第569話 サーカスが来る!?

「おはよっ」

「おはよう、リルちゃん!」



 学校にて、リルちゃんと美花が仲よさそうにしてる。

 そういえば昨日の女子会で二人は何を話したんだろう。気になるなぁ…多分俺たちのことだとは思うけど。



「それで…あれからどう?」

「わふっ、まだ変化はないよ。ただ無理を言って夜中にショーの布団に潜り込ませてもらっちゃった」

「まあ、添い寝はいつもしてるから進歩とはいえないわね…」

「わふん」



 どうやら翔のこともだいぶ話してたみたいだね。

 翔は今、山上達と話してるから今の会話聞いてないみたいだけど。



「昨日どんな話ししたの?」



 俺は何気なく内容を聞いて見ることにした。

 しかし美花は、俺が不服があるときに良くする膨れっ面のマネをするの。つまり訊くなということだろう。



「ぷくーってしないでよ」

「ぷくー…ぷひゅー」



 膨らんでたほっぺを俺が潰す。

 学校で…人前でこんなこと普通にやっちゃうんだからバカップルって言われるんだよ、それでいいんだけど。

 リルちゃんがその光景を可笑しそうに笑いながら話を続けるの。



「わわふぅ! 実はベッドの中で今週もデートに行く約束してくれたんだ」



 そういえば先週デート行ったっけ。

 すっかりすれてたけど、俺と美花がこっちの世界で大人になったのってつい一昨日のことなんだよね。驚き。

 まるで2週間は経ってるような……なんてそのままなんだけど。



「どこ行くの?」

「ゲームセンターだよ」

「ゲームセンターかぁ…」



 もう少しデートスポットとして定番の所に行けばいいのにね。遊園地とか水族館とか動物園とか。

 いや、そんなことより気になることが一つ。



「でもそれ翔は大丈夫なの? もうあと数週間でインターハイでしょ?」

「私もそう訊いたんだけどね、『俺達は普通の人より3倍時間があるから大丈夫だ』って」



 確かにアナズムで練習したらいいものね。翔に渡したアイテム作成機で、練習相手ロボットみたいなのは自分で作って貰えばいいし。

 それにマジックルームもあるから3倍どころじゃないか。



「なるほど、楽しんできなよ」

「うん! あ…美花ちゃん」

「なになに?」



 リルちゃんは美花に手招きし、何かを囁いた。

 しばらくすると美花は『良かったね! 頑張って誘うのよ』と言ったんだ。なんのことかさっぱりわかんないけどとりあえず良かったと思っておこう。



「あ! ねぇねぇアリちゃんとミカちゃん、あとリルちゃんも」

「ん? どうしたのサナちゃん」



 情報通の佐奈田が俺たちに寄ってきた。

 だいたい、佐奈田がこうやって近づいて来るときは何か入手したいい情報がある時か、噂の真相を確かめる時だ。

 今日はどっちだろう。



「私はいい情報を手に入れたのです!」

「なになに?」

「な、なんと! 2週間後にあのラブロングサーカス団がこの街に来て、公演をするらしいの!」

「ほんと!?」



 こんなうまい話があるのか。光夫さんと再会するのは数年後とかそんなもんだと思ってたのに。早すぎやしないだろうか。



「ほんとほんと、今ね、隣町にテント張ってる最中なんだって!」

「ラブロングサーカス団かぁ…!」

「リルちゃんも知ってるの?」

「記憶に留めてるだけ…ね。世界四大大サーカスの一つだから」



 そんな記憶までリルちゃんには与えられてるのか。ノルウェーでもサーカスって見られてるのかな。



「3人には真っ先に教えたのよ? これからみんなに教えるつもりだけど。ほら、この学園きっての大恋愛4人組だから。…デートにはぴったりでしょ?」

「わぁ…! ありがとぉサナちゃん!」

「ありがとー!」



 佐奈田の気遣いはまあまあ嬉しい。

 ラブロングサーカス団がこの町の付近に来るのはこれで3回目か。1回目は俺たちが生まれる前。2回目は俺と美花が7、8歳の時。3回目が今年だね。



「過去の情報からすると、前売り券は2800円よ当日券は3200円ね」

「大丈夫、私も有夢も払えそう」

「うん、私と翔も大丈夫そうだよ。あとで誘ってみよう」



 2800円の出費かぁ…まあ普通だね。

 行くとしたら日曜日か土曜日が良いんだろうけどね、叶も桜ちゃんを加えた6人で行くか…それとも3組バラバラで行くか迷うところ。

 せっかくだし6人で行った方がいいかもね。



「いいなぁ…私も彼氏ほしーなー。二人でサーカスにデートとか行きたいわ…。はぁ、家族で行くことになるわ」

「大丈夫よ、サナちゃん可愛いし」

「……ミカちゃんが言ってもなんの慰めにもならないわよ」



 まあ佐奈田も確かに良い方だとは思うけどね。俺がなんか言ったら今度こそ傷つきそうだから言わないでおこう。



「まあいいわ! 私にはみんなに伝えなきゃいけないことがあるから!」



 気を持ち直した佐奈田はみんなが話してるところに突入していった。まあ、とりあえずかなりいい情報が聞けたかな。光夫さんにこっちで会えることに楽しみにしておこうね。ふっふっふ。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る