第573話 いよいよ (翔)

「今日はとーっても楽しかったよっ」



 リルはニコリと笑った。

 すこしデートの場所を考えればこんな笑顔を見せてくれるのか。可愛い。

 そして俺自身もテンションがおかしいんだ。ああ、もう今日はリルを愛でたくて仕方がない。

 遊園地をとことん楽しんだ俺達は、帰る道中にあるレストランに入って食事をした。


 無論、レストランの食事も俺が払う。お金は夏休みの間にアルバイト代をしていたから問題ない。普段から使わずに貯めといて良かったぜ。

 いうまでもなくリルは断ろうとしたが、「払わせてくれ」と言ったら引き下がってくれた。



「わふん、こういうデートまたできるかな?」

「当たり前だろ。時間があればいつでも行こうぜ」

「えへへぇ」



 腕に抱きついてくる。

 わざと胸を当ててんじゃないかといつも思うくらい…柔らか_____まあとにかく良いもんだ。



「帰ったら今日は私たち以外に誰も居ないんだろう?」

「ああ、そうだが」



 そうだ、楽しすぎてすっかり忘れていた。

 今日は家に誰もいない。2人っきりだ。

 大きなチャンスでもある。


 実は昨日からひっそりとベッドを整え直したり、(もともと散らかってはいないが)部屋を綺麗にしたり、ドラッグストアで……その…専用の物を買ったり。

 とにかく色々と準備はしてるんだ。


 アナズムではリルに任せっきりだったからな。

 それはもう男として立つ瀬がないだろう。


 しかし…用品買うのめっちゃ恥ずかしかった。あの恥ずかしさはやばいな。だからと言って買わなきゃダメだしな。



「わ…わふぅ…」



 リルは顔を赤くしながらモジモジしている。…このまままたリルの方から言わせてしまっては計画がおじゃんだ。

 恥ずかしいが早くしなければ。



「な、なぁリル」

「な、ななな、なんだいショー…!」



 俺はリルの顔をじっと見つめた。リルも俺の顔をじーっと、碧い目に憂いを含ませながら頬を紅くして見つめてくるんだ。



「き、今日よ帰ったら誰もいねーじゃんか」

「ああ、そうだね」



 リルの言葉をつい繰り返してしまう。俺も半端なく緊張してんな…。だが決心はついている。言うぞ。



「リル……今日よ、俺の部屋来ないか?」

「いく、いくよ…!」



 コクコクと首を動かすリル。俺が言いたいことが伝わっただろうか。普通にまた添い寝だと思われていたら嫌だな。

 しかし…いまは外だしな、リルが実際部屋に来たらで良いだろ。…こう、言葉だけ含ませておくか。



「ね、寝る直前だからな。風呂に入ってからだ。……だが早めに来いよ」

「……! うん」



 俺の腕に抱きついたまま、リルは頷いた。



______

____

__



「き、来たよ」



 家に帰って来てから1時間後、リルが寝間着姿で俺の部屋に来た。まだモジモジしている。

 ここからが本番だ。



「……隣来いよ」

「わふ」



 大人しくリルはベッドに座っている俺の隣に座る。

 身体を密着させ、頭を俺の肩に置いている。うちのシャンプーの筈なんだが…すげぇ良い匂いがする。

 それにこのまま抱きしめたら柔らかそうな…。



「今日は楽しかったな」

「うん!」



 何回も言った言葉をまた言っちまう。頑張れ俺。

 会話を続けるんだ。とりあえずリルの頭は肩越しに撫でている。サラサラだ。



「リル」

「なんだい、ショー」

「…………好きだ」

「うん」



 ああ……俺は同じことしか言えないのか!?

 落ちつけ、落ち着くんだ。伝えたいことを言わなければ。



「キス…しても良いか」

「大歓迎だよ」



 そうだ、まずはキスからだ。

 俺とリルは唇を重ねた。唇を重ねてすぐに舌を動かしてみる。受け入れられた。

 今日2度目のディープキス。何度やっても甘い。

 互いでタイミングを考えて唇を話せば、唾液でできた糸で繋がっていた。



「……胸、触ってもいいか」

「…うん」



 俺は宣言通りにリルの胸に手を伸ばす。向こうではもう何度も触らせていただいているこの双丘は…。

 こっちでは未体験だ。

 寝間着越しに触っても柔らかく手が天国だ。俺の手は大きめだが、それでもすべてをつかめきれるわけではないのがすごい。……そして張りのある柔らかさだ。…まあ他の人のを触ったことないから硬さなどは比較はできないんだが。



「……」

「……」



 互いに無言になる。

 俺はリルの目を見た。

 リルは頷く。了承は得た。

 ……リルの寝間着のボタンを一つ一つを外し始める。

 上が下着だけになった。

 

 ……つい、ついつい凝視してしまうのは仕方ないだろう。……仕方ねーよな?



「わふん。ショー…私ね、1つ胸が大きくなったみたいなんだ」

「そ、そうなのか」

「だからもっと私のこと好きになってくれるかな?」

「む、胸関係なくリルのことは好きだっての」



 そう言うとリルは黙った。顔がさっきから真っ赤で、照れてるかどうかすらわからない。目で早く続きをしろと言ってるような気がする。

 


「じゃあ続けるぞ」

「わふん、いいよ」

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