第696話 お正月 2

「それで聞かせてくれよ。7月から今までのこと」



 今はまだ、他の親戚が誰も来てない。

 お母さんとお父さんはお正月パーティの準備に取り掛かるため忙しそうだ。


 というわけで、大勢の前でいっきに公表しようと思ってたことを先におじいちゃんとおばあちゃんに教えることになってしまった。



「なんて言ってもねぇ…2人とも彼女さんができたのは知ってるのよ? 叶は新聞で…桜ちゃんだっけ? あの子の眼が奇跡的に治ったって」

「どうせあのあと色々あって付き合ってるのは簡単に予想がつくな」

「……うん、その通りだよ」



 じいちゃんとばあちゃんが嫌にニヤニヤしてる。

 そういえばお母さんが、幼馴染であったお父さんと本格的に付き合い始めた時も、ちょっかいをだしてきたとか言ってたな。



「有夢はテレビでなぁ、まあ、あんな可愛い娘さんと一緒にマフラー巻いて、ベタベタしちゃって」

「女の子同士にしか見えなかったけどねぇ…」

「ぷくー!」



 それは余計だよ!

 あれから散々、やっぱり同性カップルにしか見えないって言われてるんだから。



「そんで、当たったハワイはいつ行くんだ? というか狙ってやったんでしょうに、アレ」

「昔から有夢は器量が良かったからね。またなにか咄嗟に閃いて面白いことしたんでしょう」

「ま、まあそんな感じかな。ハワイは春休みに美花と2人で行ってくるよ」



 実は身体能力によるゴリ押しです、だなんて言えるはずない。ダーツのプロ選手にでもなれとか言われそうだし。



「あと…そう、娘から聞いたよ。2人とも学校で学年1番をとったんだって?」

「うん、全教科満点でね」

「まあ…素晴らしい! よく頑張ったわね」

「叶は本気出せば満点なんて簡単だろうが、有夢はなぁ…良く頑張ったな」

「えへへー」

「俺もちゃんと頑張ってるよぉ」

「そうね、叶も頑張ってるわよね」



 ほんとに珍しく叶がぷくーってしてる。

 即座に俺が頬を潰してやった。


 その後も俺と叶はアナズムのことを避けてお話をたくさんした。よくもまあそんな5ヶ月しか空いてないのにここまで話すことあったもんだ、なんて感じてしまう。



「思ったより濃い半年間だったんだね」

「楽しそうで何よりだ…。さてばあさん、そろそろ娘達を手伝いに行くかね」



 2人とも75歳とは思えないほどの強い足腰でスクッと立ち上がり、お母さん達の所に向かった。

 


「おばあちゃんのいう通り、半年間が濃いね」

「うん、まるで1年半以上過ごしてたみたいだ」

「……お正月パーティの準備、俺たちも手伝おっか」

「何気に1番大変なお掃除を手伝えばいいと思うよ」

「そだね」



 今年の大掃除の時、アイテムを使って汚れや埃などを一気に片付け、ついでに家具のほとんどを新品以上の綺麗さに修理したらとても感謝されたの。

 いつもは3日間近くかけてやる大掃除が半日もかからずに終わったからね。


 さっそく俺と叶は4人がいる場所へと移動した。

 やっぱりとっても忙しそうだ。



「ねーねー、お母さん」

「あ、2人とも来たの。手伝ってくれない?」

「うん……。大掃除の時と全く同じ方法で手伝ってあげる。お掃除とお洗濯はね」

「ほ、ほんとに? それは助かるけど…やりすぎないようにね?」

「うん。あとおばあちゃん達にはうまいこと言っておくからね」



 そしておばあちゃんを捕まえて、自信たっぷりげに『家の掃除と洗濯全てを俺と叶うに任せて』と言った。

 目を丸くして喜んでくれたけど、ちゃんとできるかどうか半信半疑みたい。

 とりあえず箒や掃除機、雑巾を渡された。

 全く使わないけれどね。

 あと、俺たちがやるから掃除は一切しなくていいって言っておく。



「ゾーン! ……さてと」

「時間を止めるスキル使いたいよね。こんな素早さで無理やりやるんじゃなくて」

「まあねー。でもまだ俺そんなの見つけてないし。じゃあサッサとやっちゃいましょー!」



 アイテムを使った。

 一瞬で屋敷の隅から隅までピッカピカになり、朽ちていたであろうところも多分修理された。

 お洗濯物どころか、布団やカーテンまで新品同様になってるはず。


 アイテムの力ってやっぱりすごい。

 アイテムマスターとダークマタークリエイト、これらを入手していて本当に良かったと思ってる。

 単に攻撃だけ考えたスキルだと何も生まれないもんね。



「ハイ終わり。あとはテキトーにぶらぶらして、5時間後くらいに終わったって言えばいいよ」

「そうだね」



 俺と叶がゾーンを解いた瞬間、ピンポーンというこの屋敷のチャイムを鳴らす音が。

 それに気づいたおじいちゃんとおばあちゃんが玄関に行く。



『ご無沙汰しております』

『ようこそ、来てくれました。1年ぶり…』

『ええ、そうなりますね、お義姉さん』



 どうやらおばあちゃんの義弟の大叔父さんが来たようだ。俺たちの大叔母の夫さんだね。こっちもこっちで大量に家族を連れてる。


 それからも続々と親族の人たちが来た。

 騒がしくなったけど、こういう騒がしさもいいと思うの。

 

 

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