第731話 親の子離れ
「……と、いうわけだからこの屋敷を離れようと思う。いいかな?」
無事にCランクに上がったお父さんは、たまった金貨を見せながらそう言ってきた。
マダラ模様のゴブリンがすごく高く売れたらしい。
どうやら屋敷をでて、この街の宿屋や借家に住んでみたいんだって。好奇心なのだとか。
飽きるか、俺に戻ってこいって言われるかしたら、戻ってくるらしい。
「あー、うん、いいよ」
「ありがとっ、アリムちゃんっ。ふふ…私の愛しい娘よ…」
「う、うん」
俺は無理やりドレスを着させられ、お母さんとお父さんをお迎えしている。完璧にお母さんの趣向だ。今はアリムだからこのくらい全然いいけど。
「もうCランクですか!? さすがは成上博士ですな」
「いやぁ、私はまだまだ。息子…じゃなかった、娘の方が上ですからね。まあアリムはまず超えられないでしょう」
「だとしてもすごいよ。俺達なんてまだEランクだし」
やっぱりもうすでにCランクだなんてすごいよね。
俺の場合、ダンジョンというシステムを発見してレベルを上げたから数日でその強さに至ったけれど、お父さんの場合はレベルじゃない。特別なスキルでもない。無論、称号とかでもない。
ただ、他のみんなとスキルを違う使い方をしてここまでの強さになってるんだ。
「じゃあね、有夢。あーっと、2日にいっぺんは顔を出すよ」
「わ、わかった」
お父さんとお母さんは去っていった。
ぶっちゃけもうなんの心配もしてない。どこかでSランクやSSランクに遭遇したりしない限りお父さんがピンチになることなんてないでしょ。
「……頑張らなくてはな」
「ええ、俺達もね。……でもなぁ…あいつは特別だから」
「そうね、昔から特別だったわ」
つまり昔からあんな感じだったということか。まるでカナタだね。カナタが大人になったらああなるって、簡単に予想がつくよ。まあ、そんなの昔からわかってたけど。
うーん、監視もここまでかなぁ。
何か危険があったらトズマホが知らせてくれるだろうし。
「カナタ、モニターで見守るのはここまでだよ」
「そうだね、わかった」
そのあと、俺とミカは自分の部屋に戻ってくる。
さーて、ミカとたくさん遊ぶぞぉ!
「もうお母さん達をモニターで追うのは今日でやめたから、ミカとたくさん遊べるよ。なにする?」
「遊ぶのは良いんだけど、私もお母さんとお父さん気になるのよね……。ね、うちのお父さんとお母さんはどうだった?」
俺は大体こんな感じだったとこの5日間のことをまとめて伝えた。
「あれ、お父さんが剣道やってたって、有夢、知らなかったっけ?」
「うん、知らなかったよ。この世界ではかなり役に立ってるみたいだね。まだ地球での実力だけで魔物を倒せる段階だから」
「てことは翔の親父さんも?」
「うん。徒手とボウガンをうまく使い分けてるね。徒手といっても柔道だからゴブリンぐらいにしか効かないけど」
「ふむふむ、で、有夢の両親……そうね、私にとっての義母さんと義父さんはどうなの?」
少し頬を赤らめながらミカはそう訊いてきた。
「まあ、見てわかる通りなんかすごく進んでるよ」
「へぇ…おじさんはなにで戦ってるんだっけ」
「魔法だよ、魔法……でもなんか独自の使い方してるんだよね。冒険者になった初日からDランクの魔物を倒したりさ」
「えっ…スキルとかなにか特別なものあった? 桜のエブリングリーメとか、翔の炎神みたいな」
「ないよ」
「すごいね」
ミカの言う通り、本当にすごいと思う。
10日後とかどうなってるんだろう。もしかしたら、すでにAランクの魔物倒し始めてたりして。
「ちゃんと楽しんでもらえてるみたいだね」
「うん、良かったよー。止められた時はどうなることかと思ってけどね」
今じゃノリノリだもんね。この世界の料理だって美味しいって食べてくれるし。
「それはそうと有夢? 私、ここ最近さびしかったのよ」
「うん、し、知ってるよ」
「で、なに言いたいかわかってるわよね?」
ミカは両手を広げ、上目遣いで俺を見てくる。
俺は間髪入れずに抱きしめた。こんな簡単な仕草にやられてしまうとは。ふふふ。
「モニターで見るなら私も一緒に見せてくれればよかったのに」
「いや、俺とカナタだけの方が監視しやすいかと思ってさ。ゴメンねー」
「うんっ…もっと甘えさせてくれたら許すっ」
ミカが抱きしめ返してくる。
今頃、お父さんとお母さんもこんな感じなんだろうか。いやぁ…流石にここまでべったりはないよね?
……なんてあの2人には言い切れないのが怖いね。
「さ、さ、ご飯食べて一緒にお風呂入ったら……ベッドには入るけど寝かさないからねっ」
「んー、わかったよ」
「じゃ、それまでゲームして遊ぼ」
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