第681話 クリスマスデート 2

 俺と美花は呼ばれてしまったからステージを目指して歩く。



「おい、あの二人って…」

「間違いないわ。あの高校の……」

「そっか、二人であんな風にデートしてるってことは、一方が男だってのは本当だったのね」



 おうおう、噂されてますな。

 いつもこんな感じだしもう慣れっこだけどね。

 途中からスタッフが誘導してくれたからすんなりとステージに上がれたよ。



「えーっとカップルさんの名前を教えてくれるかな? できれば年齢も!」


 

 テレビで見たことある女の人が俺たちにマイクを向ける。まず美花がそれを受け取った。



「えー、ミカです。17です」



 次に俺に回してくる。



「あゆむ です。同じく17です」



 そして女の人にマイクを返した。

 ……なんて名前だったかなーこの人ほんとに。女優も何か手間やってたきがするから、タレントさんでいいかな。とりあえず。



「ちょっとここからみてー、なんかすごい美人な子が二人いるなーって思ったらマフラーいっしょにしててびっくりしましたっ。申し訳ありません、マフラーとってもらえますか? 顔をよくみたいので!」



 言われた通りに俺と美花はマフラーをとる。

 その途端、タレントさんとそのほか、お笑い芸人らしき人とかも驚いたような顔をした。



「ほんとに美人ですね、二人とも…! 世界三大美女とかに選ばれたことあります?」

「いえ、ないです」

「うっそー! 私、アイドルとか俳優とかの知り合いたくさんいるんですけれど…その中でもここまで可愛い子はもう数百年に一回みれるか見れないかですねー。すごい…同じ人間とは思えない、あ、もちろんいい意味で」



 ここまでべた褒めされると照れるなぁ。いくら言われ慣れているとはいえねぇ…。

 アナズムならそんな恥ずかしくなかったのに。



「いや、ほんとに滅多にみないくらい美人さんですわ、ほんま。芸能界とかに興味あらへん? あらへんか? 絶対バカ売れするで?」

「あの、お二人とも。ミカさんとあゆむさんの容姿が淡麗なのは私も同感ですが、そろそろ本題を進めないと……」

「あかーん、せやったな!」



 内心ホッとする。

 このまま勧められてたらめんどくさいことになっただろうしね。アナウンサーさん、グッジョブ!



「じゃあお聞きしますね。ミカちゃんとあゆむちゃんは、とりあえず女の子同士なんですよね? 私、さっきからそればっかり気になって…」

「ええやろええやろ、女の子同士でもぉ…すぅきぃっていう気持ちは変わらへんで…」

「あ、いえ、とりあえず僕は男なんですけれど」



 そう言うと、アナウンサーさんもタレントさんもお笑い芸人さんもキョトンとした顔で俺を見つめる。

 大衆の方を見てみると、すでにここら辺では俺たちは有名人だからか、『知ってた』みたいな顔をする人やなぜか悔しがってる人、本気で驚いてる人など様々だ。

 あ、カメラでなんか撮ってる人いる。……ま、盗撮なんて日常茶飯事だしほっとこう。



「えっ……そう言う設定?」

「今日は男の子役でデートしてるとか? よく見ればとてもボーイッシュな格好してまんがな」

「いえ、ですから…戸籍上、ついでに言うと生まれた時から列記とした男です。ほぼ100%間違われますね…」

「「「ええええええええっ!!?」」」



 そ、そんなに驚かなくてもいいじゃないっ。



「男!? はぁ……男ぉ!?」

「これは…その、お言葉ですが神様のいたずらとでも申しましょうか…」

「それはそれでアリだね!」



 おっと、受け入れてくれたのはタレントの女の人だけか。男二人は未だに信じられないみたいだけど。



「で、では異性同士のカップルであると判明したところで、馴れ初めをね、話していただけませんでしょうか」



 カップル企画だからこういうのも話さなきゃいけないんだね。ちょっと恥ずかしいけど…正直に話してもいいよね。



【どうする? 正直に話す?】

【うん、言っちゃいましょ。私が話すわ】

【わかったよ】



 俺は美花にマイクを渡した。



「えっと、私達は2歳からの幼馴染で……えへへ、つい3ヶ月くらい前ですね、お互いに告白してお付き合いすることになったんです」

「幼馴染……わぁ、幼馴染かぁ…!」

「おじちゃんね、幼馴染とかそういうの聞くとキュンキュンするんやで。ええなぁ、幼馴染ぃ!」



 どうやらかなりウケが良かったみたいだね。

 まあそういう恋愛話とかでも幼馴染をネタにしたものって多いから。



「でも二人ともそれだけの容姿ならたくさんラブレターもろたり、告白されたりしたんちゃうか? 数ヶ月前に付き合い始めたって言っとったけど、それまではどうしたんや?」

「ああ、はい。私も……有夢も『男の人から』ラブレター貰ったり告白されたりしましたねー。お互い好きな人がいるって言って断っていたんですけどね」

「あ、やっぱりあゆむ…ちゃん、じゃなくて"君"も男子から告白されたんやなぁ」



 はははは、と笑い声がそこかしこから聞こえる。主に女の人からみたいだけど、男の人は基本的に笑ってる人はいない。本気で女の子だったらいいな、なんて未だに考えてるんでしょうけれど。



「では、そんなラブラブカップルにダーツを投げてもらいましょう! パネルはこちらでーす!」



 スタッフさんらしき人がゴロゴロとパネルを引いてきた。そしてばさっと掛けてあった布を引く。

 大きな割合を占めている赤、その次に青、白、そしてかなり小さな金色の枠がある。それぞれ2つずつ。



「彼氏さんと彼女さん、交互に投げてもらって、同じ色に2回刺さったらその色に合わせた景品を差し上げます! もし違う色だった場合はクリスマスのお菓子詰め合わせ二人分、どちらか一方が外しちゃったら、大きなステッキキャンデー2個! チャンスは成功しても失敗しても3回です! では、あゆむちゃ…くんからどうぞ!」



 そう、タレントさんがいうとスタッフさんがパネルを回し始めた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る