第444話 セインフォースと宝箱
「これはどっちが良いかな?」
この二手に分かれた道のどちらかが宝箱…あるいは隠し部屋があることは確かだよね。
「そうですね…どちらも行くんですけど…とりあえず、右に行きましょうか」
「わかった、右だね」
適当に決めた右。
俺達8人は、そのまま右に進んだ。
数秒進んで見えてきたのは、1体のアイアンゴーレム。
そのはずなんだけれど様子がおかしい。
普段は黄色く光ってる目の部分が黄色だし、なんだか身体の3分の1近くが苔むしてる。どう考えても亜種だね。
「あれは…?」
「おそらく、アイアンゴーレム亜種ですかね。Cランク2~5体分の強さがあるはずです。まだこっちに気がついてないみたいですね」
ほんと、このダンジョンの良いところって、遠くから息を潜めて見ててもこちらに気がつかないことだよね。
普通の人の魔法の射程範囲内でやっとこちらに気がつくけれど、魔法が放たれる方が早いから、必ず1撃は入れられるし。
「リロ……いける?」
「いける、多分大丈夫! まかせて」
リロさんは俺達に向かって親指を立てると、自分の魔法の射程範囲内に立つ。
ゴーレムがリロさんに気がつき、のそりと動き出した。と、同時に足元に魔法陣が出現し、間も無く炎の砲撃に見舞われることになる。
「あー、やっぱ効かないかー。じゃあ…全部出し切って!」
リロさんは連続してファイヤーキャノンを放つ。
近くゴーレムの歩に合わせてゆっくりと後退しながら。
13発ほど撃ち俺達の目の前までやってきたところで、MPの使いすぎからか、足をもつれさせて倒れそうになる。
その身体を、王子様がカッコよく受け止めた。
「こ…これが限界みたい…」
「ありがとう、よく頑張ったね」
「ご…ゴーレム…は?」
全員でゴーレムが元いた方を見る。
かのゴーレムは、立ったまま機能を停止させていた。
……ふむ、もはや補助魔法込みだったら単独でCランクの亜種を倒せるんだ…。
じゃあ、次の周回からもうちょい色々できるかもしれない。
「わ…私1人で…Cランクの亜種…を…!! えへへ、すごーい」
そう、魔法はすごいんだ!
いわば、魔法が即戦力で剣が晩成って感じ。
ある程度の強さになると剣の方が周回に向いてるんだけど、今の段階ならば魔法は格上をあっさり倒してしまう。
よく考えたら、俺も最初はウォーターエミッションに助けられまくったものね。
「リロ…ここまで強くなったんですね!」
「4人は同じレベルだよね? どうしてここまで差が?」
ティールさんが、俺にそう尋ねてくる。
「実は魔法の方が強いんです。魔物相手だったら、ですけど。MPという制限があるぶんですかね? かと言って剣が弱いわけじゃありません。まだ活躍できないってだけなんですよ」
「む、なら今のところはミュリとリロに頼るしかないわけか。このような格上の魔物は」
「ええ。ですがこの周回を繰り返すうちに、単独でSランクの魔物でも勝てるようになるで、安心してくださいね」
ルインさんの手によってしばらくリロさんは抱きかかえていたけれど、ミュリさんが唱えた回復魔法によって少し楽になったのか、自分で立ち始めた。
「じゃあ、先に進みましょうか」
ルインさんを先頭にして、俺達は再び進み始める。
でも、すぐに壁が見えた。つまり行き止まりってこと。
でも、その壁際には、一つの宝箱が_______
「わああっ! 宝箱だっ!」
「おおーっ…宝箱…!!」
「ダンジョンで宝箱を見つけるとは…こう、くるものがあるぜ!」
確かにダンジョンで宝箱を見つけると興奮したくなるよね。
魔物といく回にわたって戦って疲れてるはずなのに、みんな、ドロップしてるCランクの魔核3個は無視して、その宝箱に向かって飛びつくように駆けた。
「……誰が開ける?」
「ここはリロなんじゃないか?」
「ですよね」
「異議なし」
「えっ…私、でも……うーん」
俺もリロさんが良いと思うんだけど。
そう思っていたら、リロさんは何か閃いたのか『そうだっ』と大声で言うと…カルアちゃんの方を向いた。
「カルア姫が良いんじゃないかな?」
「えっ…ええっ!? 私ですか? なんで…?」
「だって…すごく運がいいし。普段」
そうだ、確かにそうだ。
カルアちゃんは異常なほど高い運があるんだった!
例えば、ジャンケンをしたら10回中10回は勝っちゃうような運の良さが…あるんだった!
「そうですね…そう言われると…」
「確かに」
「で、では私が開けてしまってもよろしいんですか? リロお姉様」
「うん、どうぞ!」
みんなに促されカルアちゃんは宝箱を開けた。
揃って中身を覗き込む。
その中身は_______Sランクの魔核だった。
流石、カルアちゃん……。
大当たりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます