第697話 お正月 3
「すごいなぁ、我が一族のアイドルは」
おばあちゃんの妹の息子である遠い親戚のおじさんがそう言った。17人くらいに囲まれて俺は今年あった出来事をかなり話した。
さらにあと年末までに10人くらい来るから、その都度話さなきゃいけないのがめんどい。
ていうかこの家30人近く泊められることができるってやっぱり豪邸だよなぁ。
「彼女の写真みしてー」
おじいちゃんの兄の孫娘であるお姉さんからそう言われた。お姉さんと言っても1つくらいしか変わらないけど。仕方ないからスマホ開いてツーショット写真を見せる。
「テレビでもみたけど、何この娘!? 一昨年言ってた幼馴染の子よね…俳優とかアイドルとか何かやってるの?」
「一般人だよー」
お姉さんもうちの家系の人間だから十分すぎるほど整った顔立ちしてるんだけどね。
それにしても写真を見せた後のみんなの反応が女の子同士に見えるで統一されてるのはちょっと不機嫌になりそう。
「んにしても、ピッカピカだな…この家。大幅なリフォームか何かしたんですか?」
「…え、まさか。いつも通りですよぉ…リフォームは10年前にしたばかりだし…」
むむ、ちょっと綺麗にしすぎたか。
お父さんとお母さんはその原因がわかってるため苦笑いしてる。
「まあいいや。じゃあ夕飯でも作りましょうかね」
年末に一族が集まる時、大人数だから必ずカレーだ。
まあ半分近くの人は食べてから来るんだけどね。ちなみに俺たちは食べてない組。
「えっと…今日は何人夕飯が必要なんだっけ?」
「9人かな」
「おばあちゃん、俺、作るの手伝おうか?」
つい咄嗟にそう言ってしまう。
ステータスとスキルをふんだんに使ったカレーをみんなに食べさせたらどんな反応するか知りたいからね。
「おや、まあ。じゃあ手伝ってもらおうかね」
「うん! 手伝うー!」
_____
___
_
「にいちゃん…」
「ごめんて」
夜中、俺と叶とお父さんとお母さんは同じ部屋で眠ることになっている。
お母さんとお父さんが寝ちゃったころ、隣の布団に寝転がっていた叶が中々ドスを効かせた声で呟いてきたの。
「いや…さぁ、カレー美味しかったよ? 美味しかったけどさ」
「調子乗りました、ごめんなさい」
「ほんと、力を使う場面考えてよね。俺も手伝ったとはいえ、掃除も老朽化してた場所を新品にするとかやり過ぎだしさ」
「猛省してます」
俺が本気でカレーを作った結果どうなったか。
実のところ料理を作ると申し出ていた人全員に休んでもらって俺1人で作った。
匂いだけでまず、今日この場にいる全員がカレーを食べてみたいと言い出す。
そして食べる。美味しすぎて泣く。
その後周りからなにか色々言われる。
とまぁ、自重しないからめんどくさいことになったわけだ。うんうん。
「はぁ…ま、とにかく気をつけてよね。おやすみ」
「ねえねえ、叶の布団入っていい? 久しぶりに一緒に寝よ? 男同士がいやならこっそりアリムに……」
「は?」
「ごめん」
おお、怖い怖い。
______
____
_
次の日、伯父さんと従兄弟のお兄さんが来た。もちろん奥さんもね。
「おじさーん!」
「おお、有夢! 元気にしてたか!」
俺は伯父さんに飛びついた。
そしてもう1人、従兄弟のおにーさんにも飛びついた。
この一家はおじいちゃんとおばあちゃんの次に交流がある。と言っても9ヶ月ぶりくらいだけど。
「おにーさん、久しぶりっ!」
「あ、ああ、有夢、久しぶり」
む、いつもなら飛びついた時のおにーさんの反応はもっとこう、ウェルカムな感じなんだけど。原因はなんじゃろか。
ああ……従兄弟のお兄さんがなんか女の人連れてる。
「……ねぇ、その子は?」
「この子は俺の8歳離れのイトコだよ。高校2年生の男子だ」
「むっ…そんな可愛い娘、しかも女子高生に抱きつかれて鼻の下……え? 男?」
「そうそう、男」
唖然としてる。あと信じられないとも表情で語ってるよ。こういう反応は昔から大好きなの。
「お姉さん、俺は生まれてからも戸籍上も列記とした男ですよー」
「え、あ、ああ…そうなのね。ごめんなさい、てっきり女の子かと…」
「良く言われるので気にしないでください」
「ああ、有夢と叶君。紹介しよう、俺のフィアンセだ。婚約したから連れて来た」
「へー! そうなんですか!」
この人が大学生になった頃にとても美人な彼女ができたとか言ってはしゃいでたっけ。
そのまま……7年付き合って婚約しちゃったんだね。
おめでたい。
「なあ、覚えてないか? クリスマスにデートした時さ」
「あ…なんか従兄弟が出てるっていって街の大型テレビ覗いてたわね。…ハワイ旅行当たったやつ。冗談か何かかと思ってたけど本当に従兄弟だったんだ。あのカップル、同性愛だと思ってたし……いろんな意味で驚いてる」
ふぅむ、だいたい揃ったかな。
残りの家族はいつも来るの遅いし。
……さて、今日もまた彼女発表会が始まるね。でもその役割は今度はおにーさんみたいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます