第961話 SSSランクの魔物をどうするか

【______それでは本日から少しずつ頼みごとをこなしていただきますよ】



 神が作ったといった場所で、神が彼らにそう言った。神によってあつめられた者たちは2日間ほどこの空間に滞在させられた。

 その間に出た食事はSSSランクの魔物をふんだんに使った豪華な食事であり、脱獄犯やその他、どこかしらで普通に過ごした時期のある者はみんな概ね満足しており、神と名乗る存在に反抗する気持ちは芽生えていない。



「はい質問!」

【何でしょうかイルメ】

「さっき私みたいなSSSランクの魔物を人間たちに向かって毎日数匹ずつ解き放つのはもうやめるって言ってたでしょ? なんでやめちゃうの?」



 イルメと名乗る少女の姿をした魔物の言葉に数人が頷く。敵対する団体はSSSランクの魔物の討伐に躍起になっており、日々、疲労する様子が見て取れた。このまま1ヶ月は続ければ精神的にきつくなりそうだったのである。



【生き返らせられるSSSランクの魔物が少なくなってしまいました。人間達の疲労を狙いつつこの場にいるイルメ、そしてもう一人のような実力者の選定を行なっていたのですが。人間の方に冷静に頭を回せる者が居たようです。まあ二人発見できただけでも良いでしょう】

「へーっ。私達特別なんだね。ねーっクロポン!」

「……吾輩に変な名前をつけるな」

「えへへー、ごめんごめん」



 イルメに話しかけられたのは、全身真っ黒な服で身を包んでいる一見竜族に見える男だった。彼も本来は魔物であるという。



「神様よ、ならアンタが作りつつ送ればいい。可能なんだろ?」

【SSSランクの魔核を排出する魔物や悪魔を作り出すことはできますが、それはステータスとスキルがあるだけ。いくら赤子同然の存在にに力与えても偽の勇者にすぐに倒されるのがオチです。それに、大量の魔物を葬り去る方法が編み出された以上、何千体と生み出しても結果は同じです】

「それほどの強者が向こうにいる……それは是非手合わせして見たいでござるな」



 サムライは嬉しそうにそういった。イルメと名乗る魔物は自分が得た記憶からそのような力を得た人物を想起してみることにし、すぐにそれがだれか思い当てることができた。



「わかるよ、勇者ちゃんのお父さんでしょ! 弟くんの頭脳と勇者ちゃんの創造力をどっちも持ってるみたいな感じだし」

「ほほう、やはり子を思う父というのは強いのでござるな。美しきことでござる」



 うんうんとサムライが再び嬉しそうに微笑む中、ニヤニヤと笑みを浮かべている細身の男が手を挙げながら立ち上がった。



「それならなららば、それならば! ちょーくせつこの私めが勇者たちを滅ぼほろほろほろぼろぼ! 滅ぼしてきましょうか!」

「おい黙ってろ殺人鬼!」

「だって、はやく、少女の断末魔、ききたいききたいたいたいたい! アナータナタナタも同じだとおもってるよっよっ奴隷商~!」

「ちげぇよボケ。ていうか黙れ」

【ヒュドルの言う通りです。まだこの場にいる者が動く時ではない】

「ええええ~」



 殺人鬼と呼ばれた男は体をくねらせながら大人しくその場に座り直した。



「だが神様、魔物を途切れさせたらあいつら数日で今までの分の疲れは取れちまうんじゃねぇのか? やっぱ魔物は出来損ないでも途切れさせない方が……」

【もう無意味なのですよ。イルメが勇者の弟を殺してから彼らの心が折れるか、むしろ力が増すかのどっちかの未来があったのですが……。結果の通りです。一昨日までは前者の確率が高かったのですけどね】

「なるほど、数の問題だけじゃなくもはや意味もないってことか」

「まあ私が思うに未来がどうだったかなんてわかんないけど、魔物を送り続けるくらいでめげなかったと思うな! 疲れるなんてもってのほかだよ」



 イルメがヘラヘラしながらそう言った。彼女からクロポンと呼ばれていた男は気になったような様子を見せる。



「そうなのか? しかし神の未来視という力は……」

「それって単に仮説や予想が映像で見えたってことにすぎないじゃない? どっちみちこうなってたと思うな」

【イルメはそう思いますか】

「うん、まず勇者ちゃんの忍耐力が化け物レベルだからね。それに体力もすごいよ。SSSランクが毎日湧き出してるにも関わらず毎晩何時間も彼女とエッチして……」

「こら、いくら敵でもそういう痴事の暴露をするのは良くないでござるよ」

「お侍さん、そんなこと言ったってね? 記憶を読んだ私がドン引きするくらいなんだよ。猿みたいに盛ってるなんて表現が生易しいくらい。そっち方面でも化け物なんだ」



 頬をぷくりと膨らませながら言ったイルメの主張。イルメは暇があればアリムの記憶を読み取ってから少しずつをほじくり出そうとしていたが、アナズムに来てミカとあってからの記憶のほとんどがピンク色に染まっており、体を重ねているシーンがほぼ毎晩続くためほとほと呆れ返っていた。



「顔の写実は見せてもらったが、吾輩はあんな愛玩用の魔物みたいな顔をした人間二人が風紀のカケラもないなんて信じられない」

【まぁ、そっちはともかく、忍耐力も化け物なのは確かです】

「かかかか、神様がお認めみとみとめみとになさるのですから! そうとそうととそうとうなのでしょーね!」

【ええ、だからレベルメーカーなのです。一筋縄では行きませんよ?】



 その言葉を聞きその場にいる全員が黙った。神は構うことなく話を続ける。



【とりあえず1週間ほどは彼らになにもしないでおきましょう】

「なるほど、少し警戒を緩ませてから狩る作戦だな?」

【そんなところです】

「どうせまたその1週間の間、勇者ちゃんと彼女ちゃんはエッチなことしてるんだろーなー」

「そこまで言うと流石にかわいそうでござるよ」



 ちょっと怒ったようなそぶりを見せながらサムライはイルメの口を塞ごうとする。イルメはそれを受け入れつつも手のひらに新しい口を作りそこから喋った。



「だって仕方ないじゃん、もう彼女ちゃんの体の柔らかさが記憶を読んだだけでもありありとわかるくらい……」

「イルメ、いい加減にしろ」

「えー、クロポンその顔怖い! ……わかったよ」

「神の御前でシモの話はよくねーわな! じゃあとりあえず1週間は暗躍してりゃいいってことだろ? な?」

【はい、是非頼みごとの遂行をお願いしますね】



 この日の会議は御開きとなった。




#####


そういえば発売まだですけど、レベルメーカー書籍版2巻の作業に取り掛かってます。だいたいミカが転生してくるところから誘拐されたカルアちゃんを救うところらへんですね。

今回も1から書き直そうと思ってます。……1ヶ月で17万文字書き切らなきゃ(`・ω・´)ふんすっ!

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