最終話 エンディング
春休みが終わって、新しい学期になった。
今日は新学期初登校日であり、スキップして登校したい気分なんだ。別に学校が楽しみだからっていうわけではない。
俺が大好きなゲームシリーズ、『スタートクエスト』その最新作が、今日、やっと、体感的にあまりにも長い時間を経て発売されるから嬉しいんだ。
今回で派生物を除いたら四作目かな。最新作は実に二年ぶり。発売されるって情報を経てから一年は待ったし。いや、俺個人で言えば二年かな。
ともかくスタートクエストは_____。
「ねー有夢」
「な、なぁに美花」
「……今日はちゃんと待ってくれたね?」
あの日のことを思い出したんだろうね、美花が遠い目をしながら軽く微笑んだ。言葉にも表情にもすごく重みがある。
せっかくの新学期に暗いときの記憶を鮮明に思い出させるのは酷なので、ごまかすために俺は慌てて美花の手をぎゅっと握った。
「と、当然だよ! あの頃とは違うの! 今の俺は美花の彼氏なんだから、美花が最優先なの」
「えへへ、嬉しい! ……なんか昨日、デジャヴを感じたから。休み明けにゲームの発売日だなんて。心配になっちゃって」
「大丈夫、大丈夫。今回はもう早くから予約して、お家に帰ってきたらゲームが届いてるはずだからね。慌てる必要なんてないの」
「……ね、有夢」
「ん?」
美花がモジモジしだした。どうしたんだろう、朝のキスでもして欲しいのかな。春休みの中、地球にずっと居たけど毎朝美花と会ってはキスしてたし、その名残で。
でもどうやら違うみたいだった。美花は突然、抱きしめてきたんだ。ここ家の外だから道ゆく人にがっつり見られちゃうんだけど。美花は俺の胸に顔を埋めたまま話を続けた。
「私が最優先なら……今日はゲーム我慢できる?」
「ふぇ……っ!?」
「ふふふっ、嘘よ嘘! 楽しみにしてたの知ってるもん。ほら、行こ! 初日から遅刻なんて洒落にならないよ?」
「そ、そだね」
俺と美花は手を握り、学校へ向けて歩き始めた。無意味に慌てることもなく、暖かくなってきた気候の中、散歩のように登校する。なんだかとてもいい気持ち。
「そういえば私たちさ」
「んー?」
「地球での年齢なら、今年度で18歳だね?」
「おお、そうだねー。お酒やタバコ以外は大人と一緒になるね」
「私と有夢が出会って15年経って、16年目になる年でもある」
「たしかに」
美花とは長い付き合い。何しろ二歳のころから仲良くしてた。そしてそのころから多分もう、好きだったと思う。幼稚園、小学校、中学校、高校もずーっと一緒で、今の成績のままなら大学も一緒。
ましてや地球以外でも一緒だった。運命を共にした。文字通りの運命共同体だった。離れ離れになった時間なんて3ヶ月あるかないか。俺たちの生きてきた時間からすればほんの数刻。
その3ヶ月が死ぬほど辛かったんだけどね。逆にいえば、美花さえ居たら死ぬほど辛いような状況でも軽く突破できたんだ。
幼馴染にして恋人。俺が死んだ日、この道を通った時はまだ幼馴染にして親友だった。
……美花の言っていた通り、今日はなんだかあの日に環境が近いからついつい物思いにふけってしまう。気持ちも変な方向に向かっていっている。今の気分なら、こんな人前でも、同じ学校の人たちがたくさんいる中でも簡単に口に出せてしまえそうだ。あの言葉を。
「ね、美花」
「なぁに、有夢」
「俺、やっぱり美花のこと大す………ん?」
大好きと心を込めて言おうとした。その時、なんだか寒気がしたんだ。嫌な予感がして上を見た。
俺との間に一メートルもあるだろうか? 迫ってきている灰色のコンクリート片。無意識のうちにゾーンを発動していたようで、スローモーションのようにゆっくりと落下してきている。
そしてなんの偶然だろうか、それともアナザレベルがふざけてるのか、なんとここはちょうどあのアパートの真下だ。
回避しなきゃ頭に当たる。でも、当たったところでどうってことはない。考える必要すらないんだ、だって……。
「美花、頭注意ね、一応」
「わっ!? え、なに、コンクリート!?」
「うん。……っと、ふぅ」
「いくら防御力もカンストしてるからって、コンクリートが粉々になったら制服が汚れるじゃないの。わざわざ当たる必要ないよ、避けなよ」
「いやぁ……あの日に落ちてきたものと重ねちゃってね、つい。しかえしというか、なんというか」
ステータスを展開していないときに発泡スチロールで殴られた方がまだ痛いだろう。その程度の衝撃。目の前が崩れたコンクリートの粉で若干白くなる。
