竜の美少女 (サナダ)

 私があゆちゃん、もとい男の娘からTSしてガチの女の子になってしまったアリムちゃんのお屋敷に居候させてもらうようになってから一週間が経った。


 性的や意味で進みすぎてる、悪くいえばエグい話をミカちゃんやリルちゃんという一見清楚の塊な二人から散々聞かされて、脳みそが飽和しそうになっていた頃に。


 私はあゆちゃんからアナズムの友達が遊びにくると聞かされ、女子グループ(アリム含む)と一緒にその人物を待っていた。

 特にあゆちゃんもミカちゃんにとっては思い入れのある人物らしい。



「お、もう来たみたいだね」



 あゆちゃんがそう呟いたその直後に、このお屋敷の扉がコンコンと強めにノックされガチャリと勢いよさげに開いた。

 

 その先に居たのは金髪を超え、黄金の髪をもった女の子だった。

 襟巻きトカゲのエラのようなものが耳あたりから生え、小さいツノも頭から突き出している。目は宝石を埋め込んだかのように綺麗で、眼自体はまるでトカゲのよう。


 この世界には魔族とかリルちゃんのような獣人がいるけれど、その後者の方であるのは明らか。

 黒を基本に金の模様が入った鱗を持つ尻尾。どういった種族かはわからないけれどドラゴン族だと思う。たぶん。

 例に漏れずまあ美人だこと。美人には美人が自然と集まってくるのね。



「おっ、みんな揃ってるじゃないか!」

「やぁやぁローズ、うちに来るの三週間ぶりくらい?」

「……何言ってるんだアリム。先週だぞ。というか毎週来てるだろ。チキューとやらとアナズムを行き来しすぎて時間の感覚狂ってるんじゃないか?」

「あちゃー」



 なるほど、これが時差ボケの異世界版か。こういうのなんて形容したらいいんだろう。時空ボケかな?



「……ん? アリム、そこの馬の耳の尻尾の髪型をした少女は何者だ? どうせチキューから連れてきたんだろうが」

「その通りだよ、紹介するね」

「ど、どうもです! フミ・サナダと申します」

「そうか! 我はローズよろしくな!」



 こんなに可愛いのに一人称がワレ!? これはよそうしてなかったわ……ものすごくキャラが濃いのが来たわね。



「トモダチのトモダチは友達というじゃないか。仲良くやって行こうな、フミ」

「う、うん! よろしく!」



 ローズさんが手を差し出してきたので、私はそれを握り返した。

 なんでいうんだろう、手を握っただけでわかる。DNAからして戦闘に特化した一族の人間なんだと。

 手もすべすべだし女の子らしいんだけど、なぜかそう感じる。思い返してみればリルちゃんもそうだった。



「……しかしアリムがサクラ達のような純粋なチキューの人間を連れてくるなんて珍しいな。向こうではどんな関係なんだ?」

「ほら、前に話したでしょ? 学校って。あれのクラスメート……わかりやすくいえば、一緒に勉強してる仲間の一人ってやつだよ」



 アナズムにも学校はあるけど、義務教育は五歳まで。

 ほとんどの人は子供の間を勉強せずに仕事を始めるための準備期間にあてるらしい。だからクラスメイトなんて単語もたぶんないのね。ちなみに、この情報は自力で調べたわ。



「なるほどな。……お前達は身内贔屓をかなりするだろう。ぶっちゃけ全員が。チキューではアナズムのこと秘密にしてるって言ってたが、それなのに連れてくるってことは身内だと認めるほど仲がいい人間なのかフミは」

「わふー、それもあるんだけど実はサナちゃんが自力でアナズムまでこぎつけたんだよね」

「えへへ、しかもボクからバレたんだよね……」

「この世界最強であるアリムから!? 嘘だろ!?」



 ローズさんは目に「信じられない」と書いてあるのが見えてしまうほどの驚きよう。

 この世界の特性と相待って、神様にすら頼られる『アリム』という存在はすごい立ち位置にいることはわかってたけど、こうして初対面の現地の人の言葉を聞くとその理解が深まる。



「ありえない……どういうことだ……」

「仕方ないわよ、サナちゃん、私たち何もしてないのに『情報王』とかの情報を集めるのに特化したスキルをこの世界に来てたった3日で網羅しちゃうんだもん」

「しかもまだ特にレベル上げもしてない、レベル1のままでね」



 そう、なんかよくわかんないけど『情報王』とか『鑑定王』とか『過去視』とかなんか強そうな名前がついてるスキルを私はなんか知らないけど手に入れてしまった。

 それをみんなに報告した時は、神様もあの叶君も含め全員揃って驚いてたっけ。


 アナザレベル曰く、スキルは自然に成長させる場合、個人の才能によってその速さが違うらしい。

 私がこれらのスキルを自力で手に入れたってことはどうにも、地球上で一番と言って過言じゃないほどのリサーチ力に関しての才能を持つ人間ということになるんだって。


 私の生き甲斐、そして生き様は神に認められるほどってこと。うーん、我ながら恐ろしい。



「……わかった。こいつらと同じでフミも化け物の類なんだな。まあ……アリムの友達だし……。あ、まさかアリム達のクラスメイトーとやらはみんなこんな感じなのか?」

「ううん、普通の人が大半だよ」

「うそだぁ!」



 あっ、今の可愛い。や口調は王様みたいだけど、やっぱりこの子すごく可愛い。もっとお近づきになりたい。もっと知りたい。

 ああ、いけない。初対面の子相手に私の悪い癖が……。



「……その、フミ。手に持ってるものはなんだ?」

「これ? これはメモ帳よ」

「向こうの世界の記録用紙か。……情報を司る人間がそのようなものを取り出す。いい予感がしないな」



 ローズさんがそう言うと、私と彼女以外のみんなは首を頷かせた。



「その予感、当たってるよ」

「ホント、サナちゃんはすごいんだから」

「私も初対面の頃から根掘り葉掘り……」

「わーふ、ほんとにすごいから覚悟しておいた方がいいよ」

「み、みんな揃ってそんな……!」



 なんかみんな言ってるけど、それが私と生き様。



「お、おい待て、目がこわいぞフミ」

「へ、へへへ……ではまず生年月日から聞きましょうかね……」

「た、助けてアリム……ミカっ……!」

「ごめん、無理かな」

「諦めて、ローズ」



 ついに私は彼女の肩を捉えた。モウ、ニガサナイ。



「シュザイ ヲ!」

「あ……や……ふええええええ!」









#####


(あとがき)


ちなみに、佐奈田さんがLevelmakerの主人公だった場合また違った形でチート無双してました。

例えばエグドラシル編で王が魔神と関わりを持っていたことや、元凶である2代目アナザレベルの存在など、その他諸々を見通してたと思います。

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