第1042話 空を舞うゾンビ
すいません、寝過ごして時間通りに投稿できませんでした。
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「ウォ……ァ……ウオオオアオオアア!」
今は屋内にいる。なのにゾンビにされちゃった人達のうめき声がここまで聞こえてくる。いつのまにこれだけの人数集めたんだろう、気がつけばゾンビ達は空に何万人もいた。下手したら十万人はいってるかも。……何万人も誘拐された報告なんてなかったんだけどな。
「九割九分、なんらかの方法で複製したダミーだと思うわ」
「え? ほんとミカ」
「うん、パッと見たところ同じ顔で同じ服装の人を五人くらい見つけたもの。それ以外にも被ってる人何人もいるよ」
たしかにそうっぽい。俺も同じ顔で同じ服装の人を見つけた。人間の複製なんて俺くらいしかできないものだと思ってたんだけど。……こうなるとコピー元炙り出して生き返らせてあげるの、骨が折れるなぁ。終わった後にそういうの専門のアイテム作り出さなきゃダメかなこれは。
「む……それは本当か?」
「どうしました、国王様」
「いや、他の国はもう攻撃がパタリと止んだらしいんだ。操られた人間達は出現していないらしい」
「あ、攻撃全部防いだの俺の仕業だってバレたかな? そろそろだとは思ってたけど」
じゃあ空にいる人達は他の国に分散するつもりだったのを一箇所に集めてきたってところか。あれを色んな国に分けるつもりだったのならむしろ少ないような気がする。いや、まてよ、なんか様子がおかしい。
「ねぇ、今なんかあの人たち、分裂しなかった?」
「……してるね」
「どうやって分裂機能なんて人間に持たせるんだろ」
あのゾンビ達が現れて、攻撃して来ずにすでに一分が経った。十万人くらいだったのに、なんか二十万人くらいになってる気がする。これこのまま放っておくと際限なく増えていくんじゃないだろうか。
「このまま増えていったらとんでもないことになるよ、カナタ、どうしよ?」
「ミカ姉、そういえば敵と味方だけ判別して攻撃が回復できるスキル持ってなかった? おそらくだけど、魔法やアイテムで作られた存在なら分裂元と分裂先は別として認識されるはずだから……」
「分裂元を味方に指定すればいいんでしょ? じゃあそのスキル使うね」
そういえばあったな、ミカが最初に自分で作ったSSランクのスキル。人が倍に増えていく様子を窓から眺めてるみんなの間をかいくぐり、ミカは外が見やすい位置まで向かった。
一瞬、なんだか変な感覚が身体中を駆け巡る。悪寒とか嫌な予感とかじゃなくて、違和感。たぶんミカが時間停止のスキルを使ったんだと思う。その中で件のスキルを使ったんだろう。俺たちから見たら一瞬にして空が灰色に近い白に包まれた。
空に浮かんでいた無数のゾンビは……一人残らず消え去っていた。ミカが少し悲しそうな顔で俺の元に戻ってくる。
「全部偽物だったみたい」
「まあ分裂できる時点で本物を場に出すわけないか」
「なに、今のはミカがやったのか? それで彼奴らは全員誘拐された者たちではなかったと?」
「そうです国王様。たぶんこれから……ほら来た」
上空には再び無数のゾンビ達。しかも今度はすでにこちらに向かって突撃しようとしてきている。あれだけの人数を個別で念術を使って操ることは俺にはできない。脳みそには限界があるからね。
カナタがわざとそうしたため瞬間移動のためのバリアをすり抜け、このお城に向かって一直線に進んできている。分裂して本体を別の場所で管理されることは想定していなかったから仕方ない。
今向かってきた偽ゾンビ達は、またミカに止まった時間内で一瞬にして葬られた。その後もまたすぐに出てくるんだけど。
「ずっと魔法うちつづけなきゃだめかな? まあMPはほぼ無限にあるしこのくらいなら全然大丈夫だけど」
「いや、こうなったらなら俺がまた別の条件を指定したバリアを貼るからミカ姉はそこまで頑張らなくてもいいよ」
カナタがそう言うとすぐさまこの国全体が魔力によって覆われたのがわかった。その証拠に出現したばかりの量産型ゾンビ達の一部が突撃してこようとするが、最初の光線攻撃も同じように、見えない壁を境に姿が消える。
「……防戦一方っていうのが気にくわないけどね。でも俺たちを全滅させたいっていうのが相手が戦争ふっかけてきた理由だし、こうなったら残りのパターンのどれかで仕掛けてくると思う」
「残りのパターン?」
「うん、特に可能性があるのが、圧倒的に強い個を複数用意するパターンだね」
「つまり、光夫さんとかヘレルさんとかがやってくるってこと?」
「そゆこと。あのアナザレベルの攻撃方法からして自分から出てくることはないと思うからそれが一番確率高いよ」
たしかにカナタがいる以上、もうほとんどどんな攻撃も通じない。こうなったら向こうの瞬間移動スキル持ちや自分の体を気体にできる人が仲間を連れてカナタのバリアを通り抜けてこっちくるしか攻める方法ないもんね。
「……ん? あいつらが引き下がっていくぞ」
「無駄だってわかったんだと思います。じゃあそろそろくるかな」
「今アリムに言っていたあいつらが、か」
「その通りです国王様」
カナタがそう言った瞬間、ここからちょっと離れたところに大きな魔力が複数、感知できた。
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