第809話 新聞!

「どれ、見せてみなさい」

「確かに翔君ね!」

「新聞の二面かぁ」



 翔が載る新聞社の新聞はとってなかったから、俺が朝イチでコンビニまで走って買ってきた。   

 確かにデカデカの奴が翔が載っている。しっかりとイケメンに映されており、文句はない。



「内容はどうなんだろ」



 記事の内容は、なんていうの、すごく翔のことをべた褒めしてた。

 まずは大会の戦績について褒め称える。

 なにせ団体も個人も優勝だからね。ちなみにちょっとだけど、副部長にして全国三位となり、翔と同じチームだった剛田くんも紹介されてる。本当にちょっとだけど……たしかに優秀なことには変わりないもんね。


 そして昨日言っていた、五輪世界大会の日本代表候補に選ばれたことも。そのほかには、いつから柔道をやり始めたのかなど、柔道の内容は翔の記事の3分の1を占めていた。 

 

 そしてそこからが、今ネットで話題になっているらしいイケメンってことについての話。

 翔のルックスの良さなどが書き連ねていた。

 うん……スポーツの内容なのにスポーツ新聞じゃない時点でイケメンな方に重きを置いてるのは大体わかってたけど。

 とにかく顔はべた褒め。下手な俳優よりイケメンなんじゃないかとかも書かれてる。何当たり前のこと言ってるんだか。


 あと「驚異の体脂肪率!」だとか「医学的に珍しい筋肉密度!」など身体的ものも書かれており、その欄には翔が腕まくりして力こぶを作ってるところが見られる。

 何度見ても完璧な筋肉だね。

 

 そして残りは翔の学校生活について。

 リルちゃんの引き取り先の家の長男であることももちろん把握されており、記載されていた。

 さらに学年一位であることについても書かれている。そんでもってうちの学校で学年一位であることが非常に価値があるらしい(一応、超頭のいい学校だからね、えっへん!)。


 あとは、翔が地元で『喧嘩最強の正義の味方』であるという認識がされていること。

 親に警視を持つことに加え、中学生以降で人命救助や危険人物の捕縛などを個人的に取り締まり、数多くの表彰をされていることもやっぱり書かれていた。


 親友として言うけど、たしかに書かれていたことは全て事実であり、その中でもすごいものが抜粋されている。


 とまあ、ここまで全部書き終わった後に、

「ここまですごい超人はいるのだろうか、いやいないでしょう、こんな人間離れすごい高校生って居るんです! 同級生の間では魔王と呼ばれているようです」

 みたいな締めくくりをされていた。

 翔の異名まで世間に露見してしまったようだ。


 ここまで持ち上げられたんだから、これから本当にテレビ出演とかしちゃうんだろーなー。

 


「……これ全部本当のことよね?」

「改めてこうしてまとめられると、すごいなあの子は。生きる伝説か何かか」

「だよねー……普通の人にはできないような芸当ばっかり」

 


 と、普通の人にはできない芸当ばかりやってきて、すでに生きる伝説と他の界隈では言われているうちの家族みんなもそう言う。


 とりあえず美花の意見も聞きたいな。

 てな訳で、時間が来て、登校しなきゃいけない時間になったから、歩きながら美花に聞いてみた。



「新番見た?」

「見た見た! すごいよねー」

「すごいのが、あれに書いてること全部本当だってことだよね」

「うんうん」



 逆に世間が翔に注目するのが遅すぎたんじゃないか、なんて話にもなる。

 そして美花がこんなことを言い始めた。



「でさ、このままの勢いだと翔、テレビ出演とかしそうじゃない?」

「ああ、するだろうね」

「……叶君や桜と交流があることもたぶんバレるじゃない?」

「まあ、あの二人はすでに有名人ではあるし……」

「リルちゃんがすでに巻き込まれかけてるし、私たちもそのうち翔をキッカケに引っ張り出されて、テレビに出されてしまう……なんてことになりそうな予感がするのよ」

「えー!?」



 美花の直感はよく当たる。たしかにそんなことになりそうな気がしてきた。今までひたすらにスカウト断ってきたのに、今頃になってそうなるのもなぁ……。



「どうする?」

「どうするったって、私達が翔の評判下げるわけにはいかないし……もしそうなったら、もしそうなったらよ? そろそろ出るしかないんじゃない?」

「ま、まじか……」

「でもほら、アナズムでアイドル勇者やって少しは大衆に見られちゃうこと慣れてるんだし、昔に比べたらいいことだって思わないと」

「うぅ…だねぇ……」



 テレビ関係の人は絶対に俺たちが売れるって言ってくるからね。はー、どうなることやら。

 今のうちに業界のことを詳しく調べたりしたほうがいいかね。まあ、そこらへんは佐奈田に聞けばいいか。あいつの父親がそういうのの関係者の偉い人だもんね。



「たぶん、ゲームの時間減ると思うけど」

「んんん、いやああああ」



 美花が、美花がとっても怖いこと言った! ただでさえ、昔の半分以下の時間になってるのに!

 もっとゲームする時間が減るかもしれないのか……。

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