさん達がラブラブだから王様や国としては問題なさそうだけど、他兄妹ら本人はそうもいかないよねー。



「それで、その……運命の人ってどうすれば見つかると思います?」

「うーん、私たちの場合はルインさん達四人と同じ幼馴染同士で、ずっと一緒だったから……出会いとかを聞かれると……ねぇ?」



 カルアちゃんの本題に、ミカは俺の腕に抱きつきながらそう答えた。少し頬を赤らめている。うーん、かわいい。

 ボクもそんなミカを少し抱き寄せながら追加で答えた。



「そだねー。一緒が当たり前で離れられなくなったからこうなってるもんだもんね。あ、でもそれに関してはリルちゃんに聞けば良いと思うよ」

「ああ、そうね! あの子が一番運命的かも」

「な、なるほど……!」

「あとローズも、ガナイナさんに対して短期間のふれあいで惚れたタイプだよね? ローズにも聞くといいかも」

「ふむふむ……!」



 こうしてみると、恋愛って千差万別だね。

 いや、ボクたちの周りはやけに幼馴染系統が多い気がするけどさ。世間的にはそっちの方が少ないはずなんだけどなー。



「じ、じゃあもう一つ……」

「んー? いいよー」

「えと、お二人は女の子同士ですが……その、将来子供って……欲しいとかって、考えてますか? そ、その時はどうするんですか⁉︎」

「ほほう……聞きたいのね」

「き、聴きたいです!」



 お姫様がそっち方面に興味を向けている……たしかにこれはボク達以外に相談なんかできなさそうだ。

 しかし、やけにというか、やっぱりというか、ミカはノリノリだね。うっかり俺の本当の正体を話さなきゃいいけど……。



「じゃあ教えてあげる。スキルかアイテムを使って男の人のアレをどっちかに生やしてどうにかするの……よ」

「ッッッ……!」

「だから、女の子同士でもいいんだよ。カルアちゃんも、別に相手は男の人でなくてもいいだからねっ……?」

「な、ななななな、なるほどぉ……!」



 ああ、正体や詳細は話さなかったけども。一国の、まだ十代前半のお姫様になんてことを吹き込んでいるんだろう。

 誰かに聞かれてないよね……?

 聞かれてなみたいだね? ふぅ、よかった。



「あ、だからといって私からアリムを取っちゃダメだからね? 私、アリムいないと生きていけないもん」 

「そ、そんな非道はしません……。しませんよ……。………。で、ですが……うー、む、難しいですね恋愛って……」

「ふふ、思春期だもの。たくさん悩んでこそだと思うよ!」



 お、なんか良い感じに締め括った。

 でもこれ、カルアちゃんの価値観をちょっと曲げたことになるよね。よかったのかなぁ……いや、そもそもボクとミカがキスしてるとこ見られた時点で……うん、今更なのかな……。

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