第722話 明日から

「それで、まずはどうすればいいの?」

「今日はもう、大浴場か部屋の備え付けられてるお風呂にはいって、寝てもらうだけだよ。特訓とか戦闘の説明は明日から!」



 夜に特訓とか始めるわけにはいかないからね。終わる時間もキリが悪いし。



「そうか…いや、色々と今日だけで体験させてもらったけど、なんかどこかの旅館に旅行してる気分だったよ」



 ミカのお父さんがそう言った。



「郷に入っては郷に従え。親として危険を懸念したが、もう翔やみんなの中で心配いらないほどに完結してるんだろ? 叶君にも説得されたし、俺たちが言うことはない。この世界に先に来た、子供たちに従うだけだ」



 次にショーの親父さんが言った。どうやらカナタに説得を任せて正解だったみたいだ。



「それに、今までこの世界に招待できなかったってことは、可能になるまで時間がかかったってでしょ? 頑張ってもらったなら、それに答えるよ」


 

 最後にうちのお父さんが。

 お父さんズは俺たちの気持ちを汲み取ってくれたみたいだ。お母さんたちはどうなんだろう。



「わ…私は、みんなに危ないことして欲しくない。でも、こっちの生活を捨てろだなんて私に言う権利はないから。もてなしたいって心をちゃんと受け取って、みんなが用意したプランを受け入れようと思う」

「私も同じ。それに、こっちの世界で美花も桜も…みんな生き生きしてるものね。新参者が邪魔はできないわ」

「翔太郎さんが良いって言うなら、私からは反対はないし、この世界を楽しませてもらおうと思う」



 お母さんズもアナズムで過ごすということと、俺たちがこの世界にいると言うことを受け入れてくれた。

 良かったぁ…これで怒られたりしたら強制送還して記憶処理するところだったよ!

 親にそんなことしたくないからね。



「そっか、ありがとう。じゃあ解散で…!」

「待ってくれ……一つ質問があるんだが」

「なんですか?」



 ショーの親父さんが質問して良いかきいてきた。なんだろう。



「部屋がダブルベッドだった。全部屋こうなっているのか?」

「あ、はい。一応」

「俺達は夫婦だから良いんだ。間違ったことなど起きないからな」

「あら、さっき部屋で若いお前をみてると、ダブルベッドなのが気になるって……」

「今はその話をするな。頼む」

「ふふふ、そう怒ることもないじゃないの。今までダブルベッドで添い寝してやっていけてたんだから、これからも問題なくやっていけるでしょう。ただ……」



 ショーのおばさんはショーとリルを交互に見て、話を続ける。



「責任ってのは、大事よねぇ…ね、翔?」

「あ、ああ、あああ。そうだぜ! もちろんだとも」

「俺達は何も言わないよ。有夢君が美花を、叶君が桜を迎えてくれるからね。なにか年相応じゃないことをしていたとしても、そのうち夫婦になるなら問題ないよ」

「は、はい! その通りですとも!」



 やべぇ…こええ。

 自分で責任を負うってそれぞれわかっているとしてもこのプレッシャー怖い。魔神より怖いかも。

 


「まあ、そういうことだ。それぞれきちんと自覚してるなら何もいうことはない。管理だけはしっかりしろ」

「はいっ…!」

「じゃあ俺達は部屋に戻ろう」



 ショーの親父さんがそう言うと、おやすみ、と言いながらそれぞれ夫婦で自分たちの部屋に戻っていった。

 ポツリと俺たちが残される。



「わふ……もしかしてバレてるのかな? 普段してること」

「バレてるというか、二人で添い寝してるって時点で察せられたんだろーなぁ…」

「えへへ、結婚を容認してくれるの何回聞いても嬉しいなっ」

「俺達はまだにいちゃん達みたいに淫らなことはしてないんだけどな…」

「ま、まだねっ…」



 人それぞれ感想が違うようで。

 俺自身はもともと結婚を付き合い始めたころから考えて…いや、その前から考えていたから問題はないよ。

 改めて言われるとドキッとするけど。



「じ、じゃあボク達も各々の部屋に戻ろうか。おやすみみんな」

「おう、おやすみな!」

「おやすみ」



 というわけで俺とミカは自分の部屋に戻ってきた。

 さっきのことを嬉しいことだと捉えていたミカは、未だにニコニコして機嫌がいいままだ。



「結婚かぁ、早くしようね」

「うん。なるべく早くね」

「ね、ね? 今日はどうする?」



 ミカは自分の服に手をかけた。



「親達を迎えたばかりでそれはちょっと…」



 ミカはちょっとむんずけてから服を正した。



「ま、そらそうよね。……ところで、なんでお母さん達の部屋のベッドもダブルベッドにしたの?」

「え? いや、夫婦だから」

「有夢にとって夫婦や恋人はダブルベッドで寝るもんなのね……。全員が全員じゃないのよ?」

「わ、わかってるよ!」

「私は寝てる間にギュってできるからすごく嬉しいけどねっ!」

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