第960話 国王らの帰還
「ただいま帰ってきたぞ」
「お父様! おかえりなさい!」
メフィラド城にて、自身らの戦力を高めに行っていた国王達が城に戻ってきた。城内のある程度の実力がある者全員がその魔力をはっきりと感じ取れるほど高まっている。
「お父様方、お帰りなさい。それでどうでした?」
カルア姫、カルナ王妃とともに帰還した父親のお迎えに来たティールがそう質問した。国王は軽く首を振る。
「いやはや、今までレベルが上がらなくなるまで上げたことなどなかったが、転生というものは強力だ。これはもしかしたらSSSランクの規定を見直さなければならないかも知れん」
「アリム殿が発見したのでしたな。あの底が知れない強さの秘訣がわかりましたな」
「それで何度転生したのですか?」
ルインが質問をする。国王ら四人はそれに答えた。元SSSランカーでありレベルは230を超えていた国王は21回、元SSランカーであった大臣、騎士団長、大司教の三人は20回行ったと答える。
「それではかなりの実力を……!」
「ああ、お陰でSSランクスキルや星五つのスキルもだいぶ増えた」
「だが、アリムの言っていた通りこれは我々の間だけの秘密にすべきだな。メフィラド王国でしっかり管理せねばならない」
「もし広まればアナズム全体の均衡が数年で崩れてしまうのは必須ですからね」
「ダンジョンは最も価値のあるものになり、野生の魔物はほぼ全滅するでしょうな」
すでにメフィラド王国内には転生までこぎつけたものがアリムが把握しているだけでも二十人近い。これだけでももはやアナズムで最強の国である。もし転生がアナズム全体に広まって仕舞えば大臣のいう通り強さのバランスが崩れ、人々は強くなった後に魔物を狩り尽くしてしまう。
アナズムにおいて魔物というのは動物の総称でもある。魔物イコール動物であり、人に害をなさない魔物、むしろ利益を生み出す魔物は非常に多い。そんな魔物達が狩り尽くされてしまったら今度は人間が困るのである。
アナズムは耕作は広まっているが、無尽蔵に湧く魔物のおかげで肉には困っておらず、地球ほど牧畜の技術が発展していない。牛乳や卵を効率よく手に入れるためうまい肉を比較的安くするために行われてはいるが、それでも少ないのである。
「国の最重要機密としても良いかもしれんな。ともかく悪しき人間の目に触れるのだけは避けねばならん」
「アリムちゃんに頼んで、転生やレベル上げの方法をまとめた書物を許可がないものが触れれば何か起こるようなアイテムを作ってもらった方がよろしいのではないでしょうか」
「ああ、そうしよう。……そうだ、悪しき者といえば我々が慌てて戻ってきたのはあの者の脱獄を聞いたからなのだが。とりあえず詳しい話を聞きたい。団欒はその後だ」
国王達は戦闘用の服装から着替えた後、すぐに監獄の管理をしていた者を呼び出した。呼び出された管理人はあったことを事細かに、正確に話した。
「なるほど。神に認められたと言い始め、どうやってから魔法を使ってこの国が誇る拘束を解いて脱獄。その後皆の目の前から消え去りそのまま行方不明か」
「あのような者を神がお認めになるはずがない!!」
「大司教という仕事上、声を荒らげるほど怒りを思うのはわかるが今は少々大人しくしていてくれ。話を聞くだけではどう考えても何者かの助力を得ているな」
「それから一度も出現していないのですかな?」
「はい、行方がわからぬまま既に3日目です……」
国王は自分のあごひげを撫でる。彼は正直なところ、今の自分達の実力でこの事件を解決するのは簡単だと踏んでいたが、何者かが裏で糸を引いていることと行方不明になっていることでそう簡単にはいかないと思い直していた。
「どうなされますか?」
「とりあえす、ラストマンとパラスナに復讐の矛を向けることを危惧するべきだな」
「パラスナ殿はラストマン殿の子を身籠もらましたし、自衛は普段より困難ですな」
「とりあえす二人の警護をしよう。本当なら必要はないが念を入れておいても損はない」
国王は騎士団長に命じ、早速、二人の警護をするための兵を募りにその場を去るようにった。管理人も帰らせる。大臣と大司教にも開けていた分の仕事を何とかしてくるように言い、玉座の間には国王の身内だけが残った。
「ところで、相変わらず何日間も連続でSSSランクの魔物の存在を感知したのだが毎日全て倒されているようだな? なにか知らないかティール」
「申し訳ありませんお父様。私はなにも……各地のSSSランカーが対応しているのでは?」
「お父様、お兄様、そういえばアリムちゃんがここのところお屋敷から出ていないみたいなんです」
「ではあの屋敷に住んでる者らで対応してるのか。そういえばアリムの弟は場所を一瞬で移動できるスキルを所持していたな。それとアリムのアイテム作成能力を生かせば確かにSSSランクの魔物が各地に大量に現れてもなんとかできそうだが……」
「ですが?」
「やはりなぜこんなにもSSSランクの魔物が現れるのか」
国王は深いため息をつく。話が一段落済んだところで、ルインが思い出したように口を開いた。
「そういえば、お父様。ラハンドさんとガバイナさん達がめっきり実力をつけて城を訪ねてきました。おそらく転生してるのだとおもうのですが」
「そうそう、ローズちゃんがアリムにいいレベル上げの方法を教えてもらったとかなんとか」
「そうか、転生の話が広まるのは危険だし、その危険だと言い聞かせてきたアリム本人が言い回ってるのはどうかと思うが……彼らなら信用できる。今明らかに異変が起きているアナズムにおいて少しでも戦力が多い方が良い。彼らを呼ぶか……」
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