第1105話 クリエイト
お昼ご飯前に、少し。……そう、少しだけにするつもりだったんだ。魔物を沢山見つけたりしなければ。
美花がアイテムマイスターを手に入れてから俺たちは拠点から南に向かって突き進んで見た。そしてラッキーなことに途中で縄張り争いをしている同種同士の猿の魔物を見つけた。そいつらを俺と美花で倒すと、実はそいつらを食べるために狙っていた蛇の魔物がいて、その魔物が俺らを襲ってきたんだ。もちろん倒したんだけど、それと同時になんとそいつのお腹の中から弱ったウサギの魔物が現れた。可哀想だったから早めにトドメを刺してあげた。
偶然だけど四匹も倒せたし、もう今日はこれでやめておこうかと俺と美花は引き上げることにしたんだけど、その帰り道にまた一匹、オークかゴブリンの魔物を見つけたのでそいつもついでに倒した。これで俺も美花もそれぞれ6回転生したことになる。割り振れるポイントは俺が転生2回、美花が3回分だ。
十分すぎるので、それから俺たちは拠点に戻ってきた。とりあえず割り振るのが簡単なステータスポイントは、よく使う四項目に均等に割り振る。美花もアイテムマイスターを手に入れたので俺の真似をすることにしたようだ。ステータスの数値が俺と美花でお揃いになった。さて、次はスキルなんだけど……。
「有夢、もうアレを作れるだけになったんでしょ?」
「うん!」
「……私の分の魔核もあげる。作っちゃって!」
「わかった!」
美花から魔核を譲ってもらったので、まず剣、槍、弓の奥義それぞれ4種全てを作る。次にそれらから剣神奥義、槍神奥義、弓神奥義を作成。
この三つをベースにした魔法武器の召喚・技の魔法のSランク以上を各11個ずつ作って(最初に作った魔法剣もここで消費)、それらを『アイテムマスター』などを掛け合わせれば『神剣・創造召喚演舞』『神槍・創造召喚演舞』『神弓・創造召喚演舞』が出来上がった。
……あれ、なんかダークマタークリエイトをはじめに作った時より素材スキルがランクアップしてるような。まあ、別にいいか。そこからその三つと『アイテムマスター』『念力の仙神』など使っても減らないタイプのスキルをこれでもかと詰め込んでみた。
そして出来上がったのが、念願の、ダークマタークリエイト。……ではなく、『ザ・クリエイト』。ずいぶん名前がシンプルになってしまった。
ザ・クリエイトの効果はダークマタークリエイトとほぼ同じ。違う点があるとすれば、ダークマタークリエイトはダークマターと呼ばれる物質を生み出してから、それを自分の欲しいものに成形するんだけど、このザ・クリエイトは欲しいものがポンと出てくる。あとは、アバウトな設定でも求めてるものがより出てきやすくなったくらいかな。ほんとにそんな変わらないね。
神具級のアイテムは相変わらずこれ系のスキルでは作れないみたい。そもそも、アムリタを発見していないからかアイテムマスターで神具級を作ることもできなくなってる。記憶を頼りに自力で作れたりしないかな?
「できたー?」
「できた! ダークマタークリエイトとはちょっと違うけど、だいたい同じのが」
「そっか! これで暮らしが楽になるね」
「楽になるなんてレベルじゃないけどね」
「たしかに」
これでもう何もかもし放題。死ぬことだってないだろうし。SSSランクの魔物も相性によるけど割と楽に倒せるようになってきたし、まだ転生できるようになってから2日目なんだけど、一度きっかけを掴むと早く進むね。ゲームでも、終盤やクリア後にレベル上げが楽になる方法があったりするのに似てると思う。
「よし! じゃあお昼ご飯はイノシシの魔物の生姜焼きと、お味噌汁と、白米にしよっか有夢!」
「和食いいねー! アナズムに来た時もそうだったけど、ほんとに和食が恋しくなるよね! でもその前に生活環境を整えよう」
クリエイトがあれば例えばゴブリンによって凸凹にされたこの土地を平らにならすことができる。正確にはMP回復アイテムと土を作る魔法の併用でやるんだけどね。
それができたらいい感じに芝生を生やせるアイテムでならした土地を緑一色に。これでだいぶ拠点自体の見栄えがよくなった。ガーデニングとかもしやすいと思う。
あとはお家や備品。これは全て新しく作り直した。このために昨日、建てたお家はたった1日しか使ってないけど錬金術で土地の整理の時に一緒に土にしてしまったんだ。
この世界には俺と美花しかいないから見栄を張ったりしてお屋敷を建てる必要はない。でも見た目は大事。こんな場所にポツンと一軒建っていても絵になるような、グリム童話とかに出てきそうなメルヘンデザインの家を建てた。
中の備品も、家自体も全部伝説級。電灯もつくし、広いお風呂もある。キッチン、寝室、トイレ……小さめの家にしたとはいえ、機能的にはあのお屋敷と変わらない。
「じゃじゃーん!」
「あっという間だったね。ほんとにすごいわ、そのスキル」
「ふふふ、じゃあ中に入ろうね」
俺は美花にお家の中を案内した。自分でも改めて、なかなかいい感じにできたと思う。リビングや二人の寝室などを見て回ったら二階へ登り、各々の個室も準備していることを見せる。俺と美花がいくらラブラブでほぼずっと一緒に行動してるからってプライベートな時間が欲しい時もあるからね。今の調子だと一ヶ月に一回くらい。
最後に地下室。今、何もない部屋とドアだけが沢山ある。ここはそのうち映画館や大浴場、プラネタリウムなどの娯楽施設を増やしていくつもり。お屋敷に色々入ってるのと同じ感覚だね。今回は地下に作ったけど。
「なるほど、だいたいわかったわ! ここが私と有夢の愛の巣になるのね」
「うん、そだよ。生活を充実させるって目標はもう達成しちゃったね」
「じゃあ有夢、私、さっそく新しいキッチンでお昼ご飯作るから、材料よろしく」
「うんー」
材料を渡すと美花は手早く生姜抜き定食を作った。アイテムマイスターの出際もなかなかだよね。
もちろん、美花の作る手料理、なおかつ久しぶりの日本食が美味しくないはずがなく、机に並べられて食べ始めてから俺は一口口に入れるたにに美味しいと連発で言ってしまった。思わず足をパタパタさせたりして。
一通り食べ終わって後片付けをすませると、美花が俺にぎゅっと抱きついてきた。
「むふふ、あーゆむぅ」
「どしたの、美花」
「ゲームできる環境になったけど、ゲームはしなくていいの?」
「今はそんな気分じゃないかなー」
「ほほー、ゲーマーが珍しい」
「アナズムに来てからはそうでもなくない?」
「じゃあ、じゃあ……あのね……!」
「美花ほどの勘はないけど何言いたいかわかるよ。……とりあえずお風呂入ってこれでもかというほど身体中ピッカピカにしよう」
「うんっ!」
俺と美花はまだお昼だけど一緒にお風呂に入り、アイテムやらなんやらを使って徹底的に身を清めた。
アイテムマスターを手に入れ、クリエイトも手に入れた。ゲーム以外にも、そうすることでやっとできるようになる行為がある。いや、この場合正確には「安全にできるようになる」かな。
おそらくはこれが俺と美花がこの世界に送られてしまった原因の一つでもある。あくまでおそらくだけど。……二週間我慢したからね、仕方ないね。
お風呂からあがってそれらしい格好をしたら必要なアイテムを作り出し、二人の共同のお部屋へ。あとは……。
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