閑話 2週間の間の二人 〜禁断〜

「カナタもサクラちゃんも、ショーもリルちゃんもいないの、暇だねぇ」

「昨日はローズとカルアちゃんが遊びにきたけどね。カルアちゃんなんて合間を縫って1時間だけ」

「カルアちゃんも忙しくなったよね」



 俺とミカはベットの上で抱きつきながら暇を持て余していた。アイドルの仕事も今は空いてる。なぜならカルアちゃんのお母さん、カルナさんが、国王様の許しでアイドルとしての仕事を復帰したの。

 

 そう、俺とミカの前任のアイドルはカルナさんなんだよね。そのせいで娘であるカルアちゃんも同じ道を辿ってるみたいで。

 本当は反対したい国王様も、カルアちゃんもカルナさんもノリノリなため止められず、やむを得なくアイドル活動を許してるらしい。

 ちなみに俺たちが勝手にアイドルって呼んでるだけで、アナズムでのそういうスターへの呼び名はまた別のものがあるらしい。でも共通かどうかはっきりしていないから人によって解釈が違い、安定してなくて不便。


 そんなわけで過去のアイドルであったカルナさんが、新年明けてしばらく経ってから、成長した自分の娘を引き連れて雑誌やらに出るようになったから俺たちは暇なの。


 カルアちゃんはどうやら、美しさ引き上げる魅惑の美姫とかのような称号が進化したらしい。たしかに美人さがものすごく増していた。最終段階になるのもそう遠くはない。



「……そうは言っても仕事がなくなったわけじゃないし、来週にはまたスケジュールがびっしりだよぉ」

「そうなのよね。束の間の休息ってやつ」

「そうそう、だからミカ、お昼寝しよう」

「……いや、やっぱ寝るだけじゃつまらないわ」

「……ほえ?」



 ミカはベッドから出た。

 そして男女変換を作動させ、見事に男になってみせた。アリムとしての初めての日、あれからすでに二回は俺が女、ミカが男として大人な意味で一緒に寝たわけだけど……うーん、男の状態で男のミカを見るのはまだ慣れないなぁ。

 あの天使のように可愛いミカにアレがついてるんだもんなぁ……。



「実はやりたいことがあるんだぜ」

「なにさ、ミカミ」

「男同士で寝る!」

「ぶっ…!?」



 なにも飲んでないのに何か吐き出してしまった。耳を疑う余地もない、たしかに男同士で寝ると聞こえたぞ。



「お、男同士で寝るの?」

「うん」

「ま、まあ俺も翔と一つの布団で昼寝したことあるから問題ないか……」

「え、なにそれ。……いやまあ、今はそんなことより、俺が言いたいのはそっちじゃない」

「……そっちじゃ……ない。あ…ぁぁ…」

「察せるだろ?」



 察したくなかったんだけど。超嫌なんだけど。



「でも俺、男色に興味はないよ!」

「もし自分が女だったら付き合う相手は翔がいいとか考えてたくせに」

「あうっ!? それはもしもだよ、もしも!」

「ま、結局女になって付き合ってるのは翔じゃなくてこの俺だったわけだけど」

「そりゃね」



 そりゃ自分が自由に性別を変えられて、愛してる人も変えられるならそうするでしょう。



「そして、もう一つ」

「な……なに?」

「俺たちはそれなりに多い回数、女同士で夜を……」

「あー……」



 興味本位で女同士になって寝てみたら、まあ……端的に言えば良かったから度々ね。ま、二桁は超えてるかな。

 まさかそれを引き合いに出されてしまうとは。



「女同士ができるんだから、男同士もできるよね」

「ぐぬぬ……」



 それは別だろ…ってなんか言い返せない。ただ違うのは女同士の時は本来の性別が女であるミカがノリノリだったのに対し、今回は本来の性別が男である俺が嫌がっているってことなんだけど。



「み、ミカミは平気なの?」

「え、男同士が? うーん……まあ、普通は無理。でも有夢の顔って女の子そのものだからね」

「なるほど。でも、俺からみたら今のミカミは男そのものなわけだけど……」

「……俺のこと愛してないの?」

「いや、大好きだよ……?」



 その質問はずるい。どんなミカだろうが俺は大好きで愛してるに決まってる。

 答えた時から、ミカミはニコニコしながら俺ににじり寄ってきて、上着を脱いで上半身だけ裸になってる。

 ああ、これが元の性別のミカならどれだけ歓迎したか。



「それなら問題ないよね」

「あ……う……うわあああああああ!」



______

___

_



「ふぅ……」

「うっうっ……ぐすん」

「お互い半裸になって抱き合ってキスしただけでしょうに」



 ミカミの言う通りそれだけだった。

 でも、たしかに何かが俺の中で壊れる音がしたんだ。



「あー、もう、よしよし、泣かないで」

「泣いてはいないけどね」

「女に戻ればいいんでしょ、もう」



 ミカミはミカに戻ってくれた。

 おっと、お互位に上半身裸のままだったからミカもそのままだ。これは儲けもの、いつ見ても何回見てもナイスバディ。



「ぎゅっ」

「ぎゅーっ」

「……筋肉がない、柔らかい」

「あー、トラウマになりかけてるね。そんなに嫌だったならもうやめておこうか」

「ん」

「でも明日も暇だしなにかやろうね」

「……えっ」

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