第832話 すごく久しぶりに売るよ!

【それで、欲しいものってなんですか?】

【木材よ、木材。家によく使われる木材が大量に欲しいんだけど、チャゲマロの青舌を大量に持ってきてくれた時みたいに、ウッドゴーレム辺りの身体を持ってたりしないかしら? 普通の木材より多分、そっちの方が持ってるでしょ?】



 ウッドゴーレムから入手できる木材かぁ。ミカと一緒に初めて潜ったダンジョンで死ぬほど手に入れたっけ。

 在庫整理した結果をみても、めちゃくちゃ有り余ってるみたいだったんだよね。


 伝説級の武器を依頼されて作成する時、柄とかに使えるかと思ったけど、やはりそこはDランクの魔物。別のものを使った方が良かったりした。かなり。

  

 在庫整理しててもちゃんと消費されるのは、一部のCランクからBランク以上の魔物から手に入る素材であり、低ランクのものは使いにくくて困ってたところ。

 Dランクの魔物の素材を引き取ってくれるって言うんだったら、タダでもいいから渡しちゃおうね。



【ああ、すごーくありますよ】

【本当に? 助かったわ……! どのくらい数量あるの?】

【ウッドゴーレム、千や二千体分程度の量だなんて思わないでくださいね? 軽く万は超えます】

【ま、万!? なんでそんなにあるのか気になるけど……いいわ。とりあえずアリムちゃん、組会本部にきてくれるかしら? 忙しくないなら、明日にでも】

【わかりました! では午後二時頃お伺いしますね】

【ありがとう。それじゃあ、お願いね】



 ボクはメッセージを切る。

 さーて、数十万体分のウッドゴーレム亜種の木材、捌き切れるかしら……なんて考えてるとそばから熱い視線が。

 ミカミのものだね。



「む、そんなにジロジロみて」

「今から行くのか?」

「いや、向こうから明日って言ってくれたよ」

「……いい?」

「んもー、しょうがないなぁ。えっち」

「へへへ、悪いねぇ……」


_____________

_______

__



「ここに来るのも久しぶりだなぁ」



 俺は今、メディアル商人組会本部の門の前にいる。前と同じように門番さんが門にちゃんと立ってるね。

 もちろん、まだ最後にここを訪れてから数ヶ月しか経ってないから人が代わったりはしてないよ。


 門番さんの前でだけ変装を解いて、俺は話しかけた。



「あの」

「むっ……あ、ああ! アリムちゃ……! えっと、お久しぶり……で、あと、いつも応援してますぅ!」

「はは、ありがとうございます。マネさんからお話はきいてますか?」

「はい、会長から話は聞いております! どうぞ、ここをお通りください。そして握手してください!」



 割とグイグイ来るなぁ。こんな人だっけここの門番。

 俺は差し出してきたてを優しく握ってあげた。すごく嬉しそうな顔をする。



「もう、この手は洗いませんっ」

「ばっちぃので洗ってくださいね」

「はい、洗います! あ、引き止めてごめんなさい。お通りください」



 俺はそのまま通してもらい、中まで進んでゆく。久しぶりに来たけど、実に静かだ。いや、やけに静かと言うべきか。

 そんなことより会長室ってどこだったか覚えてたかな、俺。

 いつも応接室だったからここのことはよくわからないんだよな。

 しばらく歩くとマネさんが道の真ん中に立っていて、俺のことを手招きしていた。この耳の長いエルフがマネさんでいいんだよね? たしかそれであってた筈だ。



「アリムちゃん、よく来てくれました。案内するわ、付いてきてね」

「はいっ」



 よし、あってた。

 俺とマネさんはそのまま、俺が付いてゆく形で歩いて行く。やがてメフィラド城の国王様の部屋の扉とはまた違った豪華さの木製の扉が現れ、その付近に会長室と書かれたプレートがぶら下がっていた。



「じゃあ、入ってくれる?」

「おじゃましまーす」



 ふむ、会長室って感じの部屋だ。アナズムでもこういう社長室のイメージって同じ感じなんだね。

 会長用の大きな机と椅子に、応接用にもうひとセットの机と椅子。外が綺麗に見える大きな窓、幾らかの観葉植物に、書類がぎっしりつまった大量の本棚。



「じゃあ、そこにかけて」

「はい」



 言われた場所に座ると、その前のテーブルからニョキッとお茶とみかんのようなものが出てきた。おー、さすがは大商人を束ねる会長。こんなものまで用意されてるとは。

 


「お茶とオレンジは自由に食べて。で、いきなり本題から入っていいかしら?」

「いただきます。ええ、構いません」

「じゃあ、木材を何に使うかから話すわね」



 マネさんは彼女のマジックポーチから書類をいくつか取り出し、机の上に広げた。ちょっと読むのめんどくさい。

 しかしどうやら俺に読ませるために広げたんじゃなく、自分のために置いたみたいだ、マネさんは。



「えーっと、そのウッドゴーレムの身体は建築材として使いたいのよ。木の素材としては火、水などに対する耐性がすごく高く、かと言って硬すぎず加工がしやすいから」

「へー、そうなんですか! 建築をたくさんしなきゃいけなくなったってことですかね? それとも、木材の在庫がなくなったとか?」

「どっちも正解よ。ちょっとこの書類をみて」



 やっぱり書類、俺もみなきゃダメなんじゃないか。

 その書類には一つの村のことが書かれていたよ。

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