第708話 パレード

「とてもお似合いになってます!」

「美の天使様そのものですわ!」

「えへへー、照れるなぁ」



 ドレスを着せてもらった。黒くて薄くてヒラヒラしてて大人びてるドレス。目立たなきゃいけない俺が黒いドレスなのは、カルナ王妃曰く、光る装飾(イルミネーション)のおかげで暗闇でも大丈夫だからだそうな。

 ま、自分で作った上で自分で着た方が早かったけど、雰囲気も大切だよね。



「黒いドレス似合うわね…いいわこれ、うん」

「髪が赤いせいだよきっと。そういうミカは赤いドレスじゃん」

「髪の色と相まって植物みたいだと思うの。綺麗?」

「とっても」



 赤いドレスも悪くない。

 普通の美花に着せてみたいかも。黒髪だからそっちでも似合うはず。



「やはり2人とも惚れ惚れするほど綺麗ですね!」

「そういうカルアちゃんだって似合ってるよ」

「そうですか? 毎年ドレスのデザインが違うんですよ」



 カルアちゃんとカルナ王妃は白いドレスだ。とっても上品。やっぱり親子じゃなくて姉妹にしか見えないけどね。

 


「あと10分ほどでパレード用の乗り物に乗り込まなければなりません。準備はできてますか? お手洗いとか」

「うん、大丈夫だよ」



 パレード用の乗り物はドレスと違い、毎年使い回しらしい。飾り付けだけをちょこっと変えるのだとか。

 前の年のお祭りはどうだったとか聞いてるうちに、あっという間に10分過ぎてしまい、俺たちは乗り物に乗り込んだ。


 すでに乗り物の中には演出をするための使用人さんたち数人と、国王様、ティールさん、ルインさんが乗っている。



「ルインさん、リロさんと一緒に居なくていいんですか?」

「本当は一緒に過ごしたかったんだけどね、午前までしか居られなかったよ。でもパレードが終わった後にそのぶんは清算をとるつもりさ」

「大変ですね」



 まあ、俺とミカも時間を取られてるし。…一緒に居られないよりはマシではあるけど。

 リロさんくらい乗せてあげられるんじゃないかと考えたけど、ダメだ、この乗り物、飾りがゴテゴテで必要最低限の人数しか乗れないみたい。


 

「本当ならエル姫と勇者ヘレルも乗せたかったんだがな」

「やっぱり色々問題ありますよね。もう十五年使いまわしてますから。来年はアリムちゃ…アリム・ナリウェイ様に新台の制作を頼んでは如何でしょうか」

「そうだな。そうしよう…頼めるか?」



 あー、運転する(馬を引く御者さん)が余計なこと言ったー! でも確かにこのぎゅうぎゅう詰めはきついし、乗りたい関係者は自由に乗れるようにしたい。考えておいてあげようかな。



「わかりました、ではその話はまた来年」

「ああ、そうだな。それはそうと、そろそろ出発する時刻か。全員、準備をしておけ。私も準備する……出てこい」



 国王様は魔法陣を出したと思ったら、そこから大きめの馬のサイズの象さんが出てきた。

 そういえば国王様は召喚系の人だったね。

 


「こいつは小さくしたベヘモットだ」

【……んあ? ああ、今日はお祭りだっけ。みんな久しぶりー!】



 ベヘモット…ああ、国王様の使い魔のやつだ。大戦争の時に悪魔食べまくってた大きな象さん!

 召喚魔法使いってサイズ調整もできるんだね。たしかにこの子一匹で何馬力もありそう。



【去年とメインのメンツが全然違うねぇ】

「ああ、良いことづくめだったからな。嬉しいメンバー替えだ」

【ふぅん…まあいいや。ぼくの一年に一回の大仕事、今年も頑張るからね】

「頼んだぞ」



 乗り物にベヘモットが設置された。

 象さんが引く馬車…象車?

 


「では、出発をしよう。演出部隊と音楽部隊は準備はいいか?」

「はい、完璧でございます」

「操縦員も大丈夫だな。アリムとミカもしっかり乗り込んでいる。欠員はいない。……では出発だ!」



 ペシン!

 と、御手さんがベヘモットのお尻を鞭で叩く音がした。よくあんなの平気で叩けるな。

 別に痛がることもなく、ベヘモットは歩き出した。

 装飾と、音楽や演出のために人が何十人も乗り込んだこの象車をたった一匹で。



「音楽部隊、鳴らし始めろ。演出部隊は街中に入るまで待機だ」



 その国王様の指令とともにマーチ的な音楽が演奏され始める。この国お抱えの音楽団による演奏だ。

 じゃかじゃかしてて他の音が少し聞き取りにくいのは仕方ないよね。


 城の敷地内からでると、たくさんの人が道を開けつつこの乗り物を歓迎してくれた。

 大量のお花やら紙吹雪やらが投げつけられる。

 まあそれらは全て馬車をそれて当たらないようになってるらしいんだけど。



「さて、演出部隊もそろそろだな。……アリムとミカは慕ってくれている者たちにサービスをするといい」

「「はーい!」」



 つまりいつも通りのことをしろと。

 国王様の前方を囲むようにメフィラド家が座っているけど、俺とミカはそれからさらに両端にいる。

 悲しいことにミカと離れ離れなの。

 仕方ないっていえば仕方ないけど。


 だから俺とミカは乗り物の外側に向かって何かしらの動作をしまくる。

 例えば、投げキッスとか、例えばウインクとか。基本的にニコニコ笑いながら手を振ってるだけなんだけど。


 それでもみんな鼻血を垂らしたり目をハートにしてくれたりするから楽しい。

 パレードはまだまだ続く。



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☆700ありがとうございます!

ワァ───ヽ(*゚∀゚*)ノ───イ

 

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