ふふふ、あの日の俺とは違うんだよ、神経も環境も、何よりレベルがね! あの時の俺がレベル1だというのなら今の俺はレベル99、おもいっきりカンストしてるんだ。まあ実際はそれ以上だけど。
「とりあえずよかったわ、有夢の頭が血で真っ赤に染まらなくって。それで有夢、さっきなんて言おうとしてたの?」
「む、ニヤニヤしてる。わかってるくせに」
「もーいっかい! もー一回ちゃんと言って!」
「大好きだよ」
「えへへー!」
「えへへー!」
そうこうしているうちに、俺と美花は無事に学校へたどり着いた。それはさておき。……今日は新学期の挨拶程度で終わるのは早いだろう。早く帰れるってことは、たくさんゲームをやれるということ。
ふふふ、帰ったら楽しい楽しいレベル上げの時間の始まりだ!
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【連絡】
あとがきの前に、先に今後についての連絡をば。
Levelmakerは最終話を迎えましたが、まだ完結設定には致しません。前々から述べていた通り、番外話や外伝などなどを投稿し続けます。
投稿ペースは週一ほど。
私が書きたい内容がある場合はそれより早いスパンになることもありますし、その逆もありえます。半不定期と言ったところでしょうか。あまりにも間が空きそうな場合は事前に連絡をします。
番外話からは本編ではないので話数はつけません。しかしIFストーリーや本編に繋がる内容も書きたいと思っているのでその区別はつけやすくするかもしれません。
また、他サイトに掲載しようと思っているLevelmakerのR18版(グロは多分ない)についてですが、でき次第、近況報告と番外話内のこういったあとがきで告知しようと思います。URLを添えて。
……18歳以下は閲覧しちゃダメですよ?
それとこれは宣伝ですが、『私は元小石でございます』『題名のない魔王』の2作品も更新継続中です。是非ご覧ください。よろしくお願いします。よろしくお願いします。
というわけですので、アリムちゃん達の冒険はまだまだ続きます。これからもLevelmakerを楽しんでいただければ幸いです。
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【最終話あとがき】
まず初めに、ここまで長い作品を読んでいただきお疲れ様でした。そしてありがとうございます。
Levelmaker、ついに最終話です。
2015年11月6日にアルファポリス様へ本処女作を初投稿してから、本日2020年2月8日。四年と三ヶ月と少し。
小説家になろう様で週間1位を取りました。カクヨムの公式様に紹介もされました。レビュー☆900も頂きました。なろう様でのブクマは約1万3000件ですし、なろうだけで総PV数は約3430万pvです。
書籍化もしました。TOブックス様から2冊も出ました。
四年前、私は執筆においてド素人でした。
書き始めた当時、私は17歳だったのですが、国語の成績が学年全体で下から数えた方が早かったんですよ(国語以外もですが)。いまだに誤字脱字が多いのはその名残です、ごめんなさい。
ラノベも、本自体も全然読んだことありませんでした。かと言ってそれ以外ができるわけでもなかったですが。
……しかし、それがここまで。
たしかに、Levelmakerだけで総文字数270万文字、総和数1260話、二年半毎日、一年半隔日というペースで書き続けたというのは強いかもしれません。
しかし書き続けるだけじゃ、一位は取れなかった。書き続けるだけじゃ、書籍化は出来なかった。
感想、評価、レビューetc……。
Levelmaker内の節々で私は皆様にたびたびお礼を言い続けておりました。いくらお礼を言っても、いくら感謝しても足りないのでございます。だって読んでくれる人がいなかったら、なにも出来なかったから。応援してくれる人がいなかったら、続けようとすら思わなかったから!
もう一度、言わせてください。本当にありがとうございます。
これからもこのSs侍、執筆を続けていきます。どうか、引き続き応援を、どうか、よろしくお願いします。
皆様を楽しませることができますよう。全身全霊を込めて。
Ss侍。
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