第682話 クリスマスデート 3
……ちょっと考えてみよう。
あのパネルから俺たちまでの距離は普通にダーツをするのと同じくらいある。
そして一番のあたりであろう金色は2箇所あるとしてもかなり狭い。
そんでもってパネルは回転してる上に、俺と美花のどちらもが連続して同じ色に当てなきゃならない。
チャンスは3回ずつ。
なにこれ、すごく難しいぞ…。
でも俺たちならやれる。
常人を逸脱した素早さとコントロールなら!
【美花、もうこうなったら一番いいやつ取りに行こう】
【ステータス使うの? ずっるーい!】
【むぅ…向こうの方が厳しい条件のダーツやらせてるんだからいいじゃない】
【ん、まぁね】
では、有夢投手、第一投…行きます!
「えいっ!」
ちょっと可愛ぶった声を出しながら、俺はゾーンを展開し、持ちうる器用さの全てを使って金色に向かって針を投げた。針はきちんと金色のパネルに当たる。
「おおっと、金色のパネルです! 金色のパネルに当ててきました!」
「確かこれ、毎年やっとるけど今まで計2~3回偶然させた程度じゃなかったかぁ?」
「まあ…かなり難しいと思うけど、美花ちゃんには是非金色のパネルを打って欲しいねっ!」
やっぱりそのレベルの代物か。
こんどは美花に赤い針が手渡された。
「えいっ!」
可愛い声を出しながら美花は投げる。
それは、寸分狂いなく目標に飛んで行き……俺の青い針の真上に刺さった。
「……な、ななな、なんと……!?」
「ふぁーっ、ほんまかぁ!?……」
「本当に金色に二つとも刺しちゃった…」
スタッフの方でもざわざわ言ってる。
観客の皆さんもだ。
ふはははは! すごいだろー!
「う、うおおおおお! 大当たり! 大当たりです! この企画始まって以来の初めての大快挙! 一番の大当たりを貫きましたあああああ! 景品は、なんと、ハワイ旅行4泊5日の旅、超高級ホテル付きペアチケットでございまーーす!」
俺と美花は思わず顔を見合わせた。
そして同時にアナウンサーさんの方を見る。
「え、ほ、ほんとですか?」
「ええ、まさかクリアさせるなんて誰も思ってなかったので無駄に豪華なんですよ」
スタッフさんがクイズ番組を優勝した人とかに渡されるような看板を掲げてきた。
俺と美花はそれを二人でつかまされる。
「ほり、ほり、それを大きく掲げいや!」
「こ、こうですかね」
俺と美花はそれを掲げる。
拍手大喝采。いやぁ…なんか嬉しいね。
「では後ほどお渡ししますので、お二人はこのゲームが終わったら……あそこの小屋、見えますよね? あそこのスタッフ室でお受け取りください」
「……なあ、まだ2投残っとるんやろ?」
「そーなんです、まだ2投残ってるんです!」
「それなら他の景品公開しちゃったら良いんじゃないですか? もう金は取られちゃったし」
「そうですね」
アナウンサーさんは景品の説明を始めた。
赤はクリスマスコスプレセット男女。青はオリジナルサンタクロース人形2つ。
そして白色がなんと、最新の持ち歩き型ゲーム機『ニマンテンドーフイッチ』カセット一本付きセット二つ。
ぶっちゃけ大変さと比例してもらえるものが良くなってる。また、赤と青はそれに加えてサンタクロースにちなんだお菓子の詰め合わせも貰えるそうだ。
これはもう。
【……取りに行こう、白と赤…まずは赤だ】
【うん、白と赤ね。ふふ、桜のためにお菓子が欲しいんでしょ?】
【まあ美花も甘いものすごく好きだしね】
アナウンサーさんが再び話す。
「では、2投目を投げてもらいましょう!」
俺に再び青い針が手渡された。
よーく狙って……。よしヒット!
「おお、こんどは赤ですか!」
「じゃ、美花ちゃん投げちゃえー!」
美花にも赤い針が渡され、狙い通り赤いパネルに刺さる。また少し観客が湧き上がった。
「……なんと、また景品を取られてしまいました!」
「……二人とも実はスナイパーだとか、そんなわけあらへんよな?」
「ま、まあ得意な方ではありますけどね」
スタッフにサンタさんのブーツを模した容器に入っているお菓子詰め合わせと、サンタクロース男女なりきり衣装を貰った(これもサイズを合わせるためあとでスタッフ室で受け取って欲しいとのこと)。
「どんどん赤字になっていきますっ…ふふっ。また景品がとられてしまうのでしょうか! 最後の3投目お願いします!」
白を狙って針を投げる。
当たった。
そして美花も……当たった。
「…………え、まってこれホント?」
「いや…かなわんわ」
「前代未聞ですね、これほど景品が総なめされるだなんて…!! おおおおおおお! はぁぁくしゅううう!」
また、会場がものすごく湧き上がる。
いや、俺たちとしてもいい思いさせてもらった。とくにゲーム機が嬉しいなぁ…。
……ハワイはどうしよう。
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