第1004話 アリムの偉業

 ……終わった。全部いい終わった。ここからじゃみんなには見えないかもしれないけど、すごく汗をかいてる。

 俺が喋り終えた後に質問したいことがあったら手を上げて欲しいと言ってあるけれど、誰もそうしようとはしない。質問がないと言うより、何から反応したらいいかわかってないみたいだ。それも無理はない。特に国王様達以外は俺がアナズム出身の人間じゃないことすら初耳だろうし。

 話した内容を大きく分けると七つ。

 俺とミカがアナズムとは別の世界、地球の人間であること。

 今の賢者は自分たちの兄弟と親友であり、親をアナズムに連れてきていること。

 魔神を全て封印済みであるもののコミュニケーションは取れる状態にしてあることと、シヴァは地球にいたこと。

 実はメフィストファレスも地球人で、俺の独断で勝手に地球へ送り返していたこと。

 地球にもアナズムが原因だと思われる異常事態が起きてること。 

 SSSランクの魔物が少し前まで大量発生していたことと、その中から凶悪な魔物を取り逃がしてしまっていること。

 アナズムの神様であるアナザレベルが理由不明で俺を狙っているかもしれないということ。

 その他、アナザレベル側の把握しきれているだけの敵の情報。

 ちなみに俺たちが地球人であることのついでに本当の年齢も国王様達以外に初めて公開したけど、性別は秘密のままだよ。……性別まで話す必要ないからね!

 二分くらい静まり返っていて、そろそろお開きにしようかと考えたタイミングでギルマーズさんが手を挙げた。



「はい、ギルマーズさん」

「あー、アリムちゃん。その、メフィストファレスって悪魔を生かして返したこととか、魔神とやり取りしてることとか……問い詰めたい箇所はなくはないんだが。それより俺が聞きたいのはSSSランクの魔物についてだ」

「は、はい」

「ここにいるSSランカーのやつや、SSSランクの実力をもつやつは半分近くはわかってたんじゃないか。異常なほどSSSランクの魔物が出現していることは。まあSSランクの魔物もめちゃくちゃ増えてたがな」



 ギルマーズさんのパーティに所属している人や、ウルトさんとパラスナさん、国王様が頷いた。その他の人は気がつかなかったみたいだ。たぶん、魔物の知識に関するスキル、あるいは魔力の探知に長けたスキルを持ってるか持ってないかの違いだと思うけど。



「まあSSSランクの魔物に関しては出た数分後にはだいたい魔力やら存在感やらは消えてるから、対処しようにも何もできなかったわけだが……まさかその消えていた理由ってのが、アリムちゃんとミカちゃんとその兄弟や親友だっていう賢者、あと親御さんが毎日毎日素早く倒してたっていうんだろ?」

「はい。ボクの弟は瞬間移動できるスキルを持ってるので、ボクのアイテムマスターを使ってアナズム中を監視し、出現したらその場まで向かって対処してました」



 ギルマーズさんは一度口を開かずに深く呼吸をすると、そのまま続きを話し始めた。



「で、国王様が最近アリムの仲介によって仲間にしたっていうドラゴンは過去に出現したSSSランクの魔物だったわけだ。要するに、過去に倒されて復活したSSSランクの魔物とアリムちゃん達はずーっと対峙していたんだな?」

「そうです。ギルマーズさんの言う通りですよ」

「……中にはカオスブラックドラゴン並みに手強い奴もいたんじゃないのか。その、逃しちまったやつなんて特にそうなんだろ?」

「は、はい」



 そう言うとギルマーズさんは突然立ち上がった。そして自分の団員達と、ウルトさんやバッカスさん、国王様のような数人の仲良い人たちに目配せしたみたいだ。するとその人たちもみーんな立ち上がった。ギルマーズさんはまた口を開く。



「なんでアナズムの住人でもない、別世界のまだ十六歳の女の子が……俺たちのために黙って戦い続けてくれたんだ? そっちのチキューとやらにも影響が行ってるみたいだから異変を無視はできないと思うが、本来なら自分の故郷だけ守ってればいいだろ」

「えっ!? あ、あの……えっと……初めて来た時からアナズムの人たちにはすごく良くしてもらって……仲良い人たちもたくさんできて……見捨てることなんてできなかったし……」


 

 もっと本音を言うと魔法やアイテムのおかげで地球なんかよりやりたい放題だから、地球と行き来しつつのんびり過ごすのに凶悪なものは邪魔だったっていうのもあるんだけど。

 


「……とにかくそのおかげでSSSランクの魔物による被害はない。俺が感知できた出現の頻度が本当ならとっくにアナズム中の国全てが滅ぼされているはずだ。下手したら魔神と対峙するよりも厳しいだろうな。……ステータスに勇者としての称号がないなんて気にするな、勇者より勇者、いわば真の勇者だぜアリムちゃんは。魔神とか悪魔を見送ったなんて気にならないくらいのな。……そうだろみんな?」



 立ち上がった全員が頷いた。そして国王様が筆頭してなぜか頭を下げる。

 続いてギルマーズさん達、ウルトさん、パラスナさんが立ち上がり頭を下げた。そしてどんどんそれが広がって、やがてつられたのか貴族の皆さんも含めて、この場にいる九割以上の人たちが立ち上がって頭を下げてきた。



「ひとまず礼を言わせてくれ。……ありがとう」



 まさかお礼を言われるなんて思ってなかったよ。だって、責められる覚悟でここにいるんだもの。……お礼を言われるなんて……俺……。




#####


みたいカップリングアンケートの締め切りまであと2週間でござる!

今はまだ四件! アンケートが反映される確率はかなり高いでござるよ! どしどし送ってきてくだされ!

募集要項は1000話記念の「祝話」を参考に!


ちなみに、一人につきの回数制限はないでござるよ。

(*ФωФ)フフフ…

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