閑話 バレンタイン!!! 学校編

 昨日でアンケートの方締め切らせていただいたでのざる。感謝いたしまする。2件来たのでどちらのリクエストにも答えようと思うでござるよ。ただ連続ではなく数日の間隔を空けるでござる。

 ところで今日はバレンタインデーでござる。2話連続で閑話となることをお許しくだされ。


#####



「今年もチョコレートくれるの?」

「大本命ね! でも学校から帰ったらあげるよ、凄いことになるだろうし」

「だね」



 バレンタインデー、それは日本では男の子が女の子からチョコレートをもらえるかどうか期待してそわそわする日。俺も昔から美花にチョコレートをもらっていた。しかも本命のね、ふふふ。

 もちろん今年は桜ちゃんから叶へ、リルちゃんから翔へ本命チョコを渡すことになっている。

 そして手先が器用で女の子みたいな見た目をしている俺もまた、誰かに渡すことを望まれているのだった。仲良い友達を除いて限定100名先着で俺のチョコレートがもらえるというイベント。小学生の頃から翔に渡してて、毎年渡す人数が増えていって……今はもうこんな大掛かりなことになってしまった。

 どうやらみんな、チョコレートをもらえるならちゃんとした女の子じゃなくても良いらしい。今日は特別にお父さんが研究所から借りたワゴンにたっぷりチョコレートを車内に詰めて美花と一緒に登校しているのだ。

 学校に着いた。



「お父さんありがと!」

「おじさんありがとうございました!」

「一昨年みたいにチョコレートを狙った変態から拳銃突きつけられないように気をつけてね」

「今年からは大丈夫だよ、ステータスあるし」

「そっか、なら良いんだけど。俺も早くお母さんから欲しいからもう帰るね」



 お父さんとお別れした後は、先生達に手伝ってもらいながら裏口から学校に入る。表口から入ると何されるかわかったもんじゃないからね。ほんと、アナズムと違ってれっきとした男である俺からチョコレートもらうのに犯罪まがいのことまでする人もいるから。

 裏口から入ったらそのまま何も履かずに下駄箱へ。そこでちょうど護衛をしてくれる翔と甘えてる様子のリルちゃんと出会った。



「おはよ! リルちゃんからもうもらった?」

「いや、帰ってからだってよ。ダチには渡すらしいが……」

「てな訳でハイ! あゆちゃんとミカちゃん、どうぞ!」

「ありがとう! じゃあ俺からも翔とリルちゃんに」

「私も翔とリルちゃんに」



 いつもこの日は翔は一方的にもらう立場。まあホワイトデーできっちりお返ししてくれるんだけどね。俺のも美花のも親友だから特別な友チョコ。事実、本命と友チョコの中間くらいかもしれない。



「……で、下駄箱はどうなってるんだ有夢」

「今から見るところだよ」



 俺と翔は顔を見合わせた。そして自分の上履きが入っているところまで行く。ああ、やっぱり今年もこんもり入ってるなぁ。あれちゃんと取り出そうとしたら洪水になりそうだよ。



「今年も俺の方にもイタズラで何十個も入ってやがるぜ……ったく、マジで有夢のところに入らなかったから入れてるんじゃねーか? ラブレターの比じゃねーよ」

「わふぇ? まったくイタズラには見えないけど……」

「だからねリルちゃん、翔は昔からこうなのよ」

「わふ……やっぱり私がこうして付き合えてるのは奇跡に近いんだね」



 俺の方も美花っていうこの上なく愛し合っている彼女がいるってみんなわかってるのにこれだよ。この日に限ってはラブレターのように男子からのものはなくて、みんな女子。俺は昔から美花のことが好きだったからね……どれにも見向きもしなかったけどさ。一回ちゃんと全部裁こうとしたら髪の毛入りとかあったし。みんな俺のこと女の子みたいだって可愛がるのにこういう時はちゃんと男扱いもするんだよ。正確に言えば男の人からは女の子扱いされて、女の人からは男扱いされるのが俺のバレンタインデーなんだ。



「わふぅ……ライバルは多い……」

「リルちゃんに勝てる人なんてそうそういないから大丈夫よ。それにショーは一途だし」

「でもこの量は不安になるよ……」

「ちなみに、有夢と翔の机の中もこんな感じだから」

「ひえっ……」



 翔と先生方にボディガードされながら自分たちの教室へ。入った瞬間に男子達の目が変わる。そして机を見ると、チョコレートがぎっしり。やっぱりこの日は誰もかれもおかしくなるよ。



「あ、四人とも! 今年も大変そうだねぇ」



 ニヤニヤしながら佐奈田がやってきた。佐奈田もすでに好きな人にチョコを渡したんだろうか。山上に……まあ、自分で口では違うっていってるし今年もどうせ友チョコ止まりなんだろうけど。



「わふ、はいさなちゃん」

「私からも」

「俺からも」

「え、え、いいの? 嬉しいーっ!」



 まあ佐奈田はかなり仲良い方だし、中学の頃から渡すようにはしてる。佐奈田も俺たち四人のために用意してきたみたいだ。なんか変な形のチョコくれた。



「で、リルちゃんと美花ちゃんは大本命渡したの?」

「私達は家に帰ってからじっくりちゃんと渡すよ」

「そして風紀が乱れるような熱いラブを交わすのね?」

「まあね」

「わふふ」



 た、たしかにめちゃくちゃいちゃつく予定ではあるけど言わなくていいじゃないか。翔も少し照れてるし。

 ……普通の日ならそろそろイケザンとか山上とかが話しかけてきてもいい頃なんだけど、やっぱりあの二人もそわそわしてる。さて、いいくらいの時間だしそろそろかな。



「じゃあ俺、準備してくるよ」

「毎年毎年大変ねー。そもそも今日って休日なのに校長先生があゆちゃんのチョコレート欲しいからって無理やり……」

「有夢のチョコレート抽選会は超人気アイドルがチョコレートばら撒くのと一緒だからね」

「私、実は裏で一個五万円で取引されてるとこ見たのよ」

「えぇ……」



 俺は一人教室から抜け出し、裏口から体育館へチョコレートを持っていく。佐奈田が言っていた通り、俺のチョコレートイベントはこの学校を挙げて行われている。男の先生たちも参加するんだ。なぜかはわからないけどね。

 とりあえず可愛いポーズでフリフリしとけばそれだけで満足してくれる人もいるからね、頑張らないと。体力は持つはず。今年は味のクオリティもプロ顔負けなはずだから満足してもらえるといいんだけど。



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「今年もか」

「むっ……」



 桜は初めて叶のバレンタインデーの下駄箱をまともに見た。とてつもない数のチョコレート。圧倒的数量。もはやそれは下駄箱内に収まりきらず廊下にまで大量に散乱している。

 桜は嫉妬の気持ちで弾けそうになったが、叶は頭を撫でながらなだめた。



「大丈夫、申し訳ないけど受け取らないから。今年は仲良い人と桜の本命チョコだけもらうよ。じゃあ行こうか」


 

 イケメンで優しくて頭が良くて運動もできる叶はモテる。故にバレンタインデーは兄とは違く、正当な大変な目にあうがいつもなんとかしてきた。

 ただこの年は困ったことに、家に帰ってからチョコレートとともにひどくべったりと桜からくっついてきたのだった。




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バレンタインデーイラストチャレンジ!!

……は、残念ながらクリスマス同様ありません。単行本作業に没頭するあまりもう一年近くなにも絵を描いてないので、描ける自信もなくなり、描きませんでした。許して欲しいでござる。

そのかわりLevelmaker1巻の可愛いアリムちゃんを眺めて欲しいでござるよ。

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