閑話 水泳の授業!

(注意)有夢がアナズムに飛ばされたのは高校二年の10月あたりなってからですが、この話ではなぜか高校二年の夏であり、有夢と美花は交際していてリルも存在しています。完全なパラレル回です。


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「今日は水泳だよねー」

「あぁ……水泳ねぇ……」



 美花が俺の頭を撫でながら今日の時間割を確認してきた。このナデナデは多分、励ますつもりなんだろうね。俺は水泳の授業自体が嫌いであるわけではない。運動神経だって体育嫌いになるほど悪いわけじゃないし。ただ、それ以外全てに問題があるのであって……。



「ほら、私もたくさんの人の前で肌晒さなきゃいけないし。場所は分かれてるけど男子から女子のレーン観れるでしょ?」

「美花は毎回注目集めるよねぇ……みんなエッチな目で見てるんだ」

「アナズム行ってからFカップになったからもっと目立つかも」

「二人で水泳休まない? 美花の身体を見ていいのは俺だけなんだよ」



 そういう問題もあるんだよねっ。俺と美花で休んだって先生方も事情はわかってくれるでしょ。美花は美人すぎて人の目を集めちゃうし、俺は……うん。そういえばリルちゃんも注目集めちゃいそうだなぁ。うちのクラスの男子は俺たちに理解があるけど、他のクラスの男子も合同だからその人たちが美花やリルちゃんを凝視しないか心配だ。俺のこともね。

 というわけでげんなりした気分で俺たちは学校へ赴いた。翔とリルちゃんもどうやら同じような空気で朝から登校してきたみたい。学校に着いて朝のホームルームを始めるなり、担任の先生から一言。



「えー、今学期からすでに知ってる人もいるとおもいますが、今年から女子のレーンと男子のレーンの間に仕切りが設置されることになりました」

「「「えーーーっ!?」」」

「物の見事に男子しか反応してない……。えー、こほん。理由は単純。リルさんに配慮してです」

「わふぇ、私?」

「結構上からの圧力がすごくてね……」



 なんでもリルちゃんは国と国を繋ぐ、国際的にも超優秀な生徒。そんな生徒を大事にしなきゃいけないということで、プールという特殊な授業は男女区別を徹底することにしたらしい。先生の言う上は学校という範疇を超えて政府からのお達しということになる。すごいね!

 じゃあなんで翔とあれだけイチャついてるのに許されてるのかというと、翔自信が家庭含め超優秀だからなんだって。結婚も視野に入れてオーケーらしい。いつのまに国の人は調査してたんだろうね?



「それと、あゆちゃんについてなんだが」

「は、はい!」

「今年も水着は……わかってるな?」

「はい……」

「あと、女子レーンに行って欲しい」

「……え?」

「女子なら……女子なら、あざといことしなければ鼻血はでないから……」

「そ、そうですけど……」



 いいのかな、本当に。女子の中に男子をポツンと一人だなんて。みんなは許してくれるのか確認しようと顔色を伺ったところ……なぜかみんなニコニコしてた。美花なんてすごく嬉しそう。



「ああああああああ、希望がッ……俺たちのッ……希望がッッ!」

「なんのためにこの夏まで頑張ってきたんだ……!」

「もうダメだぁ……あゆちゃんまで俺らの視界から外れるなんて」

「やる気無くした……帰ろうかな……」

「うちのクラスの男子はあからさまだな」



 翔以外の男子みんな絶望しきった顔してる。翔はホッとしてる。気持ちは分からなくもないよ、このプールの授業、女子や俺の水着を見るだけを楽しみにしてた人もいるし。でも見られる側からしたら嫌な視線だからね、俺はその点は嬉しいかな。

 問題は女子数十人の中に俺だけ居るってことだよ。このクラスは良しとしてくれても、他のクラスの子はどうなんだろ……。

 心配をよそに水泳の授業が始まった。いつも通り俺のために作られた特別な部屋で俺一人で着替える。この俺だけ隔離されてるのが嫌なのもある。ただ一番の問題は俺の水着だけ胸に巻くための布があることだ。俺だけだよ、俺だけ。オーダーメイドなのこれ。俺が上半身でも裸になるとその瞬間、あたりが血の海になるからね、仕方ないけどさ。男の先生も耐えきれなくなるし。結果的に耐えられるの翔だけになるもん。

 そして、そこから女子の列に合流。みんなジロジロ見てくる。睨まれたり……あれ、睨まれないな。他のクラスの女子も受け入れてくれてるみたいだ。いいのかな、これで。



「有夢ぅ! 有夢ぅ!」

「美花……」

「ペアでやらなきゃいけないの、全部私とやろうね!」

「そりゃね」



 美花が積極的に話しかけてくる。こんな間近で美花のスク水ね……。家で着てくれた時以外見たことないよ。あんまり身体は見ないようにしなきゃ。俺だって男だもん、こんな場所で興奮しても困る。……ま、他の女子のはある程度大丈夫なんだけどね。



「もうすこし、目線下にしてもいいのよ?」

「それはダメだよ、一応、性別の問題でね」

「やっぱりダメかぁ。そのために昨晩はあんなに……」

「え、夜に二人であったの?」

「あ、サナちゃん! えっと……うん、そーなの!」

「ふぅん……」



 佐奈田は多分、俺と美花が不純な異性交遊してるの気がつきつつあるからね、注意しなきゃね。そんな佐奈田にリルちゃんが後ろから話しかけてきた。



「サナちゃん、ベアが必要なとき私と一緒にやろ?」

「そっか、美花ちゃんいないもんね。いいよ! ……にしても、すごい身体してるね」

「わふぅ、毎日トレーニングしてるからね」

「モデルさん以上だわ……そういえば美花ちゃんも……」

「美花ちゃんには私がそのトレーニング教えたからね」

「……努力でできるものなの!? じ、じゃあ今度私にも教えて?」

「いいよ!!」

「え、美花ちゃんとリルちゃんみたいな体つきになれるの!?」

「私にも、私にも教えてください!!」

「教えてっ……切実に……!」

「胸、大きくなる?」

「もちろん、バストアップ効果もあるよ。じゃあ今度みんなね……」



 一気にリルちゃんが話題をかっさらっていった。ふぅ、なんとかこれ以上疑いの目で見られずに済むぞ。みんながリルちゃんを中心にワイワイしてる中、美花が寄り添って抱きついてきた。



「わぁ!? だ、ダメだよぅ」

「へっへっへ……」

「困ったなぁ」



 我慢が大変だ。美花は挑発的なのに。……どのみちめんどくさいことになるんだね、水泳の授業は。




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ちなみに私、北海道生まれ北海道育ち。中学・高校と水泳の授業がありませんでした。仕方ないね、寒いからね。

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