第970話 これからとスキル

「やっぱり友達で集まって遊ぶのもいいけど、私はこうしてる時が一番かな」

「そっか!」



 九人で遊び、八人でお風呂に入り、また九人で一緒の部屋に眠るという修学旅行みたいなことをした日の翌日、家に帰ってきてからミカが甘えてきていた。



「あ、そういえば国王様なんて言ってたんだっけ、これから。私たちがお風呂はいってる間に聞いたんでしょ?」

「うん、なるべく何かあったら報告して欲しいって言ってたよ。ギルマーズさんもラハンドさん達も呼んでくれれば協力するって」

「変なサムライと叶君を手にかけたスライムの話はした?」

「まあ脱獄犯のこともあるし、魔物以外にも警戒しておいてねとは伝えたよ」



 本当に遊ぶだけなら良かったんだけどな、本命は異変についてだから。まだ何か起きるかもしれないなんてビクビクしちゃって地球にすら帰れないよ。

 それにまだ国王様にも隠してることはたくさんある。例えば、まこのアナズムで神様だと崇められてる存在が黒幕かもしれないとか。特にそれはいえないよね。アナズムは宗教一つしかないもの。混乱が起きちゃうよ。事情を把握してるリルちゃんとその御両親だってわかっていても信仰してるのはアナズムの宗教なんだから。



「そういえば、今日ももうこんな時間だけど、結局SSSランクの魔物もそれ以外も現れなかったわね」

「そだね、数日間連続で現れてないね」

「気は……抜かない方がいいわね」

「なにか勘が働いたりしない?」

「そんな都合よく何か閃いたりしないよ。でも気を抜くのだけはまずい気がする」


 

 じゃあやっぱり油断は出来ないか。そろそろ地球に戻りたいんだけどな。俺たちがアナズムに行っているのは地球ではほんの一瞬の出来事であって、こっちでどれだけ過ごそうが最後に地球から出た時間に戻ってくるから心配はしなくていいけど。逆も然り。

 それでもワープ装置が黒幕の疑いがある神様と深く関係がある幻転地蔵様の姿をしてるなら、装置を使った瞬間に何かされたりしそうでこわいんだよね。



「あゆむぅ」

「よしよし」

「えへへ……ところでさ」

「うん?」

「私、そろそろスキルをどうにかしたい」

「ああ」

「だってもう、スキルしか鍛えるところないでしょ? そしてスキルが弱かったらいくらステータスが強くても意味ない……なんかそういう風になってきてる。あのスライムだって馬鹿げた能力で叶君と有夢のスキルをコピーしたわけだし」


 

 そう、そうだよね。スキルだよね。

 俺が得意なのはレベル上げだからゲームでもレベル上げばっかりやってたけど、やっぱり中にはスキルや武器のエンチャントやら、そういう要素の方が大切なゲームも多くあった。今発売されてるゲームはそれがほとんどなんじゃないかな。ま、そういうゲームにも適応はしてきたけどね。

 アナズムもそのタイプであるんだろうけど、魔神を倒す程度だったらステータスカンストしてれば十分だから……こんな状況になるって半年前は思ってなかったわけだし。うーん、やっぱりこっちでも適応する必要はあるのかな。

 少なくとも俺はアイテムマスターとダークマタークリエイトのオリジナルがあるからそっちも申し分ないけどさ、国王様と話しながら考えていた通り、ミカやリルちゃんのような火力を出すスキルしかないのはどうにかした方がいいよね。



「有夢と叶とおじさんは十分強いスキル持ってるけど、それ以外が……ね」

「うん、そうだね。その通りだ」

「ここはひとつ、時間停止できるスキルとか開発してみようよ」



 でもどうやって作ればいいかが問題だよね。たーっぷり考えなくちゃいけないと思う。



「有夢ってスキルカードたくさん持ってるでしょ? なんか適当に組み合わせてさ、おじさんみたいにすごいのできない?」

「できるかも」

「今日はもう疲れたから明日か明後日にでも、この家に住んでる全員で集めたスキルカードを持ち寄って、どんなスキルがあるか把握しておいた方がいいよ」



 まったくもってミカの言う通りだ。まずはそういうところからやっていかなくちゃ。何もしないよりは数段マシだよね。なにもダンジョンを何百、何千周もして手に入れたのは経験値だけじゃないんだから。

 ……そうと決まればスキルカードを読み込んで判別・保存してくれる装置を作った方がいいかな。分類ごとに分けたりして。一枚一枚、この屋敷に住んでる人たちだけで確認作業するのは時間がかかりすぎるからね。


 

「じゃあ早速、今からその準備するよ」

「まあまあ、そんな急がなくてもいいんじゃない? もうちょっとこうしていたい」

「いいよ」



 スキルを覚えさせるにしても、それぞれみんなの得手不得手を考えなきゃいえないよね。叶のスペーシオペラティオンだっけ、あの瞬間移動の上位互換スキルもI.Qが200以上ある叶だから使いこなせるんだろうし。ミカだと例えばなにがいいかな。



「んんぅ……えへへ」



 可愛いな。うん、そもそも戦闘に参加させること自体が間違ってるんだけどね。俺もできることなら危ないことから遠ざけたいんだけど……それも難しいだろうし仕方ない。



#####


締め切り……締め切りがこわいよ……ああっ、すぐそこまで……!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る