第897話 国王vs. 聖龍 2
<む、無傷だよー?>
「SSSランクだし、耐えきられることは想定の範囲内だが、まさか無傷とは」
<ち、いつまでで続けるんだこの石柱は! 煩わしい!>
ファフニールは自身から出る光の旋風のようなもので、迫り出す地面を吹き飛ばし続けている。よく見ると光のカッターのようなもので切断しつつ風で押しているみたいだ。
「ね、思ってたより白熱する戦いになってるわね」
「そうだね。悪魔との戦争の時は周囲を巻き込むのを恐れて本気出さなかったんだろうけど、国王様達の実力はさすがSSSランクって感じだ」
ミカのヒソヒソ話にそう返答する。やっぱりある一線を超えた人は強い。ルインさんが言っていたとおり、ただ剣を振るうとかだけなら同じレベルだと勝てない気がする。
<石柱が止まぬが……次はこちらの番だ>
そういうとファフニールの体、いや、鱗が一枚一枚金色に光だした。目も緑色から赤色に変わる。俺が用意してあげた羽の色と合う。思ったより喜んでたのはこういうことだったのかも。
<ついてこれるのならついてくるがいい>
翼のないドラゴンは地面を蹴ると、おそらく普通の人から見たらとんでもないスピードで動き始める。追尾している石柱が追いついていない。空を飛ばない分、走ることに特化したみたい。一瞬の間にベヘモットの頭の真下まで辿り着くとそこで跳ね、頭上へ。
<これはどうだ?>
空中で縦方向に回転しながら尻尾に魔力を溜め、尾がベヘモットの額に当たる瞬間にそれを解放した。光が爆発する。
爆発とともにベヘモットの足が衝撃で地面にのめり込み、地面もまたそれによってひび割れる。
「大丈夫かベヘモット!」
<ングゥゥゥゥ! ウゥ……ッと、耐えられる、大丈夫!>
<さすがの巨体だな……体力が高い。並みの生き物ならこの一撃で沈んでいたところだ>
「よし、ならば次だ!」
<うんー!>
地面に着地したファフニールに向かってベヘモットは水魔法の魔法陣のを展開する。像っぽく今度は鼻から。噴出される濁流をファフニールは回避するも、ベヘモットの影になって見えにくかった国王様も同じ魔法を唱えていたようで、そちらは見事に当たった。
しかしこれと言ってダメージはない。
<良い陽動だが……召喚魔法使いならば、召喚した魔物の攻撃を当てなければ大した威力はないんじゃないか?>
「いや、これでいい。レヴィアタン!」
どうやら国王様の魔法の方が陽動だったみたい。ベヘモットの出していた大量の水が、さっきの土魔法で作り上げた石柱によってできてしまったクレーターにうまく溜まっていた。いや、うまくたまるようにしていたんだね。
そこに窮屈そうに出現したのは、ベヘモットと同じくらいの大きさはあるんじゃないかという蛇のような、龍のような、獣のような魔物、レヴィアタン。国王様のもう一匹の魔物だ。
<流石に二匹同時に召喚できるか……むっ!>
問答無用でレヴィアタンから水のようなものが発射される。ウォーターカッターと言うべきかもしれない。
いつのまにか金色モードが解けているファフニールだったが、それをすんでのところで回避。いや、回避しきれなかった。
致命傷には至らなかったけど、左腕と尻尾の七割が切り取られていた。
<んもーーー、やっと戦闘で呼び出されたと思ったらまたベヘモットが作った小さなお池なのー? きゅうくつー! 海がいいー!>
「そんなこと言っていたらもっと出番なくなるぞ」
<えーー、王ちゃまったら仕方ないなー、我慢するぅー>
オネェ口調だ。びっくりした、まさか国王様の魔物にオネェ口調がいるとは思わなかった。見た目は青い鱗に覆われている蛇竜でかっこいいのに。
「しかもやりすぎだ」
<えーー? 倒すんじゃないのー?>
「倒すのではなく味方にするんだよ、あのドラゴンは……! アリムに直してもらわなければな」
<ごめんーー、ほんとぅごめんーー>
<構わないさ、余はピンピンしている>
観客にいる人たち含めて、今の声で驚いてファフニールの方に集中した。そこにいたのは腕だけちぎれて尻尾はなぜか元に戻っているアイツ。片手には自分のちぎれた腕を掴んでいる。
それを切断面まで持って行き……くっつけた。同時についていた傷も全て塞がって行く。
「なるほど、そういうことだったか」
<無傷なわけじゃなくて、すぐに治ったのかー>
<まあ! 便利な身体!>
あの治り方はアムリタに近い。おそらく今はくっつけてみせたけど完全になくなっていても生やすことができただろう。
高速移動と身体強化ができて、地面を猛進でき、その上あの治癒力。さすがはSSSランクか。
<さて、続きをしよう>
「いいだろう。ベヘモット、レヴィアタン……本気を出すぞ」
しかしこれがSSSのまともな戦いか。見応えあるなー。俺らみたいに瞬殺するのと全然違うよ。
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