第422話 両親 (有夢・叶)
2階から叶と一緒に降りて、リビングに入ろうとしたら、二人がなんか話し合っていた。
雰囲気が尋常じゃないため、少し様子を見る。
「……なんなの、コレ?」
「さあ…わからないけど…もしかしたら…」
お母さんたちは、そう、囁き合っていた。
俺と叶は息を潜めて、リビングに居るお母さんとお父さんを見る。やっぱり、なんか様子がおかしい。
「(兄ちゃん、もうちょっと様子見よう)」
「(うん)」
今は朝の6時。
本当だったらお父さんはもう少し遅く起きるはずなんだけど、なぜかもう起きているし、二人してカレンダーと表示されて居る(と思われる)ケータイの日付を交互に見ながら首を傾げてる。
「……カレンダー機能の故障かな?」
「そんな…だとしたら…よりにもよってあの子が死んだ日になんて…」
「とりあえずテレビつけてみよう」
お父さんがリモコンをとってテレビをつけた。
『グッドモーニンジャ』という、朝にやってる番組が映される。
『オハニンニン! 本日はーーっ! ___月___日、月曜日でござる! 気温が秋らしく、少し肌寒い_____________』
テレビでも、俺が死んだ日と同じ日にちであると報道しているようだ。
お父さんとお母さんはなにがなんだかわからないような表情で、顔を見合わせた。
「えっ…えっ?」
「ほ、ほんとになん…?」
俺と叶も顔を見合わせ、頷く。
リビングに堂々と入場だ。
そして、一言、叶が。
「おはよう、お父さん、お母さん」
お父さんとお母さんは勢いよくこちらを振り向いた。
幽霊でもみるような顔で凝視してきてる。
「あ…う…?」
「…………!!?」
驚きすぎて言葉も出てない。
俺と叶を見て固まったままだ。
叶はさらに話を進めた。
「どうしたの、母さん。うまく口が回ってないよ? ねぇ、兄ちゃん」
「ねぇ、叶」
ガクン________
と、お母さんは膝を崩し、お父さんの足に抱きついた。
お父さんはお父さんで、ただその場にボーゼンとして立っているだけだ。
しばらくしてお母さんは気持ちを落ち着かせようとしてるのか、過呼吸気味に呼吸を繰り返し、やっと言葉を放った。
「有夢と………叶……なの?」
「うん、ただいま」
「ごめんね、しばらくどこか行ってて」
お母さんはパクパクと口を開閉させながら、お父さんの膝に抱きつくのをやめ、ガクリと床に手をついた。
「あ…ああっ…神様っ……!!」
______________
________
____
「落ち着いた?」
「ん…」
俺と叶がお父さんとお母さんにインスタントのコーヒーを淹れて出した。
二人はソファに座って、俺らの話を聞こうとしている。
「本当に…本当に有夢と叶…?」
「うん、そうだよ」
お父さんに背中をさすられながら、コーヒーを一口飲んだお母さんは、声を絞り出すようにそう言った。
「………なんだろうか。日にちが巻き戻ってるし、有夢が居るし、パパにはもう、何が何だか……。そうだ、叶…叶何処行ってたんだ?」
お父さんのその問いに、叶は頷いてから。
「それを説明するのは、もう少し後になると思う。一言言えば…地球とも天国や地獄とも全く違う別世界に行ってたってことかな。信じられないかもしれないけど」
「……有夢と叶は、この時間が巻き戻ってるものだってことは、わかってるんだね?」
「うん」
叶ほどのIQではないけれど、並の人より頭がすごくいいお父さんは、すでにこれまでの会話だけでそこまでわかっちゃったみたい。
「とすると…この時間の逆行は、二人がその別世界とやらで起こしたもの…なのかな?」
「うーん、まあ、そうなる…かな? それより、お父さんは俺達のこんな話を信じるの?」
「まあ、非現実的なことを今現在、身を思って実感してるのだから、信じざるを得ないさ。それにうちの子は嘘をついたりしないから」
そう言うと、お父さんは俺と叶の顔を見てニコリと笑った。
……俺と叶がこんな女子っぽい(女子そのもの)みたいな顔をしてるのは、半分はこの人のせいでもあるんだ。
「ありがとう、お父さん」
「いいよ。ママはどう思う?」
「………私にはわかりません」
お父さんがいつの間にか差し出していたハンカチで涙を拭きながら、お母さんは首を振った。
涙を拭うと、俺らの方を見る。
「……でも、二人が本当に帰ってきたんだってことはわかる。……おかえり、二人とも」
「「ただいま」」
俺と叶は…この歳ではあるのだけれど…今回ばっかりは、お父さんとお母さんに飛びついた。
涙が出る。
美花と再会した時と、同じように。
お父さんもお母さんも、俺と叶のことをぎゅっと抱きしめてくれながら、泣いていた。
この二人がなんで俺達がいない間の記憶が残ってるかはわからない。
おそらく、美花ん家も翔の家も、御両親だけ記憶が残ってるんじゃないだろうか?
そんな気がする。
まあ…でも、今はただ…家族水入らずだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます