第551話 結婚式後 後日
結婚式が終わった翌々日、俺はウルトさんに宿に呼び出されたの。ちなみに今は宿は休業してるらしい。
ウルトさん顔バレしたからね。
やっぱりというか、野次馬が昨日と今日で結構訪れてきては、『休業』の文字を読んで帰って行くらしい。
「本当にありがとう」
「心から感謝するわ、アリムちゃん」
俺は二人に今、めちゃくちゃ感謝されている。
どうも大成功したのが相当嬉しかったようだ。
「あそこまで素晴らしいものになるなんて思ってなかったよ」
「いやぁ、喜んでもらえて何よりです」
ああ、頑張った甲斐があっただというものだよ。
なにせ俺が魔神スルトルを倒す時以来だからね、本気と呼べる本気を出したのは。
「それで、これが約束の5000万ベルだよ。受け取って」
「はい」
小さめのマジックバックを渡される。
この世界は銀行がないから大きなお金のやり取りはこんな感じ。手渡しだから振込みより暖かみがあるかもしれない。
一応、形式上としてバッグの中身の金額を調べる。
ちょうど5000万ベルだ。
「確かに受け取りました」
「まあアリムちゃんからあんなご祝儀もらっちゃったから、払ったうちにならないと思うけれど…」
でも俺からの贈り物なんて、伝説級がデフォルトみたいなもんだと思うんだけどね。
「そうそう、国王様やギルマーズさんにもたくさん頂いちゃったし」
「あの人達はお祝いしすぎなんだよ…」
伝説級のものを贈ってる俺と同等の驚き方で二人にそう言わせるなんて、あのお二人方は何を贈ったんだろうか。
2年前のことを直に見ていたぶん、思うことがたくさんあるのかな。
「それにしてもアツアツですね。さすがは結婚3日目」
「え? そうかな? いつもと変わらない気がするけど」
「ねぇ?」
いえいえ、そんなことないですとも。
パラスナさんなんてウルトさんにべったりと寄り添い耳などを擦り付けて、ウルトさんはそんなパラスナさんをナデナデしてる。
普段の俺とミカとそんな変わんないんだろうけれど、側から見たらこんなに甘いのか。
「そんなラブラブの二人にまだお渡ししたいものがあります」
「ら、ラブラブって…。でもアリムちゃんからはご祝儀もらったよ?」
「あ、料金は5億のなかに含まれてるので」
これは本当ならアナズムの人間には渡すべきものではないのかもしれない。でもねぇ、どうしても渡したくなっちゃうんだよね、こんなに喜ばれると。
「これをどうぞ」
俺は画面のついた、一つの機械を渡した。
地球の文明の利器だ。
「なんだい、この板は?」
「それはある装置なんですけど、とりあえず左上の方にあるスイッチを押してもらっていいですか?」
「ここかい?」
ウルトさんは俺の言われた通りの場所を押す。
画面がついた。
『本日は各国より、皆様よくおいでなされました______』
「く、クリスさんの声!?」
「この装置からクリスさんの声が…!」
「まあまあ、そのまま見ていてくださいよ、10分くらい」
俺の渡した装置は結婚式の様子をずっと流し続けている。これはね、結婚式だけを記録した小型テレビ兼カメラなんだよね。
「す、すごい。何だいこれは?」
「これは写実を連続でパラパラとめくったら動いて見えるのを利用し、結婚式の様子を何万枚もの写実で映し出し、音を記録する技術で会場内の音まで保存。それらを合わせたものです」
「は…はあああ」
なるほど、はじめて映像を見る人ってこんな反応なんだ。なんやかんやいって大人っぽい二人が、口をあんぐりあけながら驚いている。
「それだけじゃないんですよ、それの機能」
「……? と言うと?」
「今度は右上のボタンを押してみてください」
ウルトさんはさっきと同様に素直に右上のボタンを押してくれる。
「……この機械がなんか俺達の足を写してるんだけど…」
「ではそれを持ち上げ…そうそう、望遠鏡と同じ要領でパラスナさんに標準を合わせて見てください」
「……こうかな?」
回り込んでウルトさん側から機械を見てみると、ちゃんとパラスナさんが映っている。
「そこでもう一度右上のボタンを!」
「お、押す!」
その瞬間、装置の画面は暗転し、中から1枚の紙が出てくる。まあこれは写真なんだけど。
「し…写実が出てきた……!? それもすごい精巧な…」
「それはどこでも写実機能です! 画面越しに見えるものの写実を、サイズは限られてますが即座に作り出すことができます!」
「え、えええ…これアーティファクトなんじゃ…」
あたふたするのが面白い。
俺は二人がしばらく落ち着いてから、話を続けるの。
「_____ともかく、それは二人のお子さんの成長記録をしたりするのに使ってください」
「こ、こども…そうだね。わかった。とにかくありがとう」
二人はまた深く感謝する。
俺的にはそこまでのことしてないからちょっと歯痒いけれど。まあ喜んでくれるならいいや。
「では今度はお子さんが生まれた時に、なにか」
「う….うんっ」
「そうよね。うん。わかったまた何かあったら」
俺はソファから立ち上がる。
もう1時間くらいここにいたし、さっさと帰って二人のラブラブの時間を作ってあげよう。
「じゃ、お幸せに!」
「…ありがとう、アリムちゃん!」
「本当に、本当にありがとうね!」
宿屋から見送ってくれる二人に手を振りながら、俺はフィアンセの待つ自宅へと戻ってい…とその前に、あそこに寄らなきゃ、というより忍び込まなきゃね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます