第690話 お正月まで
12月26日。
今日からまた28日まで学校がある。こんな中途半端に学校があるなら休みにしてくれていいのにね。
まあ、どっちも3限で終わるから良いんだけどさ。
ところで。
「……やっちゃったね」
「うん、気がつかなかったとはいえ完全に」
登校中、俺と美花はものすごく凹んでいた。
通話アプリのクラスのグループの方に、昼にテレビを見ていたという男子から書き込みがあったの。
<あゆちゃんと曲木さんがテレビ出てる! 見てみろ!>
ってね。
全国放送されたのはあの時点で諦めてたけど、クラスメイトたちにイジられちゃう。なかには入手困難な新作ゲーム機でゲームをやりにきたいという輩も現れるかもしれない。
……ん?
いや、今まで俺の家に遊びに来た男子って翔とイケザン君と、1回だけ山上君があったくらいで…あとは全然。
もしかして俺って友達少ない?
いや、みんな話しかけてくるしゲームの話もたくさんするし……あれ?
「はぁ…あれ? 有夢ったらさらに悲しそうな顔をして。どしたの?」
「もしかしたら俺って友だち少ないんじゃないかって、ふと思ってさ」
「はあ? 何言ってるのよ、クラスの中心みたいな存在でしょ、有夢は」
「あり? そうだっけ?」
そうなのかな…まあ良いや。
しばらくして学校に着いた。いつもよりヒソヒソ声が多い。聞き耳をたてるとどうやらヤッパリ、テレビに出たことが話題になってるみたいだ。
あ、ちなみにラブレターもいつも通りあるよ!
「おう、おはよー」
「おはよう! 二人とも!」
「あ、翔、リルちゃん! おはよっ!」
「うん、おはよう!」
外履をしまっている間に二人が来た。
今日もラブラブだね。
「おい、お前ら二人があのテレビに出てるって昨日の夜知って驚いたぞ」
「わふ……全国ネットだよ? 大丈夫なのかな?」
「うぅ…今朝から俺たちもそれが1番心配なんだよ」
「まあ、またストーカーやら痴漢やらにあったらいつでも相談に乗れよ。なんなら明日は4人で登校するか?」
おお、優しい。さすが親友だ。
ていうかイケメン。俺が女の子なら絶対告白してるんだよね、うん。
「わふ、それが良いよ!」
「……じゃあそうしてくれないかな?」
「ははは、任せとけ」
「守る対象が3倍になるけど大丈夫よね?」
「俺なら余裕だぜ」
うん、俺も守る対象だよね。知ってた。
しばらくしてヒソヒソ声を耳にしながら教室にたどり着けば、クラスメイトが一斉にこちらに寄ってくる。
その主な内容は。
「夫婦でテレビに出るなんてな!」
「いや、それより聞いたぞ! 火野、お前、柔道の各種目2つともで全国優勝したんだってな!」
「まーたお前ら4人が話題だよ、つきないなー」
「デュフフ、ばっちりとお二人の敏腕なダーツは録画させていただきましたぞ。ハワイ、羨ましいですな! まず恋人が羨ましいでござるが」
ガヤガヤと話題があっちこっち。
人気者…か、確かにさっき美花が言ってた通りかもしれない。一瞬でも気にする必要はなかったね。
また時間が経って先生が来てホームルーム。
俺がテレビに出てたことを先に述べ、その後、翔が全国優勝したことを言っていた。 これはすごい快挙なんですよ、なんてべた褒めされてたよ。まあ事実だし全部。
そして1時間目の授業で宿題の発表、2時間目と3時間目で全教科のテストを回答・解説ペーパー付きで返却された。
俺はついにやり遂げたんだ。
全教科満点という名の快挙を!
これに関しての担任やペーパーに書かれている教科担任のコメントは『単純に驚いた』だの、『ゲームをやめたのですか?』だの、『曲木と付き合うようになって変わったな』だの、とにかく驚嘆と褒め言葉をたくさんもらった。
言わずもがな学年一位。
そしてそれが今回は4人。
俺と美花、翔とリルちゃんだ。
いや、俺たちの中では予想はできていたことだけどね。……ああ、今日帰って父さんと母さんに報告するのが楽しみで仕方ないよ!
もしかしたら新しいゲームも買ってもらえるかもしれない。
あ、そういや美花と賭けしてたんだったね。
……何お願いしようかなぁ。逆に何お願いされるんだろ。楽しみだけど怖いし。
「なんかもはやお前ら4人が人間じゃない気がしてきた」
「つーかなんだよ、なんでそんなに唐突に頭が良くなった? フエンさんと曲木はわかる。あゆちゃんと魔王はなんでなんだよーーーっ!」
「学年一位が4人も同じクラスから出るのかぁ…すごいなぁ」
帰り際にみんなに言われた言葉がそれ。
……なにか一気に色々と手に入れた気がするよ。今年は本当に楽しいお正月が過ごせそうで楽しみだ!
そういや叶と桜ちゃんも学年一位とったかな?
あとで聞いてみよーっと。
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