第862話 ラーマ国王からの招き (叶・桜)
「まさか呼ばれることになるなんてね……」
「普通街中で王様に出会う?」
「いやぁ、すごい偶然だよ」
二人は王様に会うようなそれなりの準備をしながらそう話していた。ラーマ国王にお呼ばれしてから、デートを3時間ほど楽んだが、夕飯は早めにすませた。
「そういえばお城から逃げてきたって」
「お忍びってやつよね? 王様っていうのも大変なんだろうなぁ……」
「メフィラド国王見てたらんかるよね。あのアホ見てもわがまま言ってただけだけどさ。俺たち一般人に謝るような人なんだ、きっと仕事は真面目にやってるんだよ」
「さらにSSSランカーの冒険者でもあるんだっけ。そりゃ、たまには逃げたくもなるわよね」
準備はし終わった。二人は階段を登りプラチナランクの部屋の前に立つ。最上階が丸ごと部屋のようだった。
「この部屋を予約するつもりだったの?」
「うん」
「二人には広すぎない?」
「今思えばそうかも」
叶は部屋の戸をノックする。すぐさま待ち構えていたようにラーマ国王が出てきた。
「やあやあ、よく来た。思ったより早かったな」
「俺たちが泊まってる場所、すぐ真下です」
「なんと! まあSSSランカーならこの宿に泊まるか、うん。どうぞ中に入ってくれ」
「おじゃまします」
言われるがままに二人はラーマ国の部屋に入る。その部屋はあまりにも豪華。有夢が作った一番豪華な部屋よりも、ゴテゴテさで言ったら上だった。
やはり二人で泊まるには広すぎたと叶はもう一度考えるが、一方でラーマ国王は一人で泊まっているのだった。
「この豪華な部屋に……お一人ですか?」
「ああ。実はちょっとシルバーランクの部屋にすればよかったと後悔していてな。余の冒険者としてのお金で泊まってるから別に良いのだが」
「国のお金や王としての財産ではなく?」
「国のお金を使うアホなんて……某国のあの家系くらいだろ。王としての財産は余は使うつもりはない。むしろ増やしている。なにせ自力で稼げるからね」
ドヤ顔でそういうラーマ国王だったが、国庫を自分の身勝手で使用せず、自分で貯めたお金のみで自分のやりくりをしている王様に叶と桜は感心していた。
「ばったり出会った時、お城から逃げ出したと聞いたのですが……」
「あー……覚えていたか。実はここ最近、やけに強力な魔物が多数出現していて。その被害報告の把握・処理やSSSランカーとして自ら迎え撃ちにいったり、でも普通に王としての仕事はあるから……疲れ切ってしまって。自分で自分の金は稼いでると言ったが、正直、そちらの国の国王のように冒険者は引退した方が良かったかなと考えている」
「そ、それは仕方ないですね」
「わかってくれるか」
叶はギルマーズなどという名を馳せている冒険者が最近やけに忙しそうだと兄から聞いていたため、深く共感ができたのだった。
「全て仕事を終わらせてから逃げ出して来たんだ。もしここがバレても余はまた逃げ出してのんびりするぞ。次の仕事が入ってくるまで!」
「それって逃げてるのではなく、普通に休んでるだけなんじゃ……?」
「いや。やはり王たるもの、正式な休日以外は城にいるべきだからな。間違いなく余は逃げたのだよ」
「そ、そうなりますかね?」
兄からはいつも呼び出してきてくる人だと聞いていた叶。実際、一時期兄がしょっちゅう呼び出され、瞬間移動で移動を手伝っていた。
しかしそんな迷惑そうにしていたにもかかわらず、この国王自体のことは何も悪く言ってなかったことを思い出し、より、叶は信頼に値する人物だと確定させた。
少なくともメフィラド王国国王と同じくらいに信用して大丈夫そうだと。
「とりあえずその話は置いておいて。どうだブフーラ王国は。愛と情熱の国、楽しんでくれているだろうか」
「ええ、とってもいいところです。屋台も所狭しと並んでいて。正直、旅行に来て大正解だと思ってますよ」
「そうかそうかそうか! それは嬉しいことを言ってくれる」
本当に嬉しそうにラーマ国王は笑った。
愛国心が強く、自国を愛しているということがすぐにわかる。十二分にラーマ国王は笑ったあと、質問を変えてきた。
「そういえば二人はどのようにしてSSSランクになったのだ? 普通のSSSランクのように表立って行動したりしないのか」
「SSSランクになった経緯は、ひたすら魔物を倒さなければならなおことがあって、気がついてたその強さに……という感じでしょうか」
「私はそれにパーティとして一緒に参加していたので、勝手にレベルが上がっていって」
「なるほどな。ま、よくあるパターンだ」
叶は、本当は自分達が賢者であるということを話そうか迷ったが、わざわざ話をめんどくさくするのも嫌なのであながち間違っていない返答をした。桜もそれに合わせる。
「あまり目立った行動をしないのは、単に目立ちたくないからだけですね。たまーに依頼を受けたり、自分たちしかできない仕事を任されたりして行動する程度ですよ」
「わかるぞ。実際目だったら大変だからな。同国のアリムちゃんとミカちゃんなんか忙しすぎて酷いだろう?」
「ええ」
ラーマ国王は、誰かに同情するように溜息をついた。
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