第907話 植物の魔物と元金薔薇の竜
「どうしよっかこいつ」
「すごい触手の数ね」
ミカの言う通り、本体の気持ち悪い花意外にも気持ち悪いツルがたくさん伸びていた。本体から直接生えてると思われる8本程のぶっといものと、さっき俺の足をつかんだような、その8本から枝分かれしたりして生えている無数のもの。
8本のメインの方は棘が付いてていたそう。
「燃やす?」
「それが一番かもね」
森まで燃えてしまうかもしれないけど、俺ならあっという間に元に戻すことができる。あからさまに火が弱点っぽいし、さっさと魔法で消し炭にしちゃえば早く家に帰ってミカとイチャイチャができるだろう。
「よーし、じゃあ……」
「金薔薇の破光!!」
「ん?」
<ヌガアアアアア!>
俺が炎の魔法を使う前に金色の魔法陣が植物の斜め上から出現し、これまた金色の光線を浴びせた。まだ植物は生きているが、なかなかの威力だったようで痛み苦しみ、悶えている。
「俺たち以外に近場に冒険者いるみたいだね」
「でもこの感じ、どこかで……」
この国のSSSランカーは全員知ってるし、こんな魔法を使う人は居なかったはず。でも今の威力を見る限りではSSSランカー級の強さを持ってる人だ。しかしミカの言う通り、既に知ってるような感じがする。聞き耳たてたりして様子を探ってみることにした。
「ふむ……これでは倒れないか」
「やっぱりAランクスキルじゃダメなんだよ」
「そうだな……ステータスが上がってるとはいえ最低でもSランクスキルは使わないと……」
この口調、この声、確かに聞いた覚えたがあると思ったら……。ローズだ。ラハンドさんとガバイナさん達にダンジョン攻略にアナズムで二週間前くらいに行ったっきり一度も顔を見てないローズだ。
まさかこんなところに居たとは。ラハンドさんの連れてる双子のマーゴさんも一緒だね。となると、もしかして……。
「おうおう、しかしあのバケモンはSSSランクだろォ? Aランクスキルであれだけダメージ与えられてるだけ十分強くなってんだョ」
「流石だよ!」
「ああ、さすが私達を引っ張ってダンジョンの攻略の先頭を切ってくれていただけのことはある」
「え、えへへ、そ、そうか? 」
やっぱり他の3人もちゃんといた。それぞれなんだか立ち振る舞いとかが見違えるようになってる気がする。そもそも感じ取れる魔力が大幅に高くなってるし。どうやらアドバイスが効果あったみたいだ。
「あの時送り出したメンバー全員いるね。どうする?」
「もう少しここで様子見よ。もともとSSランクだったローズはともかく、他の人達がどうなったか私見てみたいし」
「そだね」
ミカの言う通りだ。知り合いがどのくらい強くなったかかなり気になるとこら。
SSSランクが大量発生してるこの事態に戦略として数えられるかどうかも知りたいしね。
「ねぇ、やっぱりこの植物、SSSランクの魔物なんだよね? 間違ってないよね?」
「安心しろマーゴ。我の探知にもSSSランクの反応と出ている。普通は幻のような存在だし信じられなくても仕方ないがな」
「しかし、まさかダンジョンから出てすぐにSSSランクの魔物と遭遇するとはなァ。先月までのオレらなら、確実に死んじまってた」
「だがむしろ今は好都合……だな」
多分、レベルアップしてなくてもローズが一人でその植物を引きつけて残り4人を逃しつつ俺たちをメッセージで呼ぶってことくらいできたと思うけどね。
それはさておき、今度はラハンドさんが戦うみたいだ。あの人の戦い方は物理、しかも素手。どんな戦い方するんだろ。
「んじャ……今度はオレの番な! ザ・シュラドー!」
手のひらを合掌するように合わせると、なんと腕が左右に2本ずつ、合計4本も新しく生えてきた。さらに頭が3つに増え、身体の色も熱した鉄のようになる。なんなかめちゃくちゃ強そう。
「ヒャハハハ! 喰らえ、修羅・体撃神奥義・轟の……打、撃、翔!」
一瞬で植物までの間合いを詰め、それぞれ対になる腕3組でそれぞれ奥義技を放つ。どうやって三面六臂になるスキルを習得したのか知らないけど、腕を生やして別々の技を叩き込むのはすごくかっこいい。威力も申し分ないみたいだ。
とてもじゃないけど、やっぱ、以前のラハンドさんからは想像できない強さになっている。ラハンドさんはまた一瞬で4人の元まで戻った。
「ッラアア! あとなんか攻撃したら倒せるんじゃねーかコレ!」
「そうか? じゃあ私が行こう」
「わ、我とラハンドに引けを取らぬように頑張って……ね」
「ああ」
ガバイナさんをよくみると、使っている武器は以前のままだ。これは新しく作り直してあげないといけませんな。ガバイナさんはその槍を構え、技名を唱え始める。
「神竜の咆哮槍!」
その場から動かず、槍だけを思いきり植物に向けて突き出す。すると赤いオーラのようなものが出現し、それがドラゴンを形作り、そこさらにビームを放った。
みんな、なかなか変わった技を習得しているようで。
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