第909話 アリムからの良提案
「しかし、まさかSSSランクほどの強さになるなんて思ってもみなかったよな」
ガバイナさんがそう呟いた。自分たちで鍛えておいて、自分の強さが理解できない……まあ、ダンジョン周回はあまりにも簡単すぎるしそう思えてくるのも仕方ない。
「実はなアリム、これでもオレ達、ダンジョンの真のボスってのと数分前に戦ったばっかりなんだぜ?」
「連戦なんですか」
「そうだ。だが一応そいつはゴッグとマーゴの二人だけで倒しちまったから正確には連戦でもねーけどな、ヒャハハハハ!」
「褒めるなら抱き締めて!」
「撫でるので我慢しろよ」
「………うん」
この様子だとローズだけじゃなくてマーゴさんの恋も実ってないな。子供扱いがそのままだ。
「それはさておき……レベルだけではなく言っていた通り、素材もすごい量が手に入った」
「でしょう?」
マーゴさんを撫でつつ、ガバイナさんは自分のアイテム入れをさすりながらそう言った。見た所無限に入るポーチではあるけれど、後になってその効果を付け足した感じだ。多分、隠し部屋のミッションかなんかでエンチャントカードを得たんだろう。ふむ……見た目も性能もいい装備を武器の他に作ってあげてもいいかも。
「そうそう、正直持て余してるんだよね」
「ボク達も同じことしたときは持て余してますね。売るにも引きも取ってくれるところはそう多くないですし。無いよりはマシですが」
「アリム、うまく引き取ってくれる取引先を知らないか? もはや我らのアイテム入れはある部屋の宝箱から得た無限のエンチャントカードでエンチャントしたにもかかわらずいっぱいになりそうだ」
むむむ、この悩みはわかるよ。俺もこんな地位に立っていても物の処理は仕切れてないわけだし。なんなら俺が買い取っちゃうってのいうのも手。最近は消費できるような目処が立ってきたし。
いや、お金を渡すというより、この場でさっきの通り武器を作ってそれを対価とするのはどうだろう。もともと武器を作ってあげる約束は2週間前からしてたんだし。
「じゃあ、ボクが引き取りましょうか」
「えっ、いいのかアリム」
「いいですよ! この後ろのデカいのも含めて皆さんが今回手に入れた不要なアイテムの9割を引き取りましょう! もちろんタダとは言いません。……よいしょっと!」
空中にたくさん武器を作り出して並べてみた。いわゆるサンプルだね。別にこの中から選んでもらうわけじゃないけれど。
「ふふふ、皆さんが手に入れた素材やボクの手持ちのものとを掛け合わせたり、後ろのデカでかいやつを使ったりして、武器や防具を新調して差し上げます!」
「おお……っ!」
「そういえばアリムは今、アナズム1の鍛冶屋でもあると小耳に挟んだことがある」
「我の知らぬところでなんでもやるな」
「ふっふっふ……まあね!」
5人は相談を始めたが、すぐに返事が来た。どうやら俺の提案を受け入れるらしい。そりゃ邪魔なものを引き取ってもらえる上に有名な武器職人に武器と防具を新調してもらえるなら誰だったそうするよ。
「じゃあまずはアイテムの受け渡しから」
「あー、その前にオレ達腹が減ってるんだ。まずは街に帰ってもいいか?」
「そういえばそうだった。一服したい」
「わかりました」
と、言うわけで俺たちはここから街へ帰ることに。当然ながら移動用の乗り物は俺が用意する。あ、SSSランクの魔物は俺が回収しておいたよ、とりあえずね。
「これで自動で街まで行ってくれますから。すぐつきますから、のんびりはあまりしないでくださいね」
そう、注意だけしてすぐに出発させる。言った通りものの5分程度で街までたどり着いた。
「んじゃ、まずは飯屋探すか……どかーんとウメェもん食いてぇな」
あ、そうだ。ご飯を食べるのももしかして俺の下でいいんじゃ無いだろうか。屋敷に連れて行けばご飯食べさせてあげられるし、アイテムの受け渡しも簡単だし、武器もすぐ作って渡せる。
「じゃあウチきます?」
「ウチ? ウチとはアリムの家か?」
「そうです。アイテムの受け渡しも、装備の制作もするんですから、ボクの家に来てもらったほうが楽かなーって」
「そうだ、そうしよう! アリムの作る飯は格別だぞみんな! ど、ドラゴンのステーキとか……ちょっぴり怖いけど」
そりゃローズ的には怖いよね。目の前で自分の体だったものの肉を提供するのは可哀想だったって、ちょっとだけ反省してるよ。
「は、本当にアリムちゃんの家に? いいのかい?」
「ええ、構いませんよ。みんなで行きましょう」
「……言葉に甘えるか」
「だなー」
「あ、あ、あ、アリムちゃんとミカちゃんのお家かぁ……!」
「ゴッグ、ワクワクする気持ちわわかるよ!」
ローズ以外は来たことがなかったはず。昨日といい、やけに人を呼ぶことになるね。まあね、あれだけ広い屋敷だし本来旗パーティとか開いたりするものなんだろうね、人を呼ぶのが正解のはずだ。
「決まりですね、行きましょう!」
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