閑話 美花が甘えるだけの話

「あゆむぅ…」

「よしよし」

「えへへへ」



 ある日の昼ごろ、なんの脈略もなく私は有夢に抱きついた。こんなことはいつものこと。

 有夢は必ず頭を撫でてから抱きしめ返してくれる。



「甘えていい?」

「どうぞ」

「やったっ」



 甘えると一言いっても、種類は様々。

 こうやって長時間抱きついたまま頭を撫でてもらうのもあるし、膝枕をしてもらう、あるいはしてあげることもある。軽いキスや逆にディープキスの時もあるし、わざと手を胸やお尻にやらせて揉んでもらうことも。

 今日はどれにしようかと考えた時に、とりあえずディープキスをすることにしたの。

 


「んふー」

「……はっ、まだやる?」

「まらまら…」

「わはった……」



 15分くらいはずっとそうしてたかな。私は一生このままでも大丈夫だけど、有夢は流石に飽きたりしちゃうかもだから、ここのところで口を話しておく。



「今日はたくさん甘えたい」

「毎日じゃないの?」

「今日はもっともっと!」

「いいよ、好きなことしよ」



 どーしようかなぁ。そろそろ新しいいちゃつき方法も考えるべきよね。さっき挙げたもの以外で変わったこともたくさんしてきたけど、今日は何か新しいこと考えたい。


 24時間ずっと手を繋いでるとかやったし……延々とお互いの胸を触り続けるってのもやったし……全身余すところなく舐め合うってのもやったわね。

 コスプレとかは日常茶飯事。

 なにか道具を使った大人な遊びもやった。


 おっと、どんどんそっち方面に思考が行っちゃうわ。いけないいけない。あくまで昼間は健全なことをしないと。

 大人なことは夜に考えなきゃね。


 ……んー、あ、そうだ。



「じゃあね、まず上半身だけ服脱いでっ」

「わかったよ」



 あーかっこいい。

 服を脱ぐところ、すごく色気があって素敵なのよね。



「で?」

「私も脱ぎます」

「ふーん……って、ちょっと、なんで上半身完全に裸になってんの!? まだ夜じゃないよ!」

「えっ、さっき思いついたことの必要事項なんだけど……なにぃ、生の胸見てエッチな気分になった? いいよー、好きにしてよー」

「いや……今昼だし……うん、あとでね」

「残念。じゃあそのまま万歳してね」

「はーい」


 

 有夢は素直に万歳してくれる。

 私は今作り出した、今回の主役の服を用意。 

 有夢のかっこかわいい背中に体をぴったりと寄せ、一緒に万歳した。



「当たってる」

「あててんのよ」

「そ、そっか」



 念術でゆっくりと浮かび上がらせた服を、そのまま二人の体に通す。

 首元から頭が二つ出て、一つの袖から腕が二本出ている状態になったわ。そして服の効果でと互いの体がすこし締め付けられる。



「ぬわっ!」

「えーっと、二人羽織ってやつ?」

「ちょっと違う気がするけど……」

「でも抱きつかれてるみたいでしょ?」

「裸でね。背中がムニムニする」

「やだった?」

「まさか」

「あ、この服の説明をするとね?」



 私にしか脱げないこと、そして腕の主導権は完全に有夢に移ったこと(私は手首から先しか動かせない)、首は双方動かせるって教えてたあげた。



「へぇ…まあこうしてずっと抱きつかれてるのはいいんだけどさ、キスどうする?」

「んー、有夢はしにくいと思うけど…、ほら、私はこうできるから」

「ひゃんっ!! 耳舐めないでよ!」

「今の可愛かった」

「ぷくーー!」



 有夢は器用にも抱きついたまま私のほっぺを軽く掴んで引っ張ってきた。体柔らかい。見た目通りね。



「これ、腕は自由といっても俺からミカにできることが少なくなーい?」

「お尻揉めるよ! ふとももも!」

「あー、それくらいしかできないかぁ。あ、そうだ」



 有夢は何かを思いついたのか、鏡がある場所まで移動した。……ちなみに有夢の身長は170cm、私は160弱なの。

 頭に今回身長を合わせてるから、私の体は宙に浮いてることになる。でも有夢曰く私の体は全然軽いらしいからずっとおんぶしてるようなこの状態でも大丈夫だよね。


 うん、やっぱりこうして鏡の前に立つと、私がおんぶ紐で吊るされてるみたい。

 いつのまにか有夢の手にはバナナが握られている。



「さて、この状態で食べてみよう! きっと面白いぞ!」

「……そのバナナじゃなくて、咥えるならあゆ……」

「それ以上いけない。……この作品の対象年齢のこと考えてね」

「……なんのこと?」

「さあ、なんかそんな言葉が思い浮かんだから」



 不思議な有夢。結局バナナは美味しく食べた。

 ……そのあとなにをしたかって? まあ、そうね、わざわざ裸になって相互に拘束しあった理由は私の欲望を満たすため。そう、このままベッドに向かってもらうためなの。


 私の緻密に計算されたその計画はうまく行き、この日も私はたーくさん甘えるとができた。

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