第459話 鍛錬終了
「ふう、これで作業は全部ですかね!」
あれから数時間。
俺はルインさんから素材を買い取ったりし、6人全員分の武器を伝説級して売ったり。
さらに、ダンジョンのクリア報酬として手に入れた剣や腕輪にエンチャントを追加したり、マイナス要素を取り除いたりしたんだ。
その上、ティールさんのメモを確認し、付け加えたり、悪用できないように保護するエンチャントを加えたりも。
これで後片付け的なものは全て終わったんだと思う。
「じゃあ…鍛錬はもう終わりなのかい?」
「はい、そうなりますね」
そう、これで鍛錬は終了なんだ。
前々から約束してた出来事が終わり、ちょっと何かが抜けた感じがするよ。
「アリムちゃん、本当にありがとうございました」
「まさか…こんな方法があったなんて、全く思わなかったよ」
カルアちゃんを筆頭に、みんながお礼を言ってくれる。
「ね。こんな…本当に…えっと、私達って2週間前まで何レベルなんだっけ?」
「35前後ですよ、リロ」
「それが今や転生30回以上だものな」
特にカルアちゃんなんてレベル1から始めてるからね。
ステータスがこんな事になるなんて思いもよらなかったんじゃ無いかな?
「それで、これからみなさん、どうするんですか?」
レベルが上がり、強者となったみんなが今後どう過ごすかちょっと気になったから、そう訊いてみる。
「えっ? ああ。それはもう決めてる。元々僕達が冒険者として活動してたのはお父様達のように強くなるためだったからね。今後は…冒険者ランクをあげつつ、政治の方の勉強により力を入れるつもりさ。日常的な鍛錬とかも、そこまで頻繁にしなくて良いだろうし」
なるほど。つまりSSSランカーになるまではもうちょっと活動を続けるんだけども、頻繁に戦う事や訓練はせず、勉強するってことか。
オルゴさん、リロさん、ミュリさんもお父さん方の仕事を勉強することにするらしい。
「私は…今まで通りですかね。お兄様達と同じく武術の鍛錬を減らすくらいで。勉強ですかね、やっぱり」
「僕もかなー」
カルアちゃんとティールさんもそうするんだ。
勉強しなきゃいけない立場にあるって大変だね。
と言っても、ステータスが上がったら勉学も捗るから、本当にそのうちやる事なくなっちゃうんじゃ無いかしらん。なんてね。
王家とその側近の子供だし、俺とミカみたいにこっちの世界での余生は、あとはもうイチャイチャして過ごしてくだけ_________なんてわけにはいかないだろうけど、勉強も終わったらどうするんだろ。
「そうは言ってもステータスが上がったら勉強も捗りますからね。今までの数十倍、数百倍の速さで勉強できると思いますよ。そうしたら、皆さんにとって覚えることに必要なものなんてそのうち尽きてしまう。覚えるべきことを覚えたら、あとは何するんですか?」
「んっ…んーーーー?」
ルインさん達は顔をしかめて悩み出す。
「地位に甘んじて豪遊する」なんて選択肢はこの人たちの頭の中には最初っから無い。
だからメフィラド王国がいい国なんだけど。
それに戦争も今はなく、治安も3年前のウルトさんの活躍と、悪魔との戦争終了時に俺のアイテムの効果で"クロ"な人間は全部しょっぴいたことによって最高の状態だし…。
「まあ、とりあえずやることを…国に役立つようなことを探すしか無いかな。やっぱり何回考えてもまずは勉強だよ」
5分くらい考えてたルインさんはみんなを代表してそう言った。やっぱり勉強なんだね。
「そうなんですね。頑張ってください!」
「逆にアリムちゃん達はどうするんですか?」
「えっ?」
まさかカルアちゃんから質問返しが来るとは思わなかった。
「えーっとね」
あっちの世界で過ごすとか、やらなきゃいけないことがないわけじゃ無いからなぁ。
「ボク達は何かあったらやるし、何もなかったらのんびりしてるよ。アナズムではね。ねー」
「ねーっ」
俺とミカはそう答える。
実際、これがベストだと思うの。
「そうなんですか。もしかしたらまたアリムちゃん達に頼ることはあるでしょうね。主にアイテム方面で。その時は…」
「勿論、手助けするからなんでも言ってね! やれることはやるよ!」
「ありがとうございますっ!」
カルアちゃんはにっこりと笑って御礼を言った。
「じゃあ…今日はどうするんだい? お城に帰るんだっけ?」
このマジックルームの時計を見ながら、ルインさんはそう言う。
「いえ、明日の朝に帰ろうかと思ってます。それまで今日はここに一泊しませんか?」
「わかった。じゃあそうするよ」
というわけでみんな、あと今日の残り時間だけこのマジックルームに居ることになった。
数日前までやっていた、カルアちゃん達とのお泊まり会みたいだね。
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