第891話 喜ぶお父様 (カルア)

「やったぞ!」

「あら、どうかなされたのですか?」



 お父様が自室から機嫌が良さそうに出てきました。これほどの喜び方をなされているお父様を見るのは久しぶりです。お母様はそのご様子を微笑ましく見つめています。



「欲しかったスキルがついに完成してな」

「まあ! もしかして……」

「お父様、どんなスキルなのですか?」



 私達みたいに、アリムちゃんに連れられてレベルを上げたわけじゃなく、実力でSSSランクまで上り詰めたお父様が欲しかったスキル。とても気になります!



「みたらわかるぞカルア」

「今までアイテムに頼らないとできませんでしたものね」

「そうだ。だがこのスキルはそれ以上のことが可能なのだ。では早速始めよう」



 お父様はこの玉座の間の床に魔法陣を発生させました。アレはベヘモットの召喚魔法陣ですね。

 ……こんなところでベヘモットを召喚したらお城が崩れちゃうんじゃ……。



「お、お父様!?」

「さすがカルア、この魔法陣が何か気がついたか。なに、心配する必要はない。では召喚しよう」



 お父様はそのままベヘモットを召喚してしまいました。しかし、召喚されたベヘモットの大きさはいつもの巨体よりとても小さく……いえ、確実に私より小さな子象の魔物にも満たない大きさで出現したのです。

 とても可愛らしい。



「ち、ちっちゃい……」

「成功したぞ!」

「召喚する魔物をちっちゃくできるスキルですか……!」

「性格に言えば大きさを自由に変えられるというスキルだ。これさえあれば戦略の幅は広がり、私もダンジョンに簡単に入れるようになる」

「なるほど……!」



 確かにお父様が冒険者だった頃、召喚魔法を使うにあたってお父様の主力であるベヘモットともう1匹、レヴィアタンはどちらも巨体を誇る魔物であり、ダンジョン攻略に苦難したと言ってました。

 これでダンジョンにもベヘモットとレヴィアタンを連れて行くことができるってことですか。



「それじゃあお父様……!」

「ここ最近災害のようにSSSランクの魔物が増えている。我が国は幸いSSSランカーの人材が豊富でありギルマーズを始めアリムのところに住んでいる面々が対処しているが……いつ限界が来てもおかしくない」

「ですから、アリムちゃんの指導のもと、ルイン達が行ったダンジョンをなんども出入りするというのを試してみようかと思ってるんですよ、ねー」

「その通り」



 やっぱりそうなんですね! お父様のいう通り、確かに現在異常なほどSSSランクの魔物が出現しているのに対し、アリムちゃんがいるおかげか運良く我が国はまだほとんどなんの大きな被害も被ってませんが、頼りっぱなしにはできませんものね。

 お兄様達もたまに討伐に向かわれてますが、お父様達はあまり行かせたくないようですし。

 私もまだ歳のせいか留守番してろといわれるばかりですし……アリムちゃんのおかげで実力はあるんですけどね。

 そしてアリムちゃんより一つお姉さんなのですが。



「そういうわけだから、明後日あたりから十分にレベルが上がるまで、俺とゴルドとオラフとクリス、そしてヘレルの五人でダンジョンに向かおうと思う」

「その間の政治は?」

「カルナ、ティール、ルイン、そしてオルゴとミュリとリロ、ノア殿に任せようと思う。もちろん、カルアも協力してくれ」

「元勇者様まで行かれるのですね。任せてください!」



 任されたことを誇りに思います!

 お手伝いだとは思いますが、それでも嬉しいです。



<昔からやるって言ってて、やっと成功したんだねー>

「おおベヘモット、小さくなると愛玩動物みたいだな。なに、やっとそれらしい合成のヒントが思い浮かんだんだ」

<ふーん……あ、小さくなったけど魔力を基本に、ステータスとかは変わってないよー?>

「そういうものだ。身体が小さくなったことにより破壊力は減るかもしれないが、十分戦えるはず」



 魔力含めステータスはそのままなんですか。それは便利ですね。お父様がどれだけ吟味し続けてこのスキルを作ったのかよくわかります。



<いいけどさー。そろそろレヴィアタンの方も呼んでやってよ、僕ばっかり呼ばれて嫉妬されてるんだよー>

「水辺でしか呼べないからな……。あとで風呂場にでも呼んでやるか」

<それと、もう何十年も経ってるけど魔物三枠のうち残りひと枠どうするのさー。いまだに空席だよ?>

「それは……良い魔物が見つかり次第……」



 そういえばお父様の召喚魔法でストックできるのは、強さに関係なく3匹まで。私もお母様も2匹しか知りませんでしたが、そもそも居なかったのですね。

 陸・海……ときたので次は空でしょうか。ドラゴンだとかっこよくて素敵だと思うのですが。



<ちょっと聞こえてきてたけど、SSSランクの魔物が大量発生してるんでしょー? スカウトしてきたらー?>

「そんな難しいことを言うな」

<やれると思うんだけどなー>



 そういえばベヘモットもレヴィアタンも魔物としてはSSランクの亜種でしたものね。お父様の力が加わってSSSランクの魔物と同等になるのですが。

 ……もし最初からSSSランクの魔物がお父様の力を加えられたら、どうなるんでしょうか。

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