閑話 ゆっくり休める (翔)
連日忙しすぎて俺はすっかり疲れていた。もしこのようなことが続けばそのうち慣れるんだろうが、いかんせん、テレビ出演なんて初めてで、その上目の前に隕石が落ちてくるなんて予想もしてなかったからな。
有夢や美花からはみたことがないくらい疲れてるように見えるとも言われちまったし。
そしてアナズムと地球で合わせて3週間くらいずっとリルが積極的に俺の疲れを取ろうとしてくれたりした。撮影前からずっと励ましてくれていたし、おそらく甘えるのも我慢してくれていたんじゃねーかな。
……この2週間は地球での異変のことは有夢と叶君に任せて、テレビ出演すると決まってから昨日までまずっと支えてくれたリルの、ワガママつったらおかしかもしれねーが……お願いはなるべく聞いてやるつもりだ。もちろんどんなことでもな。
「んっ……あー」
そうは言っても身体は疲れきっちまってるから、アナズムに来てから早々に布団に潜り込んだわけだが。
台所からいい匂いがする。リルが朝飯を作ってくれているんだろう。ノビをしてからベッドから降り、食卓へ向かう。
「あ、ショー! おはよ。もう起きたの?」
「ああ」
「そっか。できたら呼ぼうと思ってたんだけど。……もうちょっとでできるからねー」
ラフな服装の上に普段使っているエプロンをつけているリル。かわいい。
相変わらず尻尾と耳が生えているが、こうしてしばらく距離を置いてからもう一度見てみると、俺はとんでもない美少女と付き合っているんだなと気がつかされる。
「できたよー」
「サンキュ。いただきます」
「召し上がれ」
リルも自分の分を俺と対象となる場所に起き、前に座った。食事内容は栄養学やスポーツ医学に基づいたもので組まれている。……つっても割と普通の朝食なんだが。
「わふー」
「ん?」
「おいし?」
「ああ」
「わふー、よかった! じゃあ私も食べようかな」
リルは満足そうな顔をしている。しばらく俺を観察している様子だったが、やがてもう一度座り直し、自分も食べ始めた。
……むっ、今服の間から胸が……。いかん、感覚的なものはともかく視覚的なものは久しぶりだからつい反応してしまった。
最近じゃあまり、リルの胸がチラリと見える程度じゃ気にしなくなってきたと思ってたんだが……そんな考えは浅はかだったようだ。
互いにすぐに食べ終わり、リルはこちらに移動して来て俺の隣でこう言った。
「さて、満腹状態から余裕が出てきたらいつものマッサージをしよう! 体の節々が痛んでるんじゃないかい?」
「そうだな、頼む」
「ふふふ、覚悟してくれ。今日のために数日前から練りに練った特別メニュー三時間コースだよ!」
その言葉の通り、本当に3時間みっちり施術してもらった。逆にリルが疲れないか心配になる。
だが身体がとんでもなく楽になったのは本当だ。いい加減整体している最中にすきあらば胸を押し付けてくるのはどうかと思うが、それも気にしないことにした。
「ふーっ、楽になったかい?」
「いや、すげーよ。ありがとな」
「わふわふ、ならいいんだ。今日はたくさん疲れをとってよ。地球じゃ緩和することしかできなかったしさ」
抱きつき、自分の頬を俺に擦り付けながらリルはそう言う。ちょっと喋りにくそうだ。
ここまで尽くしてもらったからな、そろそろ俺の番だろう。
「リル……なにかしてほしいことはないか?」
「わふん! あるけど明日でも全然いいよ?」
「いや、だいぶ楽になったしよ。マッサージ返しでもしようかな、と。肩とか……」
「ああ、たしかに肩は凝るね。……あ、思い出したことが一つあるよ。ショーに伝えなきゃいけないことなんだ」
今の会話からなにか思い出したようだ。俺に伝えなきゃいけねーことってなんだろう。
様子から察するに悪いことではないみたいだが。
「なんだ?」
「……ね、伝える前にマッサージしてほしい場所、指定してもいいかな? 肩もいいんだけどさ……」
「言いたいことは大体察しはつくが、いいぜ」
朝食食べる前になんでも言うこと聞いてやろうって決めたばかりだからな。案の定、リルは服をはだけさせ胸をあらわにした。顔は赤くなる。照れるくらいならしなきゃいいって何回も言ってるんだが。
相変わらずいい大きさ……っと、今日の俺は邪念がひどいな。
「皆まで言わなくてもわかるぜ。でもそれリルが喜ぶことっていうより……」
「まあまあ、最後まで聞いてくれよ。この胸にさっき言いたかったことが詰まってるんだ」
「はん?」
「報告するよ、先週、また1段階大きくなったんだ……」
なん……だと……!?
「り、リル、俺たち出会った頃って確かまだ……E……だったよな?」
「わふん、そうだよ。アナズムから地球に移動するぐらいでFになったよ」
「知ってるぞ。……で、1年たたねーうちに……また」
「うん。喜んでもらえるかな? バストアップするエクササイズとショーが毎日のように揉んでくれたことが原因だと思うんだ」
「お、おう……」
「もっと好きになってくれる?」
「いや、リルが好きかどうかに胸はかんけーねーけど……でも、そうか、もう……」
無論、このあとリルの誘いに載せられて、マッサージだけじゃ済まなくなったのはいうまでもない。
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