閑話 冬休みの間の一日 (桜)
地球に帰ってきて、私は叶のお部屋に入り浸っていた。
そしてそれもついに四日目。ここ三日間は毎日ゲーム(主にチェスや将棋などのボードゲーム)をして遊んでたけれど、それも飽きてきた。
しかも叶ってばパソコンの電源は常につけたままで、数秒に一回は株価をチェックしてる。それは今までとなんら変わりはないけれど、ちょっと寂しい。
……それに、私の裸を見てからなにを考えてるのかも、聞かないけど気になる。あれからアナズム含めて何日も経ったけど、普段と別に何も対応は変わってないし。
もう少し変わるものかと思ってたんだけど……うーん、でも許しちゃった手前、あれ以上踏み込むわけにもいかないのよね。
だから今日はいつもやってることとは趣向を変えようと思う。ゲームで遊ぶとか、甘いもの食べに行くとかだけじゃなくて、なにか新しいことしたい。
たくさん抱きついたり、頻繁にキスしたりしてみようかな。……お姉ちゃんが言ってる通り、無駄に大きいこの胸を押し付けたりすればなにか反応が……。
だめ、この思考はお姉ちゃんの二の舞になるとしか思えない。そもそも私が実行できるかどうか。
「んー?」
「どうしたの? なにか悩み事?」
パソコンとにらめっこしていたはずの叶が、唸ったら振り向いてきた。好き。
「ど、どうもしないわよ! パソコンとにらめっこしてたら?」
「なにもないなら良かった」
あ……またパソコンの方を向いちゃった。
結構大切なことしてるのはわかってるんだけどね。でももう少し気を引きたいな。裸になって抱きつけばこっち振り向いてくれるかな? もうそれしかないんじゃないかとすら思えてきちゃう。
そ、そういうことをしても良いって約束した年齢になるまでやらないけど。
「ふぅ、ねぇ桜」
「な、なによ!」
いきなりパソコンをシャットダウンして、かにゃたは私の隣に座った。
「今日の取引は引き上げたんだけど、なにかする? なにしてあそぼうか」
「そ、そうなんだ。じゃあ……えっとね……」
やっぱりそんな脱ぐとか考えずにまともなこと考えてくべきだった。どうしよう、脱がずとも本当に抱きついたり、キスしたりしちゃおうかな。
「……ん?」
「も、もうちょっとこっちきて欲しいな」
「良いよ」
かにゃたが自然に、私の手に手を絡ませてきた。
私は私で思わず抱きついてしまう。本当は腕に抱きつきたかったんだけど、誘導でもされたかのようについ身体の方に思いっきり。
「よしよし」
「えへへ……」
「キスもしようか?」
「うんっ」
はっ、また誘導されてしまった!
でも満足。
「ふふ、さて……今日はこれからどうしようか」
「ね、ねぇ」
「ん?」
「こ、このまま抱きついていたい……」
「抱きついたまま1日過ごすの?」
「うん」
ついそうやってわがままを言ってしまう。
でも叶はオーケーしてくれた。そして、言わずとも毎日してるじゃないかとも言われてしまった。
たしかにお互い、気がついたらこんな感じで密着してることが多い。
「そんなに改まって抱きつきたいたって言わなくてもね」
「でも今日はそんな気分だったから」
「もしかしていつもは無意識のうちにこうなってたの?」
「ううん。でも今日はいつもより甘えたくって」
かにゃたは私の目をじーっと見る、とってもつぶらな瞳で。そしてすぐになにか閃いたようににっこりと笑った。
「じゃあさ、ちょっといつもより進んだことして見る?」
「裸を互いに見ちゃうより進んだこと?」
「あっ…あれは事故だからノーカン」
ほんのり顔を赤くした。
やっぱりまだ気にしててくれたんだ。ふふ、なんか少し優位に立てた気分。
「どうしたいの?」
「膝枕とか」
「初めてじゃないけど……やる? どっちが寝る方?」
「寝る方がいい」
「わかった」
なんとかにゃたに膝枕することになった!
私は叶のベッドの上に正座して、叶は私の膝の上に頭を乗せる。か、可愛い顔が私の膝に!
「なんか緊張する」
「そ、そうね! ……ねぇ、叶」
「なに?」
「耳掃除でもしようか」
男の人がこういうの喜ぶって、漫画で読んだことある。かにゃたは驚いたように目を開くと、黙って頷いた。
私は手に耳かきを作り出す。
「横になって」
「……ん」
外側を向いた。男にしては綺麗すぎる肌と髪の毛。耳にはもちろん垢なんて一切ない。でもお掃除はしなくちゃ。
「じゃあ始めるよ」
「うん」
かにゃたの耳に耳かきをゆっくりと入れた。
しばらく、かにゃたを傷つけないように動かすけど、それじゃあ物足りない気がしてきたので、一回やってみたかったことをやることに。
叶の耳に息を吹きかけた。
「わっ……」
「あー、ごめんねー」
「いや、いいよ」
耳かきを続ける。
大好きな人に身を完全に預けられ、膝枕してあげて、耳かき……えへへ、新婚さんみたい。
次はこれならどうかな?
「かにゃた~」
「な、なに?」
「愛してる」
「……桜、俺の番が終わったら今度は逆に俺が桜に同じことしようと思ってたんだけど、覚悟しなよ」
1時間後、本当に私返しをされた。
耳かきしながら私の好きなところと、告白を延々と聞かされ続けたの。
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