第940話 黄衣の王 (翔)

 大事な話の途中でも現れるなんて、マジでこっちの状況なんて気にせず来るから厄介だぜ。だが魔物なんてそんなものか? 現れる時は決まって同時っつーのは、やっぱアナザレベルとかいう神様が関与しているからだろうか。

 しかも途中からやけに強いSSSランクの魔物が増えた。あいつら、何らかのシリーズものなんじゃねーか? ドス黒い何かを感じる。例えるならゲーム終盤に出てくるような、今まで登場した敵とは明らかに違う雰囲気を醸し出し、デザインもやけにおどろおどろしい奴らみたいな感じだ。

 今回、俺が担当した黄色いフードの人型もそう。人型っつーことはゴブリン系かアンデットだとは思うが、この間倒した巨大なにんぎょのおっさん……ダゴンと名乗ってたか、あいつと同じ感じがする。ダゴンはおそらく俺が戦ってきた魔物の中で一番強かった。数十メートルの津波を何回も引き起こしてきたからな。あの時はリルも一緒で、海の動きを二人で念術で止めて被害が出ないようにしたが、普通のSSSランクの冒険者じゃまず勝てなかっただろう。

 そして今日はリルには留守番してもらうことにした。有夢と叶君がそれぞれ彼女を置いて一人で向かっていったように、俺もそうすべきだと考えたからだ。二人の言い分と同じように大事な人には被害のないところで待っていて欲しいし、二人が一人で戦ってるのに俺だけカッコがつかないしな。



「さーて……」



 上空に奴はいる。画面で見た時より実物はものすごくでかい。下から見上げてる状態だが、黄色いてるてる坊主のような衣からは中が見えない。



「………とても大きな魔力の反応がある。だれ?」



 っと、俺の魔力に気がついたみたいだ。俺も空へ駆け上がり、奴より数メートル離れた先で空中停止した。マジかで見てみるとめっちゃ気持ち悪い。まだ人魚のおっさんの方が良かったぜ。相変わらずフードの中は見えないし、唯一露出している腕は触手が何本も集まって形作ってるみてーだ。

 ……強く風がなびいている。それだけじゃねー、目視できるほど奴の周りは風が渦巻いている。風使いか?



「我はハスター。………アナタは冒険者? 愚かな人間」

「ああ、そうだ。お前を倒しにきた」

「……我、不思議な力により復活したばかり。何が何だかよくわからない。しかし、倒すと言うなら返り討ち。人間は愚かで脆い。これは常識」



 奴は腕を上げ、すぐにそれを振り下ろした。魔法陣が……おそらく千個は超えているだろう数が現れ、そこからピンポイントで俺に向かって竜巻が起こる。やっぱ風使いだったな。

 この竜巻はどうやらSSランクの魔法みてーだ。一発一発の規模は小さいが威力は絶大なんだろう。それが、何千発。俺でも食らったらまずいんじゃねーか? とりあえずアレを使うか。



「………? まだ魔力の反応がある。生きてる?」

「おう、生きてるぜ」

「………お前の身体、炎でできている……? なるほど、これは厄介」


 

 強敵らしい強敵がいなかったからあまり使ってこなかったが、このスキルはすげー便利だな。魔法も一応、発動した後は物理法則が効くからこのように炎になりゃ、身体からすり抜けていく。



「今度は俺の番でいいか」

「我、警戒。こいつは強い」



 まずは一発、俺の十八番をお見舞いだ。



「ウグオオオオオオオオオオオ!!? 魔法陣が見当たらない……その上なんて火力! 確実にSSランクの魔法……!」

「SSランクの魔法じゃない。ファイヤーボールだ」

「ありえない」

「これをお前が倒れるまで、撃つ」

「しかし、こうなったら……!」



 ハスターと名乗った相手は片腕を俺の方に向けると、そのまま動きを止めた。明らかに何かしそうなので、俺は気にせずファイヤーボールを何千発か撃とうとした。しかし身体が言うことを聞かず魔法が撃てない。



「どうなってやがる……!」

【どうなってるんだ……! ちゃんと憑依できない……! ステータスが高すぎる……!】



 頭の中で奴の声がした。なるほど、憑依攻撃か。たしかにそうすりゃー俺はとりあえずなんとかなるかもしれねーからな。

 だが今まで俺に取り付けたのは魔神しかいねー。規格外とはいえSSSランクの魔物が魔神と同じことやろうなんざ無理だったと言うわけだ。



【我の憑依は一撃必殺……! 憑依先は元の姿ではなくなる……!】

「マジかよ!? さっさと離れやがれ!」

【……無念、復活してすぐだというのに】



 なんて恐ろしい効果持ってんだ。頭の中の声を振り払うと、それで奴も出ていったみたいでハスターの本体は再び呼吸を始めた。つーことは、もう攻撃できるってことだな。



「……じゃあな。ファイヤーボール」

「グヌオオオオオオオオオオォオオオォオオオオオ!」



 跡形もなくなるまで燃やし尽くした。これはもう、流石に復活するなんてこともないだろ。

 しっかし、普通のSSSランクの魔物ならこんなことせず、魔法をぶっ放すだけて手早く勝てるのからな。やっぱ強かったんだな、多分。





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ウィキペディアで基本調べてるのですが、クトゥルフ神話の神ってなんかえぐい力を持つ存在が多いですよね。

ちなみにラスボスはクトゥルフ神話には関係ないです。

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