第898話 国王vs.聖龍 3
<本気出すのー?>
<死んじゃうかもしれないけどいいのかしら?>
「構わん。どうせ倒すまでには至らないだろ」
<まあっ! 王ちゃまったら……。悔しいから何が何でも致命傷与えちゃう! やるわよベヘモット>
<うんー>
なんかやる気出し始めると、その二匹がそれぞれ禍々しいオーラを出し始めた。攻撃系のものかと一瞬思ったけど、よくよく観察してみるとどうやら補助魔法系みたいだった。
<なにを……ん?>
<あーら、どう? 変化を感じるかしらぁ?>
<弱体化魔法の類か>
<そうそう、ワテシ自慢の『嫉妬の海』っていう技なんだけど、これは……>
「余計なことを喋るなよ、レヴィアタン。技の説明は仲間になったあとでいい」
<それもそうね>
ファフニールの様子がなんだかおかしい。体調不良にでもなっているみたいだ。本人が今、弱体化魔法の類かと言ってたけど、実際そうなんだろう。いつも強化ばかりで弱体化はあんまり使ったことないから詳しくはわかんないな。ゲームで遊ぶ時は弱化魔法は必須の場合とかあるんだけど。
「では、あとは好きにやれ」
<はーい!>
<はぁい!>
二匹が同時に魔方陣を出す。ベヘモットから感じる魔力がさっきより大きい。強化魔法でもかけられたみたいだ。でも国王様はすでに二匹に召喚魔法用の強化魔法をかけている。
弱体化はレヴィアタンがファフニールにしたっぽいし、ベヘモットが自分とレヴィアタンを強化したのかもしれない。となるとさっきでていたオーラが補助魔法系というのは大正解だったわけだ。
<くっ……!>
<うおりゃー! とりゃー!>
<あらあら、逃がさないわよ! おほほほはほ!>
二匹による凄まじい猛攻。そりゃ国王様の魔法によってSSSランクの実力まで強化された魔物が二匹もいるんだ、流石にファフニールもひとたまりもないでしょう。
でもなんとかさっきの金色の状態になりながら二匹の魔法による連続的な攻撃をなんとか避け続けている。それどころか隙さえあれば光属性を含む攻撃で二匹に反撃している。
「思ってたよりすごいね、ファフニール」
「だねぇ……」
「でもなんで有夢があげた翼を使わないのかな? 一気に有利になるよね?」
確かにそうだ。まあ、理由はなんとなくわからなくもない。単純に慣れてる戦法で戦ってるだけだと思うんだ。
<すばしっこいし痛いよー!>
<流石は純正のSSSランクね! 普通のワテシ達ならたちうちできないわ!>
「そろそろ決めるか」
<ええ!>
<うん!>
国王様の合図とともに、二匹ともが自身と同じ大きさの魔法陣を身体から出現させる。そして国王様自身も何かスキルを使うみたいだ。
<これが最後の攻撃か……耐え切ってみせる!>
「耐えてもらわないと困るのだがな」
<くらいなさーーい!>
<いけーー!>
その様子はまさに天変地異。海が降り、大地が怒号する。
俺とミカ専用のカメラでも全く様子が見えないほど、めちゃくちゃのぐちゃぐちゃ。たしかにこれは狭い場所じゃ戦えないよ。地形も変わっちゃうし、マジックルームでやらせて良かった、うん。
「す、すごいお父様……!」
「これがお父様の本気の本気……!」
「あら、魔物に対する勧誘だから本気出してないですよ?」
「そうなんですかお母様!?」
本気出してないというか、本気でやってはいるけど死なないようにしてる感じだよね。しばらくして視界の邪魔になっていたものは全て晴れ、ベヘモット、レヴィアタン、国王様の姿と……岩に串刺しにされ尻尾と手足をもぎ取られてるファフニールが見えた。それも修復されつつあるけど。
<ふむ、余の負けだな>
「そうか……ベヘモット、レヴィアタン、ご苦労」
<よかったよかったー>
<久しぶりに動いたらつかれちゃったん。休ませてもらうわね>
再度現れた召喚魔法陣から二匹は降りるようにいなくなって行く。結局、その場に残ったのは荒れた地形と国王様とファフニールだけ。あの二匹がいなくなっただけで一気に視界が広がった。
そして突然、ファフニールの体が優しい黄色に光り始める。
<なんだこれは……?>
「私は魔物に仲間にならぬか勧誘しているのだ」
<なるほど、この優しい光りは魔物使いのそれを行うための儀式というわけか>
「そんなところだな」
あ、そりゃただ単に仲間になってってだけじゃ普通はならないもんね。ああいう魔法も必要なんだ。
「それで、私の仲間になるのか?」
<予想以上の強さだったぞ国王。喜んで貴殿の仲間になろうではないか>
「そう来なくては」
ファフニールを囲んでいた光りは、下部に集合して行き、そして召喚魔法陣を形成した。その光で作られた召喚魔法陣はゆっくりとファフニールを飲み込んで行く。
<今後ともよろしく!>
「ああ」
これで晴れてファフニールが国王様の仲間になったわけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます