第423話 両親 (美花・桜)

 有夢が顔を引っ込めた。

 懐かしい…懐かしいよ…っ!

 ここでこうして、私と有夢が窓から顔を合わせて……窓から窓を移動したりなんかしちゃって…!



「お姉ちゃん!」

「…桜!」



 隣の部屋から桜がやってきた。

 なんかもう着替えてる。私も着替えなくちゃ。

 一旦、部屋から桜を出て行かせて、とりあえず制服に着替えた。



「おまたせ」

「早く、お母さんとお父さんに…!」

「そうね……ん?」



 違和感。

 桜の顔にすごく違和感。

 なんか物足りない……ううん、顔の可愛さはそのままね。

 なんか無いのよ、そう……眼鏡が!



「どうしたの? お姉ちゃん」

「いや、桜…眼鏡は? こっちの世界でも眼鏡無しでいけるの?」

「ああっ!?」



 桜は今気が付いたのか、目のあたりを手で触って自分でびっくりしてる。



「大丈夫? 見えてる?」

「うん…向こうにいた時と同じ…眼鏡は…要らないみたい…」



 よかったあ!

 桜の目が完全に治った。

 これはもう、叶君のおかげだね。

 桜は叶君のお嫁さんになる以外ありえないわ。



「桜…叶君に感謝しなさいよ?」

「うんっ」



 とりあえず、向こうの世界から授かったサプライズへの喜びはここまでにしてお母さんとお父さんに帰ってきたって言わなきゃ。

 私と桜はおそらく、この時間なら二人が居るだろうと踏んで、1階のリビングまで下がった。 

 この日二人がこんな風に話し合ってるなんて覚えないけれど、なんか二人共、すっごく真剣な顔して話し込んでる。

 私と桜はそれを見て、一旦壁に隠れて、お母さんとお父さんの様子を見て見ることにした。

 でも…ちょっと見にくいわね。

 



「(桜、透視できない?)」

「(…無理よ。あ、でも隠密はできるみたい。そんなに影響及ぼさないからかな?)」



 一部のスキルは使えるみたいなこと説明されてたけど、透視は使えなくて隠密は使える…? もしかしたら、真・料理とかも使えるのかもしれない。

 まあ、あとの考察は叶君に今度任せるとして。

 二人はなにを話し合ってるのか。

 聞き耳をたてるの。

 


「なあ…今日って___日のはずだよ…な?」

「そのはずよ。……カレンダーがズレてるのかしら?」

「いや…違う気がする。とりあえずテレビつけて見るか」



 お父さんはテレビをつけた。

 『グッドモーニンジャ』とかいう、変な名前の番組がやってる。

 この番組、私はテンションが高過ぎるからあまり好きじゃない。



『寒くなるであろうから、薄いジャンパーでも羽織るといいで御座るよ! それでは今日の星座占いで御座る。第11位! ________』



 テレビ画面には、変な挙動をするいつもの忍者と、今日の日付が書かれていた。

 ___月____日。

 紛れもなく、有夢が死んじゃった日。


 

「やっぱり…。有夢君が亡くなった日に戻ってる…?」

「みたいだ……な、ならまさか!?」



 お父さんがなにかを察したところで、私と桜は互いにうなずき合ってから、リビングの中に入った。

 気づいた二人は、驚いたように目を見開く。



「えへへ…その、ただいま。お母さん、お父さん」

「心配かけてごめんなさい」



 驚いて固まってるお母さんとお父さんをよそに、私と桜はそう言って謝った。



「はは…ははは! ゆ…夢か?」

「夢…なのかもしれないわ…えっと…」



 そんな風に戸惑ってる、お母さんには私が、お父さんには桜が飛びついた。

 えへへ…えへへへ!

 


________

______

____



「よくわかんないけど、とにかくどっかから戻ってきたって事でいいのね?」

「うん」



 4人して大泣きしちゃった。

 しばらくして落ち着いたんだけどね。

 二人には軽い説明を終えたところ。



「……時間が戻っちゃってるし、信じるしかないんだろうな。……やっぱり夢か?」

「お父さん、私抱きついたでしょ? 感覚あったでしょ? 私も夢だと思ってたけど、お父さんもそう思ってるなら、これはきっと夢じゃないの」

「あはは、うん。うん…?」



 桜が笑いながらむんずけた。

 それにしてもこの言葉は、さては桜のものじゃないな? どうせ、叶君か誰かの受け売りだろう。

 

 

「なら…お隣の有夢君と叶君、それに火野さんのとこの翔君も戻ってきてるのね?」

「そうだよ。みんな戻ってきたの」



 お母さんとお父さんはそれを聞いて、長年の悩みが無くなったかのような表情をする。



「よかった! やっぱり今も信じられないけれど、美花と桜が戻ってきたってだけで…お母さんはもう…! ……ところで桜、眼鏡は?」



 今頃気がついたのか、お母さんはそう言った。

 お父さんは言われるまで気がつかなかったみたいで、『本当だ』とか言ってる。



「これは…その、向こうの世界で目を治してきたから…」

「そうそう、叶君のおかげでね」

「ちょっお姉ちゃん……!」



 桜は顔を真っ赤にさせて照れる。

 お母さんとお父さんは、微笑ましく桜と私のことを見ていた。



 

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