第980話 ローズの戦闘
「いや……まて」
「これから殺す相手に待てと言われて待つ奴がいるか。急に吾輩を恐ろしく思ったのか?」
「違う、ここは人が多すぎる。別の場所に移動しよう」
「なぜ吾輩が人間の安否を気にしなければならない? お前はつくづく人間に感化されているなっ!」
カオスブラックドラゴンを自称している黒い竜族の男は手のひらにためていた闇属性の攻撃魔法を地面に叩きつけようとした。その瞬間、地面から太く屈強で黄金に輝いている茨の蔓が生えてきてあっという間に彼を取り押さえた。
「危ないことをする……」
「植物を操る高ランクのドラゴンの魔物、そしてほのかな薔薇の香り。なるほど、お前はローズキングドラゴンの亜種だな」
「……」
「たしかになかなかやるようだが、相性が悪いな」
カオスブラックドラゴンがそう言うと彼を抑えていた蔓はあっという間に枯れてやせ細り、簡単に引きちぎられるほどの強度まで弱くなってしまった。
「……ふむ」
「くっ……!?」
「だが今の締め付けの強さ。この吾輩が痛みを感じた。となるとお前は普通のローズキングドラゴン同様のSSランク程度ではないな。となると、そうか。転生とやらをしているな」
ローズはこの男がアリム達やギルマーズ、ウルトや城の重役達しか知らない言葉を放ったためひどく驚いた。男はニヤリと笑った。
「やはりな。となると……アリムとか言う偽の勇者に教わったな? すでにお前はあの者の息がかかっていたわけか」
「……そ、それがどうしたと言うのだ! どこで転生の情報を得たかは知らぬが、その通り我は転生をしている」
「だから意気揚々と吾輩に挑んだのだな。どちらにせよお前は最初から抹殺するしか選択肢がなかったようだ。気になって声をかけた同胞がまさか狙っている敵の一人だったとはな」
「どういうことだ……」
「さっきお前は吾輩の質問に答えなかったんだ、吾輩が答える義理はない」
カオスブラックドラゴンは自身の人間としての手をまるで竜の鉤爪のように形作り、ローズに向かってそれを振り下ろした。ローズはそれを回避した。
おもいきり振りかぶったその攻撃は地面に叩きつけられる。衝撃で大きなクレーターができたがそれ以外にも彼の攻撃が当たった地面は比較的新しく塗装された道であったのにもかかわらず、そのクレーターの範囲だけ数百年は経ったかのように劣化していた。
「まさかステータスが上だから勝てると思ったのか? 甘いな。大事なのはステータスよりもスキルだ。スキルによってはレベル1でもレベル255に勝てる」
「お前のスキルは我のより優れていると言うのか?」
「実際そうだ。もし吾輩の攻撃がお前にかすりでもすれば、お前は一気に数百歳の歳をとって死ぬ。お前に抗う術はあるか?」
「……ある!」
ローズは杖を構えた。先ほどの攻撃ですでに民間人は各自で勝手に避難しており、中範囲程度の攻撃ならば周りを気にする必要は無くなっている。建物を破壊しない程度にローズは自身が覚えている最高威力の魔法を唱えた。
「黄金なる神の薔薇園!」
「ほう」
辺り一面が一瞬で魔力を大量に含んだ金色の薔薇園に変わった。前にダンジョンをクリアしてから日々改造を加えて強くしていったSSランク等級20のスキル。ローズの奥の手の一つであった。
「薔薇を咲かせてなんになる?」
「攻撃になる」
「……油断はしない方がいいだろうな」
「油断していてもしていなくても一緒だ」
その時、風が吹いた。薔薇の花弁が何枚か吹き飛ばされる。その花弁らは全て狙ったようにカオスブラックドラゴンのもとまで飛んで行き、黒づくめの服の端に付着する。
その瞬間、カオスブラックドラゴンを中心に小規模高威力の爆発が起こった。
「ぬぅ……!?」
「もし少しでも動いたらすぐにあたりの花弁は散る。薔薇のような形をとった木属性の爆発が起こり、さらに周囲の薔薇は散る。そして全ての花弁ななくなるまで……ずっと攻撃をし続けるのだ。我の大事な友人であるアリムを狙っているようだしな、悪いが手加減なしだ」
ローズが宣言した通り、爆発が起こり花弁が散り、その花弁が張り付いてまた爆発が起こる。男が勢いで吹っ飛ばされた先にまたひとかたまりの薔薇の園があり、そこでも連続して爆発を起こした。
ローズはその間に魔法を唱え、次々と薔薇を追加して行く。しかしその最中、黒い波動がほとばしりあたりの薔薇は全て黒ずんだ。散ることなく枯れ、爆発も起きない。ローズがその目に捉えたのは致命傷すら負った形跡のないカオスブラックドラゴンを自称する男だった。
「なかなか良いんじゃないか。ただ先ほども言った通り相性が悪い」
「な、なぜ……? 枯れさせるスキルで対処したのはわかる、だがなぜそんなダメージを……」
「お前が人間だからだ、元ドラゴン。魔法に夢中だったのはいいが、なにか違和感を感じないか?」
そう言われてローズは気がついた。自分の体が何とも言えない気怠さに襲われていることを。まるで重い枷を大量に付けられ、その上で大病を患ったかのようや感覚。
「だからステータスなぞ関係ないと言ったのだ」
カオスブラックドラゴンは手を伸ばしてローズに歩み寄ってくる。ローズは再び距離を取ろうとしたが体が思うように動かない。
「なかなか悪くはなかった。これで終わりだ」
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すいません、遊んでたら投稿が遅くなっちゃいました……!
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