二十一章 行事
第639話 テストの心配
「むむむ……」
「どしたの? 有夢」
昨日は魔神シヴァと実際会ってみて、なんかすごい性格が丸くなっていたことがわかった。
いやまあ…意図して会ったわけじゃないし、当初の目的は金剛杵の安否だったからそれに関しては大失敗なわけだけど。
「これから安心して過ごして良いものかなぁーって思ったの」
「うん、心配だよね。でもなんとなく大丈夫な気がするから大丈夫よ! きっと」
美花がそう言うのならそうなんだろう。昨日もそう言ってたし。
「ふふ……でももし何かあって死ぬ時は一緒よ…? もう2度と置いてかないでね?」
「わかってるって」
「えへへー」
ちょっとヤンデレと化した美花の頭を撫でてなだめてあげる。今日も最高に可愛い。
そんな感じで歩いててしばらくして学校に着いた。だいぶもう、ラブラブしながら登校するのも周りは慣れてきてくれたみたいだ。
でもラブレターは減らない。減って欲しい。
今年は初雪が異常に遅く、まだ雪が一回も降ってない。12月入ったのにね。でも寒くはあるから俺と美花は二人で協力して編んだ二人用のマフラーをつけてるの。
長いし収納に困るし身につけてる間は結構動きにくいけど、ラブラブの定番なんだから仕方ないね。
「あっ、夫婦がやってきた」
とまあ、クラスに入るなりいきなりそんな風に言われておちょくられるわけだけど、それは褒め言葉なのでラブラブさを見せつけて返事をするの。
こんな感じでいつも通りの学校規定の登校時間が過ぎ、ホームルームになる。
「あと昨日も言ったけど10日もしないでテストだからね、しっかり勉強するように」
そうだ、もう期末テストなんだよね。
この学校は2学期中間テストが8月の半ばにあり、文化祭やらが8月の終わりから9月の初めくらいにあって、その2週間後に2年生のみ修学旅行。
そしてそのあとしばらくイベントがなくて、他の学校より1ヶ月遅れて2学期期末試験に入る。
学年末テストは3月の初め。
すごく特殊な日程なのは、幼稚園から大学までで色々と揃えてるかららしい。私立だからできることだね。
「あー、あきらめたいー」
「赤点怖いよ…ンヒィィィ」
ところどころ断末魔に近いものが聞こえるね。中にはかなり自身持ってる人とかもいるけど。でもなんやかんやいってみんなしっかり勉強してるから赤点なんて1教科につきクラスに1人も居れば多い方なんだけど。
「でゅふふ、あゆちゃんは今回、テストのほどはどうですかな? まーたノー勉で平均点以上を掻っ攫ってゆくのですかな? 天才は怖いねぇ」
ホームルーム終わりの10分間、イケザン君がそんなこと言ってきた。事実、今まで全部のテストを勉強しないで赤点回避してきたからね。
えっへん!
……ゲームのせいだから威張れることじゃないけど。
「それで、美花ちゃんは今回も学年で10位以内に入るのですかな?」
「どうだろ、やってみなきゃわかんないけど、実は今回は全教科満点を狙うつもりでいるの」
「むむむ、それはまたエライ目標ですな!? やれるのでござろうか? ……そうだ」
イケザン君がニヤニヤし出した。一体何を考えてるというのだろうか。
「ありちゃんと美花ちゃんは幼馴染であり、結婚までしそうな勢いのラブラブカップルでござる。そんな間柄にとって定番中の定番、『テストで点数が低かった方が高かった方のゆうことを一つ聞く』をすると良いねござらんか?」
「むむっ」
「むむむっ」
俺と美花は顔を見合わせた。
今まで、俺はどうせテスト前に勉強しなかったから、しっかりと勉強を(いつのまにか)していた美花にはまず負けるのでそういうことはしてこなかった。
なるほど、イケザン君の提案は悪くない……でも……。
「もし同点だったらどうすれば良いと思う?」
「え? そんなことあるの? 確率的にすごい難しいと思うけど……そうでござるね、なら双方相手の言うこと1つきけば良いんじゃないでござるか?」
「なるほど」
アナズムで勉強したせいで、俺と美花は全教科満点取る可能性がある。つまり同点の確率はすごく高い。
双方の言うこと一つ聞く……ってのはなかなか良い提案かも。
「美花はどうする?」
「受けても良いわよ」
「じゃ、俺も」
「おお、そうでござるか! いやぁ…どっちがどんなお願いするんでござろうかねぇ? ……っと、もうそろそろ時間でござるな。さらば」
黒板の上にある時計をみて、イケザン君は自分の席に戻っていった。
「さて、美花は俺に何して欲しいのかな?」
「そう言う有夢こそ。……なんならテスト関係なしに叶えてあげるけどっ」
「いや、それは駄目じゃないかな。俺もまだ教えないよ」
まあ、考えついてないだけだけど。
何かのコスプレでもさせようか? 例えばバニーガールになってもらうとか。アナズムでなら可能でしょう。
……考えておかなきゃね。
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