第555話 ゆっくり過ごそうとして

「有夢ーっ! お疲れさまっ!」



 帰ってくるなりミカは飛び抱きついてくる。

 


「大きなお仕事全部終わったね!」

「うん、やっと一息つけるよ」



 さらに強く抱きしめてきて、唇同士でキスをするの。

 ここのところずっと充実して忙しかったからね。…まあその前までが暇すぎたんだけど。

 今回みたいな大きな一仕事を終わらせた後はゆっくり過ごしたいというというもの。



「私も結婚したい! ウェディングドレス着たい!」

「最低でもこの世界であと3年…地球時間で換算したら4年半かな、我慢しないと」

「ぷぅ」



 ミカは頬を膨らませた。

 俺はそのかわいいほっぺを両手で優しく押しつぶす。



「ぷふー」

「撮影のお仕事もないし…今日はどうしよっか」

「一緒にゲームとかしよーよ」

「そうだね」



 と言ってもそれ以外することがあまりないんだけど。

 漫画読んだりとかさ、勉強したりとかさ、してもいいけど、どうしても個人での遊びになっちゃう。

 せいぜい身体を密着させてるくらい。


 それじゃあミカが寂しがるから、一緒に映画観賞したり二人でできるゲームしたり。

 アナズムじゃあもう趣味の領域とみんなの需要に合わせて仕事するくらいで、本来ならもう働かなくていい。

 だからずっと一緒に居られるんだけど……地球の方が娯楽が充実してて、どうしても暇になる。

 だいたい、これが悩みなんだよね。

 よく考えたらなんて贅沢。



「今日は格ゲーしよう! それで負けた方が1枚ずつ脱いでくの」

「え、なにそれ。俺不利じゃん」

「やりたくないならやらなくてもいいんだよ? でも何回も勝てば……私が…」

「…やるよ」



 しばらく悩んだけど、結局そう答えてしまう。他にやることないしね。

 どうせ俺が素っ裸にされておしまいだ。



「へっへっへー、あ、有夢! もし下着くらいまで脱げちゃったらアリムになってね」

「なんで?」

「こういうのは同性でやるのも楽しいのよ。ほら、男の人脱がしても面白くないじゃない。ま、まあ…私にとっては有夢のは…需要ありまくりなんだけど…」



 頬を染めながら破廉恥なことを言う。

 数日間仕事にのめり込んじゃったから、欲求不満てやつかもしれない。いや、よくわかんないけど。



「よーし! じゃあ始めよう!」

「お、おー…!」



_____

___

_



 なんでだ、どうしてこうなった。

 


「あ……あゆむぅ…そ、その、どっちにする?」



 ミカがすっごく顔を赤らめながらそう訊いてくるの。

 上も下も残り下着一枚で、取ればミカは上半身か下半身、その下着をとったほうが裸になってしまう。



「え…えーっと、一つ思ったんだけど」

「な、なに?」

「わざと負けた?」


 

 そう、俺がこんなにミカに格闘ゲームで勝ち越せるわけないんだ。そりゃあ俺だって、今はパンツとシャツと靴下だけだけど…。



「じ、実はその…上着とズボンと靴下を取られる前までは『ハメ技なし』『コンボ技なし』でさらに少し無駄な動きをしてみたして舐めプしてたわ」



 そ、そんなことを…。



「で、でも残りは下着と中シャツだけになってからは、私、ちゃんとプレイしてたのよ!?」

「嘘だあ!?」

「ほんとよ!」



 ミカの様子を見る限り本当ぽい。

 つまり2戦、俺は普段勝てないはずのミカに実力で勝ってしまったのか。



「もう少しのところで本気出すなんて…有夢のエッチ…」

「格闘ゲームで勝ってしまったのはともかく、それは知ってたことでしょう」

「うん。知ってた」


 

 未だに恥ずかしさを見せながらも、ニッコリと笑うミカ。可愛い。いや可愛いけどこの状況どうにかしないと。



「んまあ、いいよ脱がなくても」

「え、なんで?」

「え? 脱ぐの?」



 キョトンとした顔で見つめてくる。俺も、おそらく同じような顔でミカを見つめていることだろう。



「い、いいんだよ? 好きなほう外させて、凝視するなり触るなり好きにしても…」

「じゃあ上で」

「わかった…えへへ」



 俺はミカの意図を汲み取ることに成功した。

 わざわざゲームして脱いだくなんておかしなことしなきゃいいのに。まあ暇つぶしも兼ねてるのか。



「…….は、はい」



 言われた通りに外したミカは上目遣いをしてくる。

 


「えっと、触ってもいいんだよね?」

「う、うん。好きなようにどうぞ」



 隠そうとする素振りすらなく、ミカは無抵抗となった。

 俺はそんなミカを抱き上げる。

 そしてお姫様抱っこへと整えた。



「……まどろっこしいことしなきゃいいのに」

「だってね、普通にやってもつまらないじゃない? えへへ、もう何回も見てるのに、顔を赤くしてる有夢大好き」

「そういうミカだって真っ赤でしょ」


  

 俺はそっとミカをベッドに放り投げた。

 そしてその隣に添い寝する。もちろん、邪魔な布は全てどかして。



「よし…じゃあ__________」



 生唾を飲みながら、もう何回目かわからない行為に及ぼうとしたその時。



【アリムちゃん、ミカちゃん、余だ! 少し良いか!】



 ラーマ国王から連絡が来た。

 また、ラーマ国王のせいで中断させられる。

 すんごいデジャブを感じるんだ。

 ……ちくしょう。

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