童話 狼の恩返し
むかしむかしあるところに、肉体美を誇る筋肉質な男が一人済んでいました。
名を翔といい、困っている者を見過ごせず、救いたい対象を救うためなら素手で武装した侍や兵士達を素手で100人倒すことが可能なほどの実力がある優しい者でした。
ある日、翔は自然の恵みを凝縮したプロテインを作るために森の中に入っていると、1匹の狼を見つけました。白い毛並みがとても美しい狼です。
「うおっ!?」
翔は襲いかかってくるのをおそれ即座に臨戦体制に入りましたが、狼は襲ってくる気配はありません。
それどころか動く気もないようです。
「どうしたんだ?」
その狼の足元を見てみると、トラバサミというたぬきやウサギなどを捕獲するために誰かが仕掛けた罠に噛まれてしまっていたようなのです。
さらにいろいろなところをよく見てみると、身体中傷だらけ。さらには片耳も欠けてるではありませんか。
「うわー、まじか……しょーがねーなー」
翔は『狸とかじゃないからいいか』という気持ちでトラバサミからその狼を解放しました。
狼は翔の顔をジッと見ます。
「なんだ? …腹減ってるのか? 傷痛むか? ……とりあえずこれ食えや」
懐からウサギの干し肉を取り出した翔はその狼に手を器にして差し出します。
狼は鼻を動かし恐る恐る匂いを嗅ぎ、次に干し肉を舐め、最後に少しだけかじりました。
「……どうだ?」
狼はしばらく翔の顔をジッと見てから、残りの干し肉もすべて平らげてました。
「そうか、腹へってたか。……傷の手当てもするか?」
そう訊きますが当然のことながら狼は返事をしません。
「まあ怪我してんなら連れてったほうが_____」
無理矢理翔が狼を連れて行こうとした時、狼は素早く翔の顔を舐めました。同時に逃げるように素早くその場を去ります。
「うわぉ……。大丈夫かなぁ? あれだけ元気あるなら大丈夫な気がするけどな……」
・・・
「そろそろ寝るか」
翔が布団を引こうとした時に、戸を叩く音が。
「はいはい、どなたです?」
翔は扉を開けました。
そこには笠を被った1人の同い年くらいの少女が立っています。
「わふん…あ、あの…夜道に迷ったので一晩泊めていただければ嬉しいなと…」
「ああ! いいですよ。どうぞ中へ」
「ありがとう! ありがとうございます!」
とても嬉しそうな笑顔で少女は翔の家へ上がりました。
「飯はどうします? 今から作れるが」
「む、無理しないで! 大丈ぶ…」
少女の腹の音が鳴る。
「ははは、まあ少し待っててください」
「すいません…」
しばらくして翔は簡単なものを少女にもてなしました。
本当に美味しそうに少女はそれを食べます。
「おい…しい…」
「そうか、そりゃあよかった」
「ありがとうございます……!」
少女は土下座をしました。
「おいおいやめろよ。んな大げさなことじゃないって」
「で、でもつい嬉しくて……」
「まあいいや。とりあえず寝ましょうや。えーっと、あんた名前は?」
「り…リルと申します」
「リルか。同い年ぐらいに見えるな…なんか歯がゆいから敬語もいいや。んじゃ、おやすみ」
「そ…っ! わかった…お休みなさい」
・・・
次の朝、目覚めるとリルはおりませんでした。
「もう行ったのか?」
「ただいま…!」
それと同時に開かれる戸。
戻ってきたリル。その手には1羽のキジが握られていました。
「うぉい!? どうしたんだよそれ」
「これは……お礼…」
「んな高級なものお礼たって……!」
「わふん、自分で素手でとってきたんだ。得意なんだよ」
そう本当に得意なのか大きな胸を張って自慢げにいうリル。胸から目線を逸らしながら、翔はリルに尋ねます。
「それはいいが…傷だらけだぞ?」
「…こ、これはもともと…」
「無理すんなよ」
ぽんぽんと翔はリルの頭を撫でました。
それに驚いたのは翔自信で、慌てて手を引っ込めます。
「わ、わるい」
「いいんだよ。……ね、頼みがあるんだ。もうすこしここに居させてもらえないかな?」
「あ、ああいいぜ」
「そっか…じゃあそのぶんのお礼もしないとね。悪いんだけど目を瞑ってて貰えないかな? 絶対に見ないでね」
「……?」
とりあえず言われた通りに翔は目を瞑ります。
そのとたんに布ずれの音が聞こえはじめ、それがやんだと思ったらリルの息遣いが間近で感じられました。
不意にリルに右手を取られ、それはどこかへ移動させられます。手のひらに柔らかい感触が……!
同時にそれが何か気がついた翔は慌ててリルの手を振りほどきました。
そして思わず目を開けてしまいます。
「おっ…おま、何を考えてる!?」
翔の目の前には、先程までのリルは居ませんでした。
いるのは犬のような耳が頭部に生え、臀部からは尾が生え、上半身を裸にし、頬を染めている少女です。
「わふぅ、見ないでっていったよ…」
「いや、それは悪かったがそれ以前になにを…!」
「わ、私なりの恩返し…」
リルは頬を恥ずかしそうに掻きました。
「それ以前にその耳と尻尾は?」
「あっ…ああ!?」
「それにその耳の欠け具合…まさか、信じられないがあの時の狼か!?」
翔がそう指摘すると、まるで驚いた犬のように目を丸くしたリルは泣き出してしまいました。
「ごめんなさい…ごめんなさい! わ、わたし…あんなに優しくしてもらったの初めてで……そ、そこまでならまだ良かったけど、その後なぜか人間になっちゃって……えっとそれで、えっと鼻を使って貴方の家に来てみて…えっと……えっと…!」
「落ち着いて話せ」
翔はリルの背中を優しくさすりながら話を促してあげます。
「自分でもよくわからないんだ! なんで人になったかも、君へのこの気持ちも……! でもわたしは物の怪だから、貴方とは居られない…!」
「別にいてもいいぜ」
「え?」
「いや、よくわかんないけど…縁ってやつだろ!」
その後、彼は内縁の妻を娶ったという噂がたちました。
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ネタ切れ(´・ω・`)
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