第521話 地球でのデートして-2 (翔)

「楽しかったね、ショーっ!」



 午後6時ごろ。3件目のデパートを出る間際、リルが俺の腕を抱きつき気味に握りながらそう言った。

 ああ、俺も無計画な割にはかなり楽しかったぜ。



「こっちの世界の来週でもデートしようね」

「ああ、もちろんだ」



 それにしてもこっちの世界でデートしてみてリルがめちゃくちゃ目立つことに改めて気が付かされたぜ。

 外人の女の子なんて珍しいからか。どちらかというとリルの顔はハーフに近いが。

 あるいはリルが美花と同じように、美人すぎるから目立つのか。…あるな。

 学校でよくそんなこと言われてる気がする。

 もしかしたらどっちもかもな。

 どっにしろ周りから見たら俺はさぞかし羨ましいことだろう。実際俺も自慢だしな。

 デパートから離れ、歩き続けながらも俺はリルの顔を見てしまう。

 歩きスマホをして他の世界に飛ばされた誰かさんみたいになっちまうから、本当はよそ見はいけないんだかな。



「わふん? どうしたんだいショー、私の顔ジッと見て」

「ん、あ、いや…やっぱりリルは可愛いなと思ってな」



 デートが終わりに近づいていて浮き足立っているのだろうか。そんな歯に浮くセリフがぽろっと出てくる。

 リルの白い顔がほんのりとピンク色になった。



「わふぅ…ありがとっ。最近いろんな人から『可愛い』だとか『美人』だとか言われるけど、やっぱりショーから言われるのが一番嬉しいね!」



 満面の笑みでそう言われた。

 今すぐ抱きしめたい衝動にかられるけど、外だから自重するぜ。



「……どうやらまだ時間あるんだね」



 リルはどこかの高い建物の時計を見たんだろう。

 俺たちは夕飯を食べ終わったから別の場所に帰ろうとしているが、両親からは10時までに帰ってこればいいと言われている。



「そうだぜ。だから今から一旦家に帰るための電車に乗るが、それから少しまた訪ねたいところがあるんだ」

「わふ、わかったよ。ところでそこはどこだい?」

「まあ、早く言っちまえば有夢と美花の家だな。知っておいたほうがいいだろ。……あも他にも寄るけどな」



 こっちで何かあった時に電話じゃダメなことがあるかもしれねーからな。有夢はともかく叶君は頼りになるから知っておいたほうがいいだろう。

 それに、本当にもう一つ訪ねてぇ場所があるんだよ。

 どっちかっつーとそっちが本命かな。

 いわば、俺とリルを結びつけてくれた人(?)の1人みたいなもんで______________



「リル、どうした?」



 握っていた手の本人がそこから動かないことに気がついた。リルが立ち止まっている。

 


「リル?」



 リルの目を見てみるとどうやら俺達からみて真横にあったものを眺めているようだ。

 とんでもないものを見るような顔で、ジッとそれをみ続けている。



「どうしたってんだ______________」



 俺もリルが見ている方を見た。

 俺も一瞬だけ固まった。

 そこには一件の変わった建築デザインの建物があり、そこの看板には『Hotel』と書かれている。

 リルが何やらボソボソと話し始めた。



「ショー…ここはそういうところ専門のホテルなんだよね?」

「ああ、まあな」


 

 宿泊がメイン目的のホテルではないことは確かだ。



「カップル同士が入るんだよね?」

「ああ、そうだな」



 1人でこのホテル入るのには半端じゃない勇気が必要だろう。ただでさえ2人で入るのも躊躇する人が多そうなのに。



「………ショー、実は私、この世界ではまだ処女なんだ」



 逆にそうじゃなかったら俺はひどく動揺してるところだけどな。……リルが俺以外と付き合って経験があると考えると、さすがに嫉妬しちまうかもしれない。

 ……それにしてもリルの言いたいことはわかった。

 確かにわかったが………。



「リル、俺たちは18歳未満だ」

「わふん、そうだね」

「こういうホテルは18歳未満禁止なんだぜ? いや、正確に言えば普通のホテルも18歳未満は手順を踏まないと個人らでは止まれないが…。それでもって俺は警察の息子だ」



 あとはわかるだろう。

 リルは目をハッとさせたあと、しょんぼりとしょぼくれた。耳や尻尾が今は生えてないはずなのに…幻覚だろうか、垂れ下がってるのが見えてきた。



「ご、ごめんなさい。こういうホテルに高校生で入れるって言う話、すごく多く聞くから……」

「まあ…未成年に対してザルだとは言うけどな。でも俺らはそれを守らねーと」



 リルはちょっとした有名人だからな…誰かにバレでもしたら大変なことになる。そして、親父のところに話が行ったらそれこそ親父にめちゃくちゃ迷惑かけちまうからな。



「そうだよね……本当にごめんなさい」

「知らなかったもんはしかたねーし、いいよ。あとあれだ、リル……アナズムでな」



 やっぱりあっちだと…何も気にしなくていいからな。

 それに俺は女性の身体に興味がなく、尚且つリルが自ら誘ってるのに断ってしまうような、性に対して無欲な人間じゃない。

 訊かれたらどこがフェチかを答えれるんだ。…当たり前だが誰にも言うつもりないがな。…まあ、有夢にもリル本人にもバレてるけど。



「わふーん! 約束だよ! じゃあアリちゃんもミカちゃんの家に行こうね!」

「ああ、そうだな」



 俺たちはその場から立ち去った。



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無料版アーキネーターっていうアプリでアリムちゃんが出てきたのはびっくりしました∑(゚Д゚)

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