お城2 (サナダ)

「ほほぉ……なるほどなるほど、ふむふむふむ……」



 本物のお姫様と、本物の貴族の娘二人。すごく、すごく新鮮な話を聞けた。私はあくまで地球の記者だからこの情報を何かに生かすことはできないけど、人生経験という点では豊富すぎるほどの収穫があったと言える。


 まだまだ聞きたいことはあれど、私の三人に対する集中取材はおよそ2時間ほどで終わった。あんまりしつこくして嫌われるのはイヤだから、知的欲求の三割を満たす程度でとどめた。

 このしつこすぎ無いっていうのが、今後お付き合いしていくことも考える上で大事なこと。気持ちよく喋らせ、仲良くなり、今後より情報を引き出しやすくする地盤を整えるというのが、プロの手腕ってわけよ。



「なんというか、すごいですねサナちゃんは……! 私、初対面の方とここまでたっぷりお話ししたのは初めてかもしれません」

「なんかこう……引き摺り込まれるというか……やっぱりアリムちゃんが連れてきた子だけあって只者じゃないんだね」

「お話を聞く名人というやつですね」

「いやぁ、どうもどうも」



 さて、2時間もたっぷり話しをしていた間に今日集まるはずだった役者がこの部屋、お姫様の広い自室に全員揃ったようだ。

 アリムちゃんに、ミカちゃんに、リルちゃんに、桜ちゃん。ローズちゃんにマーゴちゃん、カルアちゃんにリルさんとミュリさん。そして私。総勢十人。


 私は省くとして、それ以外の全員が美少女という圧巻ぶり。

 特に何人かは人智を超越しているほどの美しさ。目の保養とかそういう段階は等に飛び越え、眩しすぎて目が焼け爛れてしまいそう。……過去にアイドルグループの楽屋に取材しに行ったことがあるけれど、それでもここまでじゃなかった。



「……取材終わった?」

「うん、終わったよ」

「よーし、じゃあ遊ぼっか!」



 この女子会はどうやら主にアリムちゃんが主導を握り、持ち込んだボードゲームやトランプで大勢で遊ぶらしい。また、豪華で高価なお菓子や紅茶を嗜んだりもする。

 さらに大抵の場合、ここにお泊まりすることになり、晩餐会なども開かれるのだとか。

 お風呂も十人で入ることに……あれ?



【あの……ミカさん】

【ん?】

【えっと、1時間くらい前に教えてくれた、このお城ですることについてなんだけど……今更ながら質問いい?】

【うん、いいよ】

【お風呂もみんなで入るんだよね? それでいいんだよね?】

【うん、すっごく目の保養になるよ。みんな顔だけじゃなくてスタイルもいいの。リルちゃんのやってることを皆んな真似してるからねー】

【お風呂って……アリムちゃん……えっと、有夢君もですか】



 そう、アリムちゃんことあゆちゃんは、地球での戸籍上の性別は男。女装やら男の娘として振る舞う趣味はあるものの、恋愛・性的対象は普通に女性(火野とのやりとりを見ている限りでそっちの気もあるけど)。

 

 たしかに、たしかにあゆちゃんのことはどうしても男だとは思えない。しかし戸籍上はそうなってる人が、彼女のミカちゃんはともかく、それ以外の女性陣と一緒に入浴するのはいささか問題があるはずだ。



【ああー、そっか。そこ説明し忘れてた。大丈夫、ちゃんと対策してるから】



 ミカちゃんは詳しく説明を始める。

 まず、アリムちゃんはみんなでお風呂に入るタイミングになった瞬間、自分の『実態のある幻影』とやらをスキルで用意してそっちを付き合わせ、本体である自分はこっそり自宅に帰って別で入浴する。


 元々ミカちゃんがこの世界に来るまではあゆちゃんも、カルアちゃん達と一緒に普通に入っていた。

 それはそれで問題がありそうだが、なんか性別を変えるスキルのおかげで、アリムの間に得た情報から女性に対して性的な欲求を彷彿とすることはないらしい。……本当だろうか。


 そしてやがて、桜ちゃんやリルちゃんもこの女子会に参加するようになり。自分の親友や弟の彼女の裸を見る訳にはいかないということで、ようやく、アリムちゃんは別で入浴するようになったそうな。


 しばらくは用事があるとか普通に誤魔化して本人は入浴のタイミングで席を外していたが、それにも無理が出始めたため、最近は前述の通り幻影を用意してそれに代わりに入ってもらうらしい。

 ……なかなか苦労しているみたいだ。こんな異世界でもモラルは大事。



【ま、だから本物の有夢がサナちゃんの裸を見ちゃうなんてことはないから安心してね】

【うん……まあ、ピンとこないけどとりあえず納得はしておくわ】



 常識で考えてはいけない。まだ滞在10日目だけど、それは嫌というほどわかってる。三面六臂の神様が実在する時点で。



「五人ずつに分かれてババ抜きして、それぞれのチームの勝利者トップ2が集まって2回戦を始めるって感じで……」



 一方、これからどうやって遊ぶかをあゆちゃんが説明していた。

 この世界では娯楽が少ないらしく、トランプ程度でも革新的なものらしい。テレビゲーム等なんて刺激が強すぎてまだ持ち込めないでいるようだ。

 そもそも私は十人で遊ぶとなってもどう遊んだらいいかわからない。知り合いは多いけど、そんな人数で遊んだことがない。……私はこのお泊まり会を十分に楽しむことができるだろうか。まあ、結論から言うとこれだけの美人の集まり見てるだけですごく楽しいんだけど。





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いつもながらお久しぶりです。

本作、Levelmakerと同時期に始めた「私は元小石です」が次の火曜日の投で最終回を迎えることとなりました。

本作のように終わってもしばらくは後日談の投稿をするつもりではありますが、100万文字越えの作品が完結するのは感慨深いものがあります。もしよければ未読の方途中の方は是非、ご覧くださいませ。



……10万文字強程度のものを2作、280万文字と120万文字の作品も本編を終わらせ、合計で4作品完結させた私ってすごくないですか? 褒めてください、すごいと思います。(*`ω´*)ドヤッ

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