第364話 太陽の出所
「桜、あれはなんなの?」
知っているそぶりをした桜ちゃんは訊ねられる。
「あ、あれは翔さんの魔法……1発で数万人の人を倒せちゃうような、そんな魔法で…」
翔…そんな魔法を覚えたのか…。
本当に太陽が13個になったように見えるし、かなりの高威力の魔法なのかもしれない。
やっぱり俺達みたいにダンジョン周回したりしたのかなぁ。
「えっと…今は魔神に取り憑かれてるから、翔に取り憑いた魔神があれを撃ってるのよね?」
「う、うん」
「はあ…あんなの本気でぶつけたら大陸一つ消えちゃうわね…翔も中々やるね」
翔にのりうつった魔神がアレを放ってる。つまり、あの魔法の出所を探知する機械を作って、それに従って行けば良いよね。
と、おもった次の瞬間、12個の太陽が消え去った。
「…あれ?」
「あ…あれは瞬間移動…! 叶があの魔法を瞬間移動でどっかに飛ばしてるのよ」
「叶君も同じくらい強くなってるんだ」
まあ、消えたとしても問題はない。
「2人とも、叶達を見つける方法を見つけたから、そろそろ出発するかもしれない。準備しといて」
「うん、わかった!」
「ど、どうやって探すの?」
「見ててね、桜。これが有夢の実力よ」
そう言われたら、なんかプレッシャーがかかるんですけど。…俺は、一瞬でいつものように、ダークマターを駆使して探知機を作り上げた。
言わずもがな、伝説級。
「え? いつの間にそんなの…?」
「今、作ったんだよ。ぽちっとな」
俺が作ったこの機械は、あの太陽が13個出てきた時の時刻に合わせて、その時間でもっともMP…魔力が使われた場所が世界のどこであるかを検索してくれる。
一瞬ででてきた。
よくわからない、無人島だ。
この機械にはナビの機能もつけておいた。
だから…
「よし、じゃあ行こうか!」
「もう行けるの?」
「うんっ! えっと…誰かに行ってくるって言わなきゃ…さっきのお爺さんでいいかな」
俺はドア越しにさっきのお爺さんを呼ぶと、お爺さんはドアを開けて丁寧に、かつ、スピーディにこの部屋の中に入ってきてくれたよ。
「ご用件は?」
「うん、これから魔神を止めに行きますから、ボクとミカと桜ちゃんが、魔神を止めに行ったって、報告しといてください。こっちにも向こうにも」
「畏まりました、アリム様」
お爺さんはぺこりと、紳士的に頭を深く下げた。
俺は曲木家姉妹の方を向き直し、呼びかける。
「じゃ、行こっか。窓からで良いよね?」
「うん、大丈夫」
「え、窓から…?」
俺はとりあえずカッコつけて、無意味に指をぱちりと鳴らす。その瞬間、窓辺にでてきたのは3人乗りの飛行機のような乗り物。飛ぶ原理は違うけど、見た目は飛行機。
「ええっ!? あゆむ兄って、召喚魔法使い?」
「ううん。違うよ、まあ、それも全部、この騒動が一段落したら教えるから、とりあえず乗ろっ!」
そう言いながら、俺は窓から飛行機に飛び移る。
続いてミカ、ミカが手を引きながら桜ちゃんも乗り込む。
「じゃあ、行ってきますね」
「どうか………………おきおつけて」
老紳士はそう言うと、またまた頭をぺこりと下げた。
それを一瞬だけ見て、あとは。
「じゃあ、出発するよ」
俺は二人にそう告げ、外見よりも広いこの乗り物の中についている、一つしかないスイッチを押す。
このおおきな乗り物はそのスイッチを押すだけで勝手に目的地まで飛んで行ってくれるのだ!
間髪入れずに、飛行機は発進した。
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時は少し遡り。
一人と一柱はユグドラシル神樹国からそう、遠くもない無人島に飛んできていた。
「ほぉ…ここがオレ様とテメェが戦う場所か…」
「そう言うこと」
二人はギリギリ会話できる距離で話をしている。
カナタはいつ、戦いの火蓋が切られるのかと、ハラハラしながら魔神の方を睨んでいた。
絶対に負けられない戦いであると。
サクラの事を一番に考えながら。
「森と山…邪魔じャネェーか?」
「え?」
唐突に、そう言いだした魔神はニタリと笑う。
確かに、この無人島はかなり小さめではあるが、山も森も存在している。
「整地すッか!」
そうスルトルが言うや否や、島全体に出現する、赤く巨大な魔法陣。その魔法陣からカナタは翔の魔力とともに、感じたことのない嫌な魔力が含まれていることを察した。
「ヒャハハハ!」
スルトルにしては小さめに笑うと、その魔法陣が炸裂する。天高く登る火柱。
それは魔法陣と同じ範囲・規模であり、仮にこれが街中で発動されたとしたら、確実にその街は滅ぶだろうと安易に想像できる。
カナタはインパクトの瞬間、スパーシ・オペラティンのスキルによる技の一つを展開し、爆風と熱風を防ぐ。
塵や砂を巻き上げ、視界が悪くなる。
「ふう、スゲェぜ、やっぱ」
スルトルはポツリとそう言った。
巻き上げられた小さなものが降りて行き、視界が晴れる。そこに見えるのは、破壊そのもの。
先ほどまで自然豊かだったこの島は、禿げ、焼け野原のようになっている。
「おし、これでいいかな。じャあ…やるかッ!!」
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