第372話 vs.黒魔神スルトル
「泊まってた部屋とかにーー! リルって娘の髪の毛とか落ちてるでしょー? それにアムリタをかければー! 生き返らせれるからー!」
「ヤメろ、ヤメロォォッ!! コイツの怒りを鎮めるようなことを言うんじゃネェッ! その口を止めろ!」
さらに放たれる魔法。
この島もろとも吹き飛ばしそうな威力だとわかる魔法陣が、何枚も何枚も展開された。
しかし、やはり剣はすべて吸い込んでくれる。
ちょっと、砂ぼこりとかで視界が悪いけど、今の所、全然余裕だね。
「早くスルトルから身体を奪い返しなよーー! 今なら、リルって娘を生き返らせてあげるよーー!」
「お、俺が保証しますーー! リルさんは生き返らせられますよーーっ!」
いつの間にか叶が隣に立ち、一緒になって叫んでくれる。
「ッ…! テメェ…らァ…」
叶の言葉が効いたのか、スルトルの右半身が完全自由を失ったみたいだ。
……むぅ。マブダチの俺の言葉より、叶君の方でより反応するとは…。ここ数日間、たくさん関わりあったっぽいし、俺は今、声変わりする直前みたいな声だから、地球にいた時と声が変わってるし…仕方のない事かもしれないけど。
「あと一押しだね」
「ああ。…なんならーーっ! 今すぐ髪の毛を翔さん達の部屋まで取りに行ってーーっ! リルさんを生き返らせても良いですよーーっ!」
響く、その言葉。
スルトルは動くほうの手で頭を抑え、悶え始めた。
「アアアアアッ…! 出て…くんじャ…。い、今生き返らせらせたら…! 勝手に喋るナ…。リルは裸だから…ッ! 言うな、オレの身体だ、これはオレの…! 今は生き返らせちゃダメだ!」
まさかの第一声が「リルは今裸だから生き返らせるな」とは、さすがに思わなかった…。
ていうか、翔が喋れるところまで来てる!
良いぞォ…!
「アアアアアアアア! クソが、クソが、クソが! グヌヌヌヌヌヌアアアアアアアアアアアアアアアア……ッ…フンッ!」
スルトルは無理矢理に手を動かした。
……翔は押さえ込まれちゃったのか、スルトルの腕がプルプルしなくなっている。
「ハァ…ハァ…畜生テメェら! 死んどけゴラァアアアアアアアアアアアアアッッ!」
また魔法、俺らには効かないのに。
幾十…ううん、100は超えるような数のSSランクスキルの魔法陣が展開された。
空も、海も、陸も、巨大で凶悪な魔法陣で覆われる。
「流石に…これを吸うのは…無理だろッ!」
パチリと、スルトルは指を鳴らした。
ものすごい音、爆発の音の連鎖。
「カハハハハハハハハハハハハハハハハ、ヒャハ…ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
それは桜ちゃんもミカも、飛行機も全部巻き込んでしまうような超火力…だったと思う。
実際、海は茹だって水蒸気が多量に発生してるし、島は消え去っちゃった。伝説級のはずだった飛行機も、跡形もなく溶けちゃってる。
「破壊完了…! もう少し楽しめ……ハ?」
でももちろん。俺らは無傷。
念話で宙に浮き、海にも落ちずに済んでるんだ。
「いやぁ、すごい火力だね!」
俺はスルトルに向かってそういう。
前が見えない。
剣を一振りして、あたりの靄をすべて取り払う。
「でも、俺らには届かなかった。残念。今のところ、サマイエイルよりも手応えないかなぁ」
足場として、新しく島をダークマターで作り出す。
そこに俺ら4人をそっとおろした。
「んだと、テメェ、コラァッ!?」
次の瞬間、現れるのは炎の刃。
スルトルが剣に炎属性を纏ったみたいで、俺が水蒸気の靄を取り払ったのと同じように、島の自然を取り払ってしまった。
無論、その瞬間に叶が俺らを別の場所に移動させ、すぐに戻って来たから全く無傷だ。
「……どうする? もう、そろそろ封印しても良い? 翔の彼女っていう娘の顔がみたいんだけど」
剣を肩にあて、トントンと。
俺はスルトルの表情を見た。
……笑ってる? 気持ち悪く笑ってる。
「クカカ…」
まるでこの状況を楽しんでいるように、口角を翔の口の限界まで釣り上げ、ニタニタと笑ってる。
本来、翔の笑顔はもうちょっと爽やかだ。
俺の悩殺笑顔には劣るけど。
「あー、あー、あー! いいねぇ、イイねぇーッ…!最高だよ、このオレ様がここまで追い詰められたのは初めてだ!」
態度をいちいち大きく。体を過度に動かし、そう演説のように言った。
翔が意識的にあれを行ってるのだとしたら、間違いなく俺は殴ってるね。
「……つまり、ここからオレも本気ってことだ! …心して掛かれよ、真の勇者よ! 俺の名は黒魔神スルトル…! 灼熱の魔神だ! …ヒャハハハハハハ!」
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