第1003話 真の報告
お城の前にもうすぐでつく。うちからほぼお隣さんのようなものだから時間はかかってないけど、足取りがいつもより重かったのは確かだ。自分でも心臓の鼓動と呼吸がいつもより大きくなってるのがわかる。ミカは俺の背中をさすっていてくれた。
「勇者としてみんなに出る前はこんなに緊張しなかったでしょ? だから今回も大丈夫よ有夢」
「でもそれは俺に後ろめたいことが何もなかったから……その、今回は後ろめたいことも言わなきゃいけないし」
「だいじょーぶだいじょーぶ。いざとなればその可愛さで押し倒せば! 私もついてるしね」
門の前に立った時、いつもいる門番さんが疲れきった表情をしていることは一目でわかった。でも俺の方が酷い顔をしてたのか、心配そうに声をかけてきてくれる。その場は大丈夫だと答え、城内に入れてもらった。
城の敷地内に入ればさっそく大臣さんがこれまた疲れきった顔で俺たちを迎えてくれる。
「すいません、みんな忙しいはずなのに時間を作っていただいて」
「今までアリム殿がこういう時に発言をする時は大抵重要なことでしたしな。また今回は並々ならぬ雰囲気がアリム殿のメッセージから伝わった為、これはよほど大ごとなのだろうと」
「ええ、大ごとです」
「……相当なのでしょうな。どのようなことを話すかはわかりませんが、くれぐれも無理はなさらぬように。既にこの国にいる実力者達は全員集まっておりますよ」
呼びかけたのはこの国にいるSSランク以上の冒険者と大貴族や大商人達。大臣さんが言うにはほぼ全員が集まったらしい。きっと話の重要性より俺を見たいから来てくれた人もいるはずだ。まあ大体の人は勇者として宣言するときに知り合ってるから初対面ではないのが救いかな。
大臣さんに色々と準備をするための部屋に通された。そこには数十分前からそこにいたかのように、やはり疲れが滲み出ている国王様がいた。
「おお、アリムよ。いつもより顔色が良くないが……それほどの報告なのだろう。やはりこの事件にことに関する事なのか?」
「はい、関連してます。あの、えっと……」
「どうした?」
「とんでもないこと言うかもしれませんが、最後まで聞いてくれると嬉しいです」
「それは前々から聞いている。なにを言われても受け止める準備はできているぞ」
国王様は無理したように優しく笑ってそういった。でもやっぱり心配だ。こればっかりは。……さて、みんなの前で話すと予定している時刻まであと20分。まとめておいたことを確認しなきゃ。
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時間三分まえになった。国王様は十分前に先に用意してもらった席まで行ってしまっている。これからみんなの前に出なければならない。ミカが俺の顔をジッと見ながら手を握ってきた。今はゲームをやってる時より手汗がひどいから握っててもあまりいい気分じゃないかもしれないけど。……それは関係ないのかな。
「……」
「……」
あえてお互い一言も喋らずに部屋を移動した。城内の舞台のある部屋だ。本来は音楽隊などを呼んで公演してもらうための場所。裏口から二人で入る。
魔力からして普通の人とは圧倒的に質が違うものばかり。さんざん国王様やカルアちゃんと絡んできて今更だけれど、これからこの国の有権者達の前で話すってすごいことなんじゃないかしらん? いや、いつでもこの状況を作れるような地位まで上り詰めた今までの俺の方がすごいよ。えっへん……。まあその地位が崩れるかもしれないんだけどね。
「じゃあ、頑張ろ」
「うん」
時間になったから俺とミカは前に出る。舞台前には方々の方面でアナズム基準で実力のある人達がずらりと並んでいた。メディアル商人組会の面々や、ギルマーズさんとそのパーティの大幹部、ウルトさんも居るしパラスナさんも居る。バッカスさんや最近SSSランカーになったガバイナさん、ラハンドさん、ローズ……。もちろんカルアちゃんもカルアさんもルインさんもいる。みんないる。割と可なりの割合で仲いい知り合いが占めていた。
普段なら知り合いがいた方が気は楽になるけれど、内容はむしろ親しければ親しいほど裏切られた気分になるかもしれないもの。ここまできたら、どちらにせよやるしかないよ。
「我が国を誇る最上級の可憐さですな、いつ見ても」
「しかし、何を報告するというのでしょう。集められた面々もかなりの粒ぞろい」
「まさか魔神の復活なのでは……」
「勇者である故心配ないかもしれませんが、やはり見た目たまけなら特別美しい普通の少女、緊張感に押しつぶされなれけば良いのですが」
こんな緊張感あふれる場面でも呑気なこといってる貴族の人たちのおかげで少しホッとしたような気がする。
……よし、言おう。
「えーっと、皆さんお忙しいところ集まっていただき本当にありがとうございます。今日はどうしても報告しなければいけないことがある……いや、報告しなければいけない状況になったのでこうして場を設けた次第です」
普段の俺らしくないすごく堅苦しい挨拶になってしまった。ここら辺は考えてなかったから……とりあえず続けよう。
「報告したい事というのは、その、この間この城であった出来事と、その黒幕……そして、ボクが今まで隠し続けていたことについてです」
「……まさかだとは思うが……」
「あ、いえ。これはその……国王様達にも一切話してないことなんです。本当は話すの怖いんですけど……でもボクが隠し続けてきたことを話さなければ、話が進まないので」
それから俺は、今までやってきた神さまや魔神、光夫さんに関する色々なことを全て話した。一気に、自分でもどう話してるかわからないくらい一気に。
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なろう版もめでたく1000話に到達したでござる故、次回はお祝い話でござるよ!
感慨深いものがあるでござる。
